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第37話 『コメントってぇ、力になるんだってぇ』

【天堂累児視点】



 高松うてめ。

 トークも歌も上手な彼女だが、ゲームは下手。

 ヘタだからこそ、応援しがいがあるとファンであるてめーらから言われている。

 ただ、俺には一つの疑問があった。


「姉さんって、そんなゲーム下手だっけ……?」


 俺は実家では姉がゲームしているのをみたことあるし一緒にゲームセンターに行ったこともある。

 だが、彼女は運動神経も頭もいいので大抵のゲームはうまくやれてるイメージだった。


 そんな姉のVtuber姿であるうてめ様が今日もゲーム配信を行っている。


『じゃあ、今日はこのゲームをやってみようと思うわ』


 それは、鬼畜クソゲーと噂のゲームだった。

 ありとあらゆるゲームジャンルをぶち込んだうえで、激ムズというそのゲームを選んだ理由を俺だけが知っている。

 それはこの前の夕食での会話だった。


『ねえ、累児』

『なに? 姉さん?』

『私、今度このゲームに配信で挑戦しようと思うんだけど』

『いやいやいや! 姉さん無理だって! これ物凄い難しいゲームでゲームも得意なツノ様だって……』

『だって! 累児が……このゲームクリアしたツノばっかり褒めるんだもの……!』

『ええ~……?』


 以上。

 実に下らない理由である。

 だが、姉さんは一度決めたら曲げない頑固なところがある。

 けど、大丈夫か。

 あまりにも下手すぎて、序盤で躓き続けたらコアなファンくらいしか楽しんでくれないぞ……。


 そして、俺の予感は的中し、序盤のアクションで苦戦している。

 ぶっちゃけ、危険な匂いのしたその時、とあるコメントが流れてくる。


〈うてめ様って、ゲームしてる時何考えてるの?〉

『何を考えてるか? ゲームの事と弟の事ね』


 なんでだよ。俺の事考える暇あるならゲームに集中しろよ。

 と思ったが、そこに再びコメントが流れてくる。


〈このアクションの先にウテウト君が待っていると思えばいけたり〉

〈www〉

〈いや流石に〉

『……うてめを弟が待ってくれてる?』


 秒でクリアした。

 なんでだよ。


 続いて謎解きパート。


〈隠された鍵じゃなくてウテウトだと考えれば〉

『かくれんぼね……もうお茶目なんだから』


 麻薬捜査官かよってくらい虱潰しに調べ尽くし、天才的閃きで見つけ出していた。


 レースゲーム。


〈ゴールでウテウト君が待ってる〉

『最速で会いに行くわ』


 コースレコード記録。


 戦国シミュレーション。


〈国が豊かになればウテウト君をより甘やかしてあげられる〉

『待ってて、弟の為に最高の国を作るわ』


 全ての国を滅ぼし、天下統一。


 そして、最後のFPSっぽいゲーム。

 流石にこのゲームには苦戦するだろう。そう思っていたが……


〈敵は全員ウテウトの嫁になろうとしているそうです〉

『こ〇すわ』


 その日、死神が生まれ戦場は血に染まった。


 あまりの恐怖に、配信後俺は姉さんの頭を撫で続けた。

 あの死神が少しでも眠りにつくようにと。


 それ以降ゲーム配信では、うてめ様にバフかけるためのウテウトの使い方大喜利が始まった。

 ただ、とあるRPGで、主人公の名前を、ウテウトにしてたら結婚イベントが起きて、配信終了と言う事故が起きたのはまた別の話。

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