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第三話 謝ってる人を……いや違うな、面倒くさいからもういいよ

 さて冷静に話をしていこう。

 正義の刃は暴力と同じ、ゆっくりと話すんだ。


「俺の中の始まりは、やはりさっきも言った下着事件だ、何処から広まったか知らんけどさ……小中と大変だったんだぞ? 変態呼ばわりされてよ」


 あらあら優香さんがまた顔をそらした、そらさなくてもいいのに。

 家の中の事が広まるとしたら……長女の被害者ヅラの自作自演。

 または次女が言った可能性もある、コイツは少々友達に言う癖があるからな。

 ゆりは違うだろうな、小学生の時は友達が居るタイプではなかった。


「で、一番最初冤罪吹っ掛けられた時よ、叔父さんに言われた言葉……『疑わしい事をしたお前が悪い』だっけ? なあ叔父さん知ってるか? 今俺が家族の洗濯してるんだぜ? おかしくねーか? 長女さんは自分でやらずに俺にやらせてるんだぜ?」

「……すまなかった」

「まあ長女さんの話はもう過ぎた事だし、今ならだらしないで済む話だ、次」


 俺は次女を見た、多分キレてる目をしていたんだろうな。

 母さんとゆりもどう声をかけていいかわからない、って顔をしている。


「千里さん、あんた現在進行形で俺に迷惑かけているのわかる?」

「……蹴ってごめんなさい」

「え゛!? 暴力を楽しんでいるか、イジメをじゃれあいと思ってると思っていたが……いや、純粋にビックリしているだけだ、そしてヒステリックにもならずに謝っているのにもビックリだ」

「……ごめんなさい」


 いや、泣かないでくれよ、泣きたいのはこっちなんだよ。

 今までお前にどれだけ蹴られてきたと思っているんだ?

 はあ……なんか面倒くさい、皆よく正義の刃って振れると思うわ。

 あ、俺は断罪がしたい訳じゃないんだ……


 こう……マイナスな事が起きなければいいって感じ?

 例えば追い詰めて自害させるとかは論外。

 俺は現状さえ変えれればいいんだ。


「てな訳で『お父さん』さ、俺の一人暮らしをさせてくれ、ああ、安心してくれお年玉とかお小遣い全く使ってないから、そこそこの金額はあるからさ、まあ現状バイトもしてるし」

「……わかった」

「よかったよかった、それさえ叶えてくれれば俺は何も望まない」


 俺は自分の食器を持って台所へ、ああ……早食いの癖も治さんとな。

 でも大丈夫だろう、だってこれから問題は解決するんだし。

 なんか最後の晩餐みたいな空気だ、まあ言葉通りか。


 てか父さんもアホだろ、言わなければ少なくとも後一年は保っただろうに。

 ああ……創作物であったな、子供達に秘密を暴露する系。

 あれって恋愛ものだったら親は何も言われないよな。

 なんつーか、主軸がそこじゃないからさ。


「兄さん」

「んんんんん!?」


 は!? いつの間にゆりが部屋にいるんだ?

 ビックリした……何か用なのか?

 まあ……俺に言いたい事はあるか。


「やっぱり兄さんは我慢していたんだね」

「え?」

「だって兄さん……気付いてないかもしれないけど、ニコニコしているけど多分心の声が漏れている」

「そ、そうだったのか」


 うむむ……指摘されんと気付かないぞ。


「私は兄さんが怖くなったから馬鹿にするのを止めた」

「え?」

「兄さんが中学のテストを母さんに見せた時だったかな?」

「ああー俺は勉強してなかったし」

「私その時テストを見て、こんなのも解けないの? って言った」

「ほう、まあお前は塾にも行ってたし勉強そのものが好きだろう?」

「その時の兄さん……多分無意識だったのかな? 『お前もか、お前も俺を馬鹿にするのか、だったら今度は勉強だ』って言ったの」

「えぇ……覚えてない」

「そこからの兄さんは怖かった、私みたいに友達がほぼ居ない訳でもない兄さんが、遊びにも行かず家の事と勉強をしだした」

「ああ……なんか思い出してきたぞ」

「そして出掛けたかと思ったら、町内会の手伝いとか商店街の手伝いとか……普通に考えたら可笑しい行動」

「え?」

「中学生がする行動とは思えない、いやいや数日やるとかならわかるけど、兄さん中学生時代ほぼそれだったでしょ?」

「……ああ、家の大人は信じられないしな、母さんは悪くないんだけど……こう……思春期の初期症状だったんだよ、身近な大人は頼れない的な」


 そいやそんな事あったな、全てを犠牲にして大人達に取り入るんだ!

 まあそのおかげか、町内会や商店街の人達に好意的に接してもらっている。

 バイトだって掛け持ちさせてもらっているし、むしろ商店街の人達が気前よすぎなんだよな。

 それは今はいいか。


「んでお前は謝りに来たのか? 俺は別にお前に対して怒ってもいない」

「……でも、兄さんの人生を間違いなく曲げた1人」

「……そうか? いや、そりゃ青春時代ってたいせつだけどさ、大人の方が長いんだから大丈夫じゃないか?」


 それこそ大人になってからの冤罪の方が困る。

 例えば冤罪でも疑惑を出したお前は、我社には相応しくないとかあるだろう?

 ふむむ……そう考えれば今日ぶっちゃけてよかったかもしれない。


「兄さんはこれからどうしたいの?」

「んん? 俺はこの家を出られればそれでいいよ」

「復讐とかするの?」

「……考えなかったと言えばウソになるが、やるメリットないだろ? 俺の人生これからだし」

「兄さんと私は家族?」

「ああ、さっきはああ言ったけど……家族は家族だろ」

「……兄さん、やり返す事を面倒くさいと思っている?」

「うむ、さっき怒っててわかったのが、俺は現状を変えてくれるならそれ以上は求めない、それに考えてくれ」

「何を?」

「正義の刃を振りかざし過ぎると自殺される可能性があるだろ? または俺に危害が及ぶ可能性がある」

「……なるほど」

「まあそんな感じさ」


 なんつーか、次女が言い返してくると思ったんだが謝ってくるとはな。

 長女もなんか申し訳なさそうにしてたし、母さんも何もいえなくなってたな。

 父さんもゆりもか、まあ長男の闇が深かったらそうなるよな。

 ……多分今、この家から出られる嬉しさでテンション可笑しくなってるな。


「兄さん、何か手伝える事が有ったら言ってね」

「ああ」

「それじゃ」


 ふむ、ゆりは部屋を出で行ったな。

 さてさて、これから快適な一人暮らしか!

 まあ今すぐにとはいかんだろうな。

 それでも今から楽しみだ。

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