「……で、どうしてフィンレーは普通科なのよ? 絶対に特進科だと思ったのに」
「いやあ、あはは。俺は本番に弱いタイプみたいだな」
「もう。一緒のクラスになれると思ってたのに」
ミンディが不満そうに頬を膨らませた。
「クラスは違うけど、同じ学校に通ってるんだから、会おうと思えばいつでも会えるだろ」
「あ、あの。ミンディちゃんさえ良ければ、またこうして一緒にお昼を食べてもらえると嬉しいです。私、まだ女の子の友だちがいないので……私なんかが友だちなんて、ミンディちゃんは恥ずかしいかもしれませんが……」
俺の言葉にリリーが便乗した。
出会ったばかりだが、リリーはミンディに好感を持っているらしい。
「まだリリーのことはよく知らないけど、誰が友だちであろうと、恥ずかしいと感じるなんてあり得ないわ。あたしはあたし、友だちは友だちだもの」
ミンディが、リリーの自虐を否定した。
やっぱりミンディは、子どもながらに人間が出来ている。
「ミンディちゃんは善い人ですね」
「善い人というか、自他の境界線をハッキリ引かないとフィンレーの幼馴染はやってられないもの。自分は自分、他人は他人よ」
もしかしてミンディの人間が出来ているのは、俺が原因だろうか。
子どもっぽい対抗意識を持ったままでは俺と一緒にいるのが辛いから、大人っぽい考え方をするようになったのかもしれない。
ますますミンディに申し訳ないことをした気がする。
俺のせいで、子どもなのに子どものままではいられなかったなんて。
「厄介な幼馴染でごめん」
「フィンレーがいたおかげで今のあたしがあるんだから、感謝こそすれ厄介だと思ったりはしないわ」
あまりにも大人だ。俺より二十歳も年下なのに、そのことを感じさせない早熟具合だ。
俺が十二歳の頃なんて、修行辛い、師匠ムカつく、くらいのことしか考えてなかったのに。
「ミンディって大人だったんだな」
「今さら知ったの?」
「今さら知った」
ミンディが呆れたように肩をすくめた。
「とにかく。友だちが誰であれ、あたしの評価とは別の話よ。だからリリーがそんなことを気にする必要は無いのよ」
そう言ったミンディは、嬉しそうにするリリーの顔を覗き込んだ。
「それにリリーって女のあたしから見ても可愛いわよ。守ってあげたくなるタイプね。ぜひ友だちになりたいわ」
「なんか分かるかも。リリーって小動物っぽいんだよな」
「それ! 小動物っぽくて可愛い!」
小動物っぽいと言われたリリーは、恥ずかしそうに、しかし嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうございます。でも私、近々小動物じゃなくなる予定なんです。筋トレをいっぱいして、ムキムキになるつもりです!」
「えっ、ムキムキ?」
「リリー、本気で鍛えるつもりだったんだ……」
「はい! バッキバキのシックスパックを手に入れてみせます!」
リリーがシックスパックかあ……。
俺とミンディは微妙な表情をしつつ、楽しそうにしているリリーを見つめた。