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第二十六話 大きな違和感

 今日もガンドルフィはランスアーサーと沼地のパトロールに出かけた。

 子供たちも自分たちが受けられる依頼を持って、冒険者ギルドを出ていたが、近頃、あの子たちは薬草採取の依頼は受けなくなっていた。

 いずれも村の見張りや、村の周囲を囲む柵の修繕の依頼など、警戒と防衛に関する依頼ばかりを受けるようになっていた。


 きっと三人は、ランスアーサーが魔王パフェッドに頼んでゴブリンの大軍をマーカロン村に差し向けている話に警戒をしているのだろう。


 その事を私も心配でないわけではなかった。

 ゴブリンなら例え何十万といようとも一瞬で蹴散らす自信があったが、それでもマーカロン村が襲われる事態には不安を感じていた。


 そして、私の───そして子供たちの不安はいよいよ現実のものとなった。


 まずは沼地のパトロールから帰ったガンドルフィからだった。


「シルヴィア。どうやらゴブリンの大軍がマーカロン村に攻めて来るって話は、本当のようだ。マリアンヌが教えてくれた。仲間のリザードマンから連絡があったらしい。周囲のゴブリンが集結し、マーカロン村を襲う計画をくわだてているそうだ」


 私は冒険者ギルドの受付嬢の椅子から静かに立ち上がった。


「ついに来たか」


 そう呟いた私は目線を動かさず、注意深くランスアーサーの様子をうかがう。

 そしてランスアーサーの口元が一瞬だけ、ピクリと引きつったことを見逃さなかった。

 それはほんのわずかな笑みだった。


 なんということだ……。

 この一件は勇者ランスアーサーが裏で糸を引いている。

 それは悲しい事実だった。

 しかも結託しているのは、子供たちが言うには魔王パフェッドだ。

 勇者が魔王と手を組むなんて……。


 認めがたい事実だったが、悩んでいる暇はなかった。

 私はマーカロン村の防衛の為、すぐに行動を開始した。


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