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第81話

 京都の夜空に、火の粉が舞う。死の匂いが漂い、倒れ伏す兵の呻きが闇に溶けていた。


 クライスが鋭く剣を振り上げ、目の前の敵へと叩きつけた。


 「ふんッ!」


 鋼と鋼がぶつかり、火花が散る。クライスの剣と、メントの杖が交錯した。


 「やはりお前の剣は脆いな」

 メントの口元が冷たく歪む。


 「……なんだと?」


 そのやりとりを遮るように、ヴェンデッタが戦場を見渡しながら呟いた。


 「まさか、被害がこの京都だけだと思っているの?」


 ロイスの頬を一筋の汗が滑り落ちる。震える手で杖を握り直し、目を細めてヴェンデッタを見つめた。


 「あなたたち……やっぱり……」


 「貴様ら、やはり異世界にも死体を放っているな」

 クライスが低く言い放つ。


 そう――ヴェンデッタの死体操術は、すでに異世界にまで浸透していた。無数の骸骨兵が、各地に姿を現し始めている。


 クライスはその動きを見越し、アルタイル王国の守備をカノンに任せていた。


 「カノン……一人で大丈夫かな」

 ギャバットが呟く。


 「ギャバット、ハンドル! 今すぐアルタイル王国へ向かえ!」

 クライスが叫んだ。


 「でも、それじゃあなたは……!」

 ハンドルが戸惑う。


 「私たちは大丈夫っす! だから行ってください!」

 エリーが力強く背中を押した。


 「了解! じゃあ、ここは任せます!」

 ギャバットたちは飛行装置で宙に舞い、異世界へと向かった。


 そして、そのとき救世主が現れた。


 「待ってろぉ! すぐ行くからな!」

 ビルの屋上を駆け、カイラが宙を翔けて現れる。


 メントの目が見開かれた。


 「まさか……あり得ぬ……!」


 「驚いてるようだな。無理もないさ」


 「どうやって戻った!?」

 メントの声が裏返る。


 「答えはこれだ――タイムトラベルさ」


 ブゥン、と空間が歪み、ワームホールが出現した。その先には、恐竜が闊歩するジュラ紀の光景が映っている。


 「禁忌魔法……転移先で、それを……!」

 メントの声が震える。


 「正解。そして今、お前を殺しに来たんだ」


 その言葉に、クライスとエリーが駆け寄る。


 「カイラ……すまなかった。ずっと、君を騙していた……」


 「もういいんだ。それより、世界を救おう。――陛下」


 クライスは深く頷き、剣を構えた。


 ◆ ◆ ◆


 《アルタイル王国 王都》


 骸骨兵たちは既に王都に到達していた。


 「くそ! らちが明かない!」


 「諦めないで!」

 カノンが剣を振り抜き、骸骨の首を切り落とす。


 そのとき、突如として空間が揺れ、男が現れる。透明魔法で姿を隠していた彼は、ロングコートを羽織っていた。


 「氷結魔法・ボール」


 氷弾が放たれ、骸骨兵を次々と貫いた。


 「あなたは……?」


 「ただの海賊の裏切者だよ。……片付けるぞ」

 グリスは銃を構え、骸骨兵に連射を浴びせた。


 ◆ ◆ ◆


 《ボルケーノ王国 王都》


 「うおおおおおッ!!!」

 ダイカンが咆哮し、薙刀を振る。火柱が舞い、骸骨を焼き払う。


 「もうだめです! 城まで突破されます!!」

 兵士が怯えた声を上げるが――


 「うろたえるな!!! 行くぞ――火炎波ぁああああ!!」


 紅蓮の津波が押し寄せ、骸骨兵たちを一掃した。


 ◆ ◆ ◆


 《ハッタン王国 砂漠》


 砂漠の地中から、次々と這い出てくる骸骨兵。フロストが血まみれのまま、剣を握る。


 「こちらの体力がもたない……ここまでか……!」


 そのとき、風が巻き起こり、轟音とともに声が響いた。


 「俺様を忘れるなぁ!!」


 ズドォン、と砂嵐を切り裂いて現れたのは――ゲイル。


 「国王! 話はあとだ! 休戦といこうぜ!」


 「貴様……神獣を返せ!」


 「冗談を言えるだけ元気があるなら安心だ! そぉら!」


 ゲイルは巨大な木槌を振り回し、骸骨兵を粉砕していく。


 ◆ ◆ ◆


 各国で、正義と悪が交錯する――

 かつて敵対していた者たちが力を合わせ、世界の命運をかけて戦っていた。

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