町田家に戻ってハンバーグの仕込みを終わらせ、白飯を二人が帰ってくる時間に合わせてタイマーをセットする。
「よし、メシの準備はこれでOKだ。あとは……」
そういえば、
食後のプリン一つだけという安上がりな好物だが、無いと
買ってくるか……。
「あ、やべ……。財布向こうに置きっぱなしだった……」
二人の好物であるコンビニのプリンを買いに行こうとして、財布を実家に置きっぱなしだったことに気が付いた。
家にあれば安心ではあるが、二人のプリンなしと分かった時の顔が思い浮かんで買いに行くことにした。
20秒歩いた先にある我が家の鍵を開け、扉を開いて中に入る。
――――ぁんっ
扉を開けた瞬間、ふと違和感を感じた。
「なんだ……?」
強いて言うなら、気配……。
なにか心が落ち着かなくなるというか、不安とかとは違う興奮のような感情がわき上がってくる。
ぞわぞわするというか、とにかく予感めいたものを感じたので自然と気配を殺していた。
――――ッ
その気配は2階から感じていた。
音を立てないように玄関の扉を閉め、そっと靴を脱ぐ。
足音を立てないように階段を上り、そろりそろりと廊下を確認する。
「姉ちゃんの部屋?」
「ッ……ぁ、……」
よく見ると姉ちゃんの部屋の扉が開いており、奇妙な声はそこから聞こえてくるようだ。
というか、もうここまで来たらアホな俺でも分かる。
喘ぎ声を発している誰かがいる。
姉ちゃんが
つい最近レズビアンのカップルを間近に見ているだけに、またもや「よもやよもや」の事態なのかと予感がした。
「
「そう、もっと……。ねえ、今日の
「それは……うん♡」
好奇心は猫を殺す、という言葉もあるしそっと帰ろうとも思ったのだが、やはり確認せずにはいられなかった。
気配を殺し、ほふく前進のように身体を倒して扉に近づく。
「マジかよ……」
「
「だってぇっ……
「大丈夫だよ、私は、いなくなったりしないから」
「
「そ、それは……えっと、どうしてだと思う?」
一体なんの会話をしているんだ?
喘ぎ声に交じっていて内容がよく聞き取れない。
オムライスがなんだって?
「絶対――のためだ」
「分かってるくせに……
「――――と初チューはできたの?」
「今日の今日で、そんなことできないよ……」
「もうすぐ、なんだよね? 約束の日は……もうすぐ」
「そうだよ。もうすぐ卒業旅行だから……キスだって、残しておきたかったのに、
「ごめんよ
「ダメだよ、許さない。だから私は――ちゃんと結ばれる。
会話をしながら姉ちゃんと
主に聞こえてくるのは姉ちゃんの喘ぎ声だ。
これは、あれか? タチとネコでいうところで表現すれば、姉ちゃんの方がネコ、つまり受けなのか。
正直光景が衝撃的過ぎて何の会話か頭に入ってこない。
二人はシーツをかぶったまま睦み合っているようで、その姿を視認することはできない。
キスがどうのこうのと聞こえるが、布をかぶっているせいで声がくぐもってよく分からなかった。
理解できたのは、姉ちゃんと
姉ちゃんが
俺が知る限り彼女の交友関係でそう言った相手がいるというのは知らない。
二人の関係がレズであるというのなら、その相手は女性ということになるのだろうか……。
ひょっとしたら、
もしかしたら、俺と
だからあんなあっさりした反応だったのか……。
単なる予想でしかないが、妙な予感があった。
男に興味が無いならあの反応も納得できる。
さっきも言ったが、うぬぼれでなければ
だけどそれは俺が幼馴染みであり、好きな人の側にいるおまけであるというだけだったのかもしれない。
まだしっくり来ていないところはあるけど、一連の行動が頭の中で繋がった部分があった。
俺は気配を殺したままその場を後にし、財布を持ってそっと玄関から出た。
◇◇◇◇◇
コンビニでプリンを購入して冷蔵庫にしまう。
ソファに腰を下ろしてさっきの光景を思い出すと、衝撃的な光景がフラッシュバックしてしまった。
姿は見えなかったが二人の睦み合いはアレが初めてではなさそうだった。
どうやら以前から二人は付き合っていたと見える……。
「はぁ……なんだか俺だけ置いてけぼりくらった気分だなぁ……」
俺の身近な人達がいつの間にかカップルになっていた。
「あ~~~~っ! もやもやするぅ~~~っ」
なんだか寝取られやBSSを喰らった気分だ。
俺はどんだけうぬぼれが強いのだろうか。
恋人ができたなら祝福しなきゃいけないのにな……。
自分の裁量の狭さが嫌になった。
「ただいま~♪」
俺がモヤモヤしながらソファで悶えていると、玄関から
思っていたより帰ってくるのが早かったな。
「お帰り~」
俺はぼんやりしてしまっておざなりな返事を返してしまう。
その瞬間に
「
「友達とカラオケ行ってくるって。夕飯までには戻るから」
今日の
「そうか」
「それより兄ちゃん」
「うん?」
ぼんやりとしてしまった俺の返事を聞いた
「エッチしよっ♡」
「え?」
言うが早いか
俺の肩を掴んでジャンプし、制服のスカートが舞い上がってピンク色の下着が一瞬見える。
次の瞬間には
そしてその次の瞬間には、
「んっ……きら、り?」
「んちゅぅ……ちゅ、ちゅ、兄ちゃん、大好きだよ♡」
「どうしたんだいきなり」
「兄ちゃんの声、寂しそうだった。なんかイヤな事あったでしょ」
それとも俺が分かり安すぎるのか?
「理由は言わないでいいから、寂しい気持ち、私の身体で癒やして♡」
再び覆い被さってくる
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