高岡
ベッドがほとんどの面積を占める部屋は、煙で臭い。
ここは天王寺駅から徒歩5分、12階建て戸数60のマンション。
実に好条件の物件だが、もう一般人は住んでいない。
速水颯太の事件以後、最上階に凶暴なEG使いが住み始めたと噂が立つと、住人は早々に出て行った。
噂だけでなく、身の危険を感じる程の事件が多発したのが主な原因。
天王寺に住み着いたEG使いが、良くなかった。
商売人どころか、一般家庭にも“お供え物”と言う上納金を要求。
払わなければ暴力、破壊、どちらもする。
あっと言う間に、天王寺周辺は住民が居なくなった。
当たり前だ。
そんな土地に、誰も住みたくない。
その誰も住みたくない12階建てマンションの7階に、高岡聡介は居た。
サイラーにあてがわれた部屋だ。
チームの
サイラーの居る12階から下に、メンバーが住む。
チーム内で高いポジションに居る奴ほど、高い階層に住んでいる。
高岡は、7階。
真ん中より、ちょっと上。
EG使いとしては、、、かなり低い。
高岡はその一室で、サイラーに声を掛けられた時の事を思い返していた。
その日は毎週金曜日にやる、チームの集会だった。
マンション下の駐車場でやる。
いつもなら気合がどうのこうのっていう中高生のノリが横行して、騒いで終わるハズなのだが、この時は違った。
サイラーが『戦争をするぞ』と、ハッキリ全員に、一言ひとこと区切りながら言っていた。
空気が張り詰めるのを、高岡は全身で感じた。
――上へいきたい。もっと上へ、、、
チャンスだ。
自分が上に行ける、チャンスが欲しい。
普段からそう考えて居た高岡の願いが叶ったのか、その日、サイラーからこう言われた。
「オマエ、やってみるか?」
驚いた。
自分の事を、サイラーが知っている事に。
ビビった。
やってみるかと言われたのは、通天閣のモータルフラワーを
多分、死ぬ。
フツーに考えたら、間違いなく殺される。
あの通天閣を仕切りながら、動物園も抑えてると言われているモータルフラワーだ。
「え?」
反応して顔を上げたら、サイラーと視線が合った。
、、、もう断れない。
「やります」
返事をすると、チームの集会ではまだ“後ろの側の先頭”くらいの位置だったが、そこまでサイラーが来て、言葉を掛け、返事をすると自分の肩をポンポンを叩いてくれた。
それだけでカンドーした。