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第四章「ゲートの向こう側」

断章3

「かぁー、負けた負けた。サツキってやつやべーよ! こっちのチートを全部上回ってきやがった!」

 楽しげにチャンプが笑いながら部屋から出てくる。

「笑い事ではない! こちらは出現地点をハワイに設定してまでもサツキのデータ回収作戦に出たのだぞ! 負けてどうする! くそ、これではロードに何を言われるか……」

 そんなチャンプの様子に苛立ったようにキャップが地面を足で叩く。

「そ、それどころじゃないんだな。第二人類の連中、出現地点に飛び込んでくるつもりなんだな」

「なんだと? 今すぐ、出現地点を削除しろ」

 ドクターの報告に、キャップが急いで指示する。

「も、もうやってるんだな」

 キーボードを叩くドクター。

「け、け、けど、まずんだな。既に出現地点のすぐ側にいたサツキは、もう突入してきたんだな」

「なんだと!?」

「へっ、ラッキーじゃねぇか。あの空間に閉じ込めたなら、そこでデータ取り放題だろ? もう一回出ようか?」

 チャンプが、部屋に戻ろうとする。

「そ、それは無駄なんだな」

「あぁ、全くその通りだ」

 そこへロードが部屋に入ってくる。

「ロード。わざわざおいでいただかなくても……。ここは礼儀知らずだらけです」

 キャップがひざまずくが、チャンプとドクターはそのままだ。

Gougleゴーグル社の無能共に礼儀なんて感じたことはないよ」

 キャップの言葉にロードが笑う。

「そんなことより、まずいのは現状だ。TSはこっちのシステムに侵入した後、のシステムに干渉し始めた」

「そ、そうなんだな。我が社の保有するサンフランシスコの工場にある物質生成装置が勝手に稼働をし始めてるんだな」

 ロードとドクターが状況を説明する。

「なんだと、出てくるというのか。奴が、に」

 思わぬ報告に、キャップが驚愕する。

「あぁ、もう飛び立った頃だ。間もなく、Nileナイル社のスクランブル機と交信することになるだろうな」

「どうします、ロード?」

「決まってるだろ。即刻回収だ。Nile社と企業間紛争コンフリクトを起こしてでも、TSは我々が手に入れる」

 堂々と、ロードはそう宣言した。

「承知致しました。直ちに部署を動かします」

 キャップが頷き、部屋を後にする。

「なんだよー、じゃあ俺とドクターはもうお役御免か? あっちで戦う必要はもうないわけだもんな?」

「そうだな……。いや、あるいは……。まだ出番があるかもしれないな、この世界もまた、僕の思う通りであるとするならば……」

 意味深にロードは微笑んだ。


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