やばい、恐ろしく強い気配がする。
推定でレベル50は超えている感じだ。
一匹一匹がミノタウロスよりも覇気があるぞ、こいつら。
「きゃりあああありああ」
ガシャンガシャンと『金時の小手』が変形を始める。
パッパと[縮地]で瞬間移動しながら透明ゴリラに近づく。
「タカシにいちゃん、銃!」
「タカシ、銃!」
くつしたがバウバウと吠えながら透明ゴリラに突っ込んでいく。
……。
ゴリラたち、動かないな。
『ぎゃー、ヒデオ!! 『Dリンクス』さんがゴリちゃんたちと戦ってるう!!』
ステージ上でリハーサルをしていた『サザンフルーツ』の女の子が悲鳴を上げた。
「うわ、なんてこったあ」
さえない感じの寝癖のおっちゃんがバタバタ駆けこんできた。
「きゃりありあ?」
鏡子ねえさんとくつしたが動きを止めた。
敵じゃないのか?
『すいませーん、うちのボディガードのヒデオの超能力でーす』
超能力?
「すいませんすいません、ステージ近くだとこいつら邪魔なので、ここに置いていたんですよ、魔物じゃないです」
ヒデオさんが俺に向けてペコペコ頭を下げた。
「超能力でできた、ゴリラ?」
「おお、さすが『Dリンクス』のタカシさん、存在を感知して、ゴリラと解るなんて、いつも配信みてますよ」
ヒデオさんは人の良さそうな顔で笑った。
『サザンフルーツ』の三人の女の子がステージを降りてこっちに駆けてきた。
「『そは人間なりき、迷いを忘れ元の姿へ戻れ、【
朱雀さんが鏡子ねえさんの
「ぎゃあ、鏡子さんにタカシ君だあ、初めまして、『サザンフルーツ』のミキって言います、よろしく~~」
「あ、はい」
「ひゃあ、チアキちゃん、くつしたくんっ、あたしはヒカリだよ、よろしくねっ」
「ここ、こんにちは、ヒカリさん、いつも配信みてます、噂の透明ゴリラはこんな感じだったんですね」
「わ、ありがとう、あたしも『Dリンクス』の配信は欠かさず見ているよ、ゴリちゃんたちを察知できるなんて、【気配察知】スキルってすごいねっ」
なんだ、チアキは知っていたのか、早く教えてくれよ。
「こんにちは、私はヤヤです。はあ、生泥舟さん、そして朱雀さん、こんにちはこんにちは」
おとなしそうな白い衣装の女の子がそういった。
ミキさんが
「こここ、こんにちは、
「よろしくおねがいします、『Dリンクス』の新宮タカシです」
ヒデオさん、なんか温厚そうでいい人みたいだな、さえないおっちゃんだけど。
「丸出家……、ヒデオさん、滋賀の出身じゃないですか?」
「え、はあ、なんかヒイヒイ爺さんの時に関東に来たみたいですが、滋賀だったのかなあ」
朱雀さんは透明ゴリラの方を見た。
「これ、陰陽の護法童子ですよ」
「「「「えっ!」」」」
「このゴリラ、陰陽系のもんなのか」
鏡子ねえさんが透明ゴリラのおなかあたりをポンポンと叩きながら言った。
「あ、毛がわしゃわしゃだ」
チアキも寄っていって、足のあたりをなで回した。
「なんと、俺は超能力だと思っていたんですが、陰陽系の物だったんですか」
「もう、本流では失伝した技術ですよ、丸出さん。これは本家に報告しなくては」
「そうなんですかあ、うちが陰陽の家系とは、農家の家系だとばっかり思ってましたよ」
「ヒデオのルーツが解って良かったね」
「ゴリちゃんたち、術の存在なんだねえ」
「パワーアップ方法とか伝わってるかもよ」
『サザンフルーツ』とヒデオさんは仲が良いみたいだな。
この見えないゴリラ二体が居れば良い前衛になるだろうしね。
「ヒデオ、ロシア人が来たらゴリラを動かして制圧してくれ」
「あ、はい、やりますよ、鏡子さん」
鏡子ねえさんはにっこり笑った。
これは警備に心強い味方ができたな。
「護法童子というのは、安倍晴明とかの流れですか、朱雀さん」
泥舟が詳しい話を朱雀さんに聞いていた。
「そうね、五条戻り橋の下に住まわせていたらしいわね。前鬼、後鬼のセットで運用していたみたい」
「ひい爺ちゃんが未来に持って行け、必ず二体が役に立つ時がくると言ってたけど、この事だったのかねえ」
「『サザンフルーツ』さんは今何階ですか」
「いま、十六階です。ゴリちゃんが居たおかげでなんとか十階を抜けられましたよ」
「そうですか、下の方に来たら、一緒にレイドしましょう」
「ぜひぜひ、うわああっ」
さすがは
「ヒデオのおっちゃんはパーティーで何やってんの?」
「え、無職だよ、チアキちゃん。なかなか何をするってきまらないで困ってねえ」
「ゴリ頼りなのかあ、何かやった方が良いよ」
「そう思ってるんだけど、なかなか合う職業が無くてね。『
十六階を過ぎても、まだ
後衛はそろっているから、定石だと『
「
「そうしようかねえ」
「そうだよ、ヒデオは鈍いから『
「いやあ、ゴリ太郎とゴリ次郎に命令出さなきゃならないしねえ、むずかしいよ」
ああ、そうか前衛に出るとゴリラたちに命令を出すのが難しくなるのか、言ってみれば指揮能力だしな。
中衛の槍とかかなあ。
珍しい能力があると職業選択が難しいね。