「……で、何であんたがついてくるのよ」
「俺の家もこっちなんだよ。知ってるだろ」
不運な私は、家への帰り道でジェイデンに会ってしまった。
家が近所のため道が一緒なのは仕方がないが、どうして帰るタイミングが被ってしまうのか。
「私、授業が終わった後だいぶキャロルと喋って時間を潰してから下校したんだけど?」
「その間、俺は日直の仕事をこなしてたんだよ。この自意識過剰女」
自意識過剰女と来たか。
たった一回下校が被っただけでジェイデンが自分についてきたと思ったならそうかもしれないが、下校が被るのは今日が初めてではない。
「下校が被るの、今週に入ってもう何度目だと思ってるのよ」
「二度あることは三度あるってやつじゃねえか?」
「ああ言えばこう言うわね!?」
私が苛立ちを隠さずに言葉をぶつけると、ジェイネンもイライラした様子で言い返してきた。
「というか町に魔物が出るようになったから、下校は複数人でするように言われてるだろ。どうしていつも一人なんだよ!?」
「いつもじゃないわ。キャロルの部活が無い日は途中まで一緒に帰ってるわよ」
「それ、あいつの部活がある日は一人ってことだろ」
町に魔物が出るようになって以降、小学生と中学生は集団下校が義務付けられるようになった。
高校生は集団下校が義務ではなく推奨されるだけにとどまっているが、複数人で下校する生徒が大半だ。
「そう言うジェイデンだって一人じゃない」
「俺は魔物が出ても一人で倒せるからいいんだよ。落ちこぼれのお前とは違ってな」
その通りなのかもしれないが、腹の立つ言い方だ。
そしてジェイデンの腹の立つ言葉は続く。
「お前はもう魔物討伐隊に入るのは諦めた方がいいんじゃねえのか? この前の授業で役立たずだっただろ。今ならまだ授業変更も可能なはずだ」
「どうしてあんたに、そんなことを言われなきゃならないわけ」
「……お前には向いてねえんだよ」
悔しい。何が一番悔しいって、ジェイデンの言う通りなことが悔しい。
この前の授業で私は何も出来ず、ただの足手まといだった。
こんな調子で魔物討伐隊に入ったら、命がいくつあっても足りない上に、私が足手まといなせいで仲間の命まで危険に晒す可能性がある。
だけど、それでも。
「落ちこぼれには夢を見る権利も無いの……?」
魔物討伐隊に入ることは、私の夢だ。誰にも譲ることの出来ない、強い希望だ。
「そうじゃなくて、俺はただ……」
私が涙声になったことで、ジェイデンは動揺していた。
自身の頭をガシガシとかいてから、吐き捨てるように言った。
「お前は落ちこぼれだけど、伸びしろがある。俺とは違って」
「そんな慰めはいらないわ」
「事実を述べただけだ」
落ちこぼれを「伸びしろがある」と表現するのは、ジェイデンなりの最大限の優しさなのだろう。
しかし慰められたからと言って状況が変わるわけではない。
「自分が落ちこぼれなことは分かってるわ。いくら努力しても、リズム感が狂っていて治らないことも。だけど、夢を諦めたくはないの」
「……そうかよ」