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第59話:海賊王の財宝

 晴れた空の下、青い海を白い帆を張った大きな船が進む。

 その数、10隻。

 船は戦闘用の軍艦ではなく、多くの積荷を運ぶ目的で造られた貨物船だ。

 何故か俺は貨物船の一団に同行して、再びルカン島を目指していた。


「私達の積荷がまだ残っていたら、アルキオネ様に贈り物をしたい」


 これまでに海賊の被害に遭ってきた商船のオーナーたちから、そんなことを言われたよ。

 なんか名前が【様】付けになっていて、どうにもこそばゆい。


「アルキオネ様を育てたプレアの孤児院は、貴族の寄付を受けていないとか。ならば私達が支援いたしましょう」


 そんなことも言われた。

 バランさんは驚きつつも、孤児たちを奴隷にしないなら商人たちの支援を受けると言っていた。

 これで孤児院運営も少しは余裕が出るかな?

 バランさんが冒険者を引退しても、続けられる孤児院であってほしい。



 船団は海流と海風の後押しを受けて、本来の3分の1ほどの時間でルカン島に到着した。

 多くの海賊船のために建設された港は、貨物船10隻を難なく停泊させる。

 島へ上陸する商人たちと共に、俺もルカン島に入ってみた。


「思った以上に美しい自然豊かな島だな」

「こりゃ、リゾート地として使えるんじゃないか?」


 大輪の花が咲き乱れる島内は、南国特有の心安らぐ花の香りが漂っている。

 時折ピルルル~ッと聞こえるのは、鳥の囀りだろうか?


「おい見ろ、温泉があるぞ!」

「あはは、もうリゾート地確定だな!」


 積荷より先に温泉を見つけて喜ぶ、商人のみなさん。

 今度ここに来るときには、ホテルとかペンションとか建ってそう。


 海賊たちに奪われた積荷のうち、去年以前のものはほとんどが売られて無くなっている。

 去年以前の被害者たちは、宝箱に保管されていた金貨を分配することになった。


「元々売物だし、もう返ってこないものと思っていたからね。お金で返ってきたなら嬉しい限りだよ」


 被害者のみなさんは、案外満足そうだ。


 宝箱には金貨とは別に、船の設計図が入っていた。

 それが海賊王の技術によるものであることを、俺は事前に聞いている。


 ルカン島の海賊王は無期懲役になるらしい。

 これまでの被害から考えたら死刑になるところだけど、彼は【船の設計技術】に長けた人物でもあり、それを惜しむ船職人たちからの要望で死刑を免れたそうだ。


「ルカン島のアジトに俺が書いた魔導エンジンの設計図がある。その使用権利をアルキオネに与えてくれ。そうすればいくらでも船を設計してやるよ」

「要望を受け入れよう。アルキオネがいたからこそ手に入る設計図だからな」


 海賊王は、俺に魔導エンジンの使用権利を譲渡するという。

 それは、船職人たちが海賊王に船を設計してもらう際に、魔導エンジン設計料金を俺に払うということらしい。

 その要望は、アッサリ通された。

 魔導エンジン、船だけでなく他の乗り物にも応用できるんじゃないかな?

 例えば、古代文明にあったという飛空艇とか。

 ゲーマーとしては、是非とも乗ってみたいと思う。

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