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朱雀30

「SECT. XII.…えーっと『第12節』…De Corporum Sphæricorum Viribus attractivis. ほうほう、『球体の引力について』…Prop. LXX. Theor. XXX.…ふむ、『命題70』に『定理30番』か。Si ad Sphæricæ superficiem puncta singula tendant vires æquales centripetæ decrescentes in duplicata ratione distantiarum a punctis――

…これは、『もし球の表面の各点に向かって、等しい中心向きの力が、点からの距離の二乗に反比例して減少しながら作用するならば』と訳せるか…ふんむふむふむ…」


「……ただいま帰りましたー」


「む。その立ち姿こそ兄者の出で立ち。時に兄者よ、最近どうよ?」


「投資ですか?可もなく不可もなくといった状況ですね」


「長期だからこそ、辛抱強く握るのが勝ちよ。そして全世界型の投信で土台を作ったら、その上で国内の高配当株で充実を図る。これに限る」


「…はあ」


「やっぱり握力。特に長期はこれに尽きる。一時の変動に右往左往せず、どーんと構えておけば大丈夫よ。問題ないない」


「マサシー!そっちにミルキーいるー??」


階下からの母の声。いるよーと大声で返事する。


ミルキー。ダルメシアンのメス、4歳。


人の言葉を話し、ニュートンの「プリンキピア(自然哲学の数学的諸原理)」をラテン語で音読しつつ解釈し、毎日私への投資アドバイスを欠かさない。


「ミルキーー!!ごはんよーー!ササミもあるよーー!」


「む。耳に残るはお飯の呼び声ソウル・セレナーデ。待ってろ母上、今ゆくぞ!」


大好物は鳥のササミを茹でたもの。脱兎のごとく駆け出すミルキー。


【ミルキー】

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