【天堂累児視点】
高松うてめ。
トークも歌も上手な彼女だが、ゲームは下手。
ヘタだからこそ、応援しがいがあるとファンであるてめーらから言われている。
ただ、俺には一つの疑問があった。
「姉さんって、そんなゲーム下手だっけ……?」
俺は実家では姉がゲームしているのをみたことあるし一緒にゲームセンターに行ったこともある。
だが、彼女は運動神経も頭もいいので大抵のゲームはうまくやれてるイメージだった。
そんな姉のVtuber姿であるうてめ様が今日もゲーム配信を行っている。
『じゃあ、今日はこのゲームをやってみようと思うわ』
それは、鬼畜クソゲーと噂のゲームだった。
ありとあらゆるゲームジャンルをぶち込んだうえで、激ムズというそのゲームを選んだ理由を俺だけが知っている。
それはこの前の夕食での会話だった。
『ねえ、累児』
『なに? 姉さん?』
『私、今度このゲームに配信で挑戦しようと思うんだけど』
『いやいやいや! 姉さん無理だって! これ物凄い難しいゲームでゲームも得意なツノ様だって……』
『だって! 累児が……このゲームクリアしたツノばっかり褒めるんだもの……!』
『ええ~……?』
以上。
実に下らない理由である。
だが、姉さんは一度決めたら曲げない頑固なところがある。
けど、大丈夫か。
あまりにも下手すぎて、序盤で躓き続けたらコアなファンくらいしか楽しんでくれないぞ……。
そして、俺の予感は的中し、序盤のアクションで苦戦している。
ぶっちゃけ、危険な匂いのしたその時、とあるコメントが流れてくる。
〈うてめ様って、ゲームしてる時何考えてるの?〉
『何を考えてるか? ゲームの事と弟の事ね』
なんでだよ。俺の事考える暇あるならゲームに集中しろよ。
と思ったが、そこに再びコメントが流れてくる。
〈このアクションの先にウテウト君が待っていると思えばいけたり〉
〈www〉
〈いや流石に〉
『……うてめを弟が待ってくれてる?』
秒でクリアした。
なんでだよ。
続いて謎解きパート。
〈隠された鍵じゃなくてウテウトだと考えれば〉
『かくれんぼね……もうお茶目なんだから』
麻薬捜査官かよってくらい虱潰しに調べ尽くし、天才的閃きで見つけ出していた。
レースゲーム。
〈ゴールでウテウト君が待ってる〉
『最速で会いに行くわ』
コースレコード記録。
戦国シミュレーション。
〈国が豊かになればウテウト君をより甘やかしてあげられる〉
『待ってて、弟の為に最高の国を作るわ』
全ての国を滅ぼし、天下統一。
そして、最後のFPSっぽいゲーム。
流石にこのゲームには苦戦するだろう。そう思っていたが……
〈敵は全員ウテウトの嫁になろうとしているそうです〉
『こ〇すわ』
その日、死神が生まれ戦場は血に染まった。
あまりの恐怖に、配信後俺は姉さんの頭を撫で続けた。
あの死神が少しでも眠りにつくようにと。
それ以降ゲーム配信では、うてめ様にバフかけるためのウテウトの使い方大喜利が始まった。
ただ、とあるRPGで、主人公の名前を、ウテウトにしてたら結婚イベントが起きて、配信終了と言う事故が起きたのはまた別の話。