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第23話:フェヴリエ洞窟

「リピエノ叔父さんから話は聞いてるぜ。まずは短縮ランク上げといこうか」


 剣と盾を背負った筋肉多めの男子生徒はミュスクルさん。

 父親がリピエノさんの兄で、血縁関係にある人だった。

 2年生ってことは7~8歳の筈だけど、体格が大きいから15~6歳に見える。

 身長170cmくらいありそうだな。


「初級ダンジョンもかけだしダンジョンとそれほど変わらないけど、スライムが強くなるから気を付けてね」


 弓矢を背負ったスレンダーな美女生徒はシェリーさん。

 リピエノさんの娘というのが驚き、全然似てない。

 こちらも7~8歳らしからぬ成長ぶりで、胸も膨らんでて15~6歳に見えるぞ。

 身長は160cmってところか。

 兄のケラエノさんも似た顔立ちのイケメンだから、母親が美女に違いない。


「アルって呼んでもいいかな? 魔石は全部あげるから、後で売りに行くといいよ」


 杖を持つ小柄な男子生徒はミニョンさん。

 彼はミュスクルさんやシェリーさんの幼馴染らしい。

 小柄といっても彼が年相応の体格なだけで、身長は125cmくらい、7~8歳の平均のようだ。

 ミニョンさんは自分よりも背が低い後輩がパーティに入って、一番嬉しそうだ。



「まずはここ、フェヴリエ洞窟だな」


 と言うミュスクルさんたちに連れられて、初級ダンジョン初挑戦!

 フェヴリエ洞窟は、かけだしダンジョンの次ランクになる場所で、出てくる魔物は強化スライムらしい。

 ポヨンポヨン跳ねているスライムは、かけだしダンジョンとは色が違う。

 かけだしスライムは透明な水色だったけど、フェヴリエスライムは黄色だ。


「まずはアルの今の力を見せてもらえる?」

「はい」


 シェリーさんに言われて、俺は黄色いスライムに挑んでみた。


 まずは物理攻撃。

 ショートソードを片手にダッシュからの突き!

 水色のスライムよりも少し剣が通りにくいな。

 核が透けて見えるのは同じだけど、そこまで剣先を通すのに水色よりも力が要る。

 例えていうなら、水色がプリンくらいで、黄色は羊羹くらいだろうか。

 ショートソードで核を貫くと、黄色いスライムはプシュッと音をたてて消滅した。


「1対1なら支援は要らないみたいだね」


 いざとなったら支援魔法をかけようと思っていたらしいミニョンさんが微笑む。

 消滅したスライムと入れ替わるようにコロンと落ちた魔石は、スライムと同じ黄色だ。

 それを拾ってベルトポーチに入れていたら、洞窟の奥から複数のポヨンポヨン音が聞こえてきた。


「アル、俺がタゲとっててやるから、こいつら倒しな」


 って言いながら、黄色いスライムをゾロゾロ連れてきたのはミュスクルさん。

 剣も盾も構えず背負ったまま、スライムたちに体当たりされても無傷で涼しい顔しながら歩いてきたよ。


「ま~たそんなに釣ってきて」

「この先のヤツ全部持ってきたね?」

「この方が早いしアルの経験値になるからな」


 シェリーさんとミニョンさんが苦笑した。

 ミュスクルさんは黄色スライムを引き寄せる匂い袋を片手にニカッと笑う。

 スーフィーならそれを俺に向かって投げつけるだろうけど、ミュスクルさんはそんなことはしなかった。


「ありがとうございます! じゃあ魔法を使ってみまーす!」

「アルは魔法もいけるのね」

「黄色スライムは風属性攻撃に弱いよ。使えるなら試してみて」

「はーい!」


 ミニョンさんにアドバイスをもらったので、俺は図書館の魔法書から習得した風属性攻撃を使ってみた。

 かけだしダンジョンではスライムをグルグル回しただけだったな。

 今回は攻撃として風属性魔法初使用だ。

 イメージは、ミュスクルさんの周囲に風の刃を乱舞させる感じで。


 下位風魔法:ウィンド・カッター


 発動した魔法はミュスクルさんの周囲に風の渦を巻きつつ、スライムたちを切り裂いた。

 渦の中心に立つミュスクルさんは無傷。

 中身の核まで切り裂かれて、いっぱいいた黄色スライムが一斉に消滅する。

 後には、バラバラッと散らばる魔石が残された。


「お~、なかなかやるな」

「その威力、風属性持ちだね」

「うちのパーティ、風魔法の属性持ちがいなかったから助かるわ」


 先輩方が褒めてくれた。

 この世界の魔法は魔法文字が読めれば誰でも使えるけれど、属性の有無で威力が変わるらしい。

 俺は転生チートの全属性持ちだから、どの属性でも威力はあるかもしれない。

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