一応、魔法使いを生業としている私だが、最もしんどい魔法は、何と言っても時間を巻き戻す魔法である。
やはり影響が大きいものはそれだけ使用するにもエネルギーがいる。
一日にそう何回も使えるものではない。
それでも今、私は決死の思いで、時を戻す魔法を使おうとしている。
やるしかない。覚悟を決めて進むしかない。
戻す時間は、およそ10分。いけるか。
詠唱。集中。再度詠唱。
世界が溶け、形を変え、再構成される。
10分前の世界がそこにあった。
ふらつきが強い。やはりこの魔法は体力の消費が激しい。
でも、私は、自らの手にしっかりと握られていることを確認し、安堵した。
スパゲッティを、思った以上に、茹で過ぎました――。
少し減らしてお鍋に再投入。
しかし、体力はもう限界に近い。さっきスープの材料として、わかめを増やしすぎてしまった失敗の修正も響いている。
まずい。もう時を戻すことは不可能かもしれない。
果たして、私は、精根尽き果てる前にこの料理を完遂できるのか。
【満身創痍】