京都の夜空に、火の粉が舞う。死の匂いが漂い、倒れ伏す兵の呻きが闇に溶けていた。
クライスが鋭く剣を振り上げ、目の前の敵へと叩きつけた。
「ふんッ!」
鋼と鋼がぶつかり、火花が散る。クライスの剣と、メントの杖が交錯した。
「やはりお前の剣は脆いな」
メントの口元が冷たく歪む。
「……なんだと?」
そのやりとりを遮るように、ヴェンデッタが戦場を見渡しながら呟いた。
「まさか、被害がこの京都だけだと思っているの?」
ロイスの頬を一筋の汗が滑り落ちる。震える手で杖を握り直し、目を細めてヴェンデッタを見つめた。
「あなたたち……やっぱり……」
「貴様ら、やはり異世界にも死体を放っているな」
クライスが低く言い放つ。
そう――ヴェンデッタの死体操術は、すでに異世界にまで浸透していた。無数の骸骨兵が、各地に姿を現し始めている。
クライスはその動きを見越し、アルタイル王国の守備をカノンに任せていた。
「カノン……一人で大丈夫かな」
ギャバットが呟く。
「ギャバット、ハンドル! 今すぐアルタイル王国へ向かえ!」
クライスが叫んだ。
「でも、それじゃあなたは……!」
ハンドルが戸惑う。
「私たちは大丈夫っす! だから行ってください!」
エリーが力強く背中を押した。
「了解! じゃあ、ここは任せます!」
ギャバットたちは飛行装置で宙に舞い、異世界へと向かった。
そして、そのとき救世主が現れた。
「待ってろぉ! すぐ行くからな!」
ビルの屋上を駆け、カイラが宙を翔けて現れる。
メントの目が見開かれた。
「まさか……あり得ぬ……!」
「驚いてるようだな。無理もないさ」
「どうやって戻った!?」
メントの声が裏返る。
「答えはこれだ――タイムトラベルさ」
ブゥン、と空間が歪み、ワームホールが出現した。その先には、恐竜が闊歩するジュラ紀の光景が映っている。
「禁忌魔法……転移先で、それを……!」
メントの声が震える。
「正解。そして今、お前を殺しに来たんだ」
その言葉に、クライスとエリーが駆け寄る。
「カイラ……すまなかった。ずっと、君を騙していた……」
「もういいんだ。それより、世界を救おう。――陛下」
クライスは深く頷き、剣を構えた。
◆ ◆ ◆
《アルタイル王国 王都》
骸骨兵たちは既に王都に到達していた。
「くそ! らちが明かない!」
「諦めないで!」
カノンが剣を振り抜き、骸骨の首を切り落とす。
そのとき、突如として空間が揺れ、男が現れる。透明魔法で姿を隠していた彼は、ロングコートを羽織っていた。
「氷結魔法・ボール」
氷弾が放たれ、骸骨兵を次々と貫いた。
「あなたは……?」
「ただの海賊の裏切者だよ。……片付けるぞ」
グリスは銃を構え、骸骨兵に連射を浴びせた。
◆ ◆ ◆
《ボルケーノ王国 王都》
「うおおおおおッ!!!」
ダイカンが咆哮し、薙刀を振る。火柱が舞い、骸骨を焼き払う。
「もうだめです! 城まで突破されます!!」
兵士が怯えた声を上げるが――
「うろたえるな!!! 行くぞ――火炎波ぁああああ!!」
紅蓮の津波が押し寄せ、骸骨兵たちを一掃した。
◆ ◆ ◆
《ハッタン王国 砂漠》
砂漠の地中から、次々と這い出てくる骸骨兵。フロストが血まみれのまま、剣を握る。
「こちらの体力がもたない……ここまでか……!」
そのとき、風が巻き起こり、轟音とともに声が響いた。
「俺様を忘れるなぁ!!」
ズドォン、と砂嵐を切り裂いて現れたのは――ゲイル。
「国王! 話はあとだ! 休戦といこうぜ!」
「貴様……神獣を返せ!」
「冗談を言えるだけ元気があるなら安心だ! そぉら!」
ゲイルは巨大な木槌を振り回し、骸骨兵を粉砕していく。
◆ ◆ ◆
各国で、正義と悪が交錯する――
かつて敵対していた者たちが力を合わせ、世界の命運をかけて戦っていた。