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第3話

ドンドンドンドン!!


扉を壊さん勢いで叩かれる音でユリアーナは目を覚ました。

「起きろ!さっさと起きて扉を開けなさい!」

そんな言葉と共に叩かれる扉。ユリアーナは小さく息を吐きながら立ちあがると扉を開けた。

「さっさと開けなさいよ、このノロマ!」

文句を言いながら部屋の中にドカドカと入ってきたのはメイドだった。そして、ガシャンと乱暴にテーブルの上に食器を置く。

「今日は、ミランダお嬢様の14歳のお誕生日パーティーが開かれるから、あんたはここから出てくるなって奥様からの言伝だよ」

ユリアーナに向き合いキツイ口調で言い放つ。

「それをなぜ、私が聞かなきゃいけないの?」

ユリアーナはメイドに向かって問う。身分で言えば自分の方が上なのだ。それにミランダはユリアーナの妹である。

「なっ」

突然のユリアーナの反論にメイドが言葉を失う。前世のユリアーナなら大人しくハイと返事をしていただろう。だが、今のユリアーナは以前の記憶があり、トールの屋敷で色々と教えられ鍛えられたあとだ。

「ねぇ、メイドの分際で、なぜあなたはそんなに私に命令ができるの?ねぇ」

ゆっくりと、メイドに近づきながらユリアーナはメイドに問う。

「なっ、なっ、」

ユリアーナの突然の豹変にメイドは言葉を失い、後ずさる。

「ねぇ、前から思っていたけど、私はここに閉じ込められてるけど、この家の娘よ。お父様やお母様が私に対して酷いことしてるからって、メイドであるあなたがしていいわけじゃないのよ。わかるかしら?」

ユリアーナの言葉に威圧されコクリとメイドが頷く。

「だから、あなたに出歩くなと命令されて、それを私が聞くいわれもなにもないのよね」

下の者が上の者に命令などあってはならないことだ。前まではそうだったかもしれないが、今のユリアーナは以前の記憶も知識もあるのだ。だから、命令されて素直に言うことを聞くつもりはなかった。

「で、ですが、奥様がミランダ様の誕生日パーティーなので、ユリアーナ様を絶対にこの屋根裏部屋から出すなと…」

ユリアーナの豹変ぶりに驚きつつも、ユリアーナの母であるメリアンダの命令だと告げる。

「そう、ならいいわ。紙とペンを用意して。そうしたら今日はこの部屋から出ないわ」

ユリアーナは交換条件だと言わんばかりにメイドに告げる。

「しかし」

メイドがその条件を渋る。この部屋にそんなものを持ち込んだことがバレれば、罰せられるのは自分なのだ。

「あら、なら言いつけを守らないで私が外に出歩ても文句はないわね」

「そ、それは困ります」

ユリアーナの言葉にメイドがすかさず返事をする。出歩いているのがバレれば、それはそれで問題になり、メイドが罰せられることには変わりないのだ。

「私はどっちでもいいのよ?」

「わ、わかりました。紙とペンを持ってきます」

普段と違うユリアーナの態度に圧倒されメイドは渋々ではあるが、紙とペンを持ってくると告げ部屋を出ていった。

「ふぅ、緊張したわ。私でもやればできるのね」

メイドが出て行ったあとでユリアーナは大きく息を吐く。教わったことを実践するのは初めてで、緊張して、手が震えていた。例え誰であろうと毅然とした態度で意見を述べること。それは以前のユリアーナには出来なかったことである。この場所に閉じ込められ、与えられる数々の言葉の暴力。時として、身体が傷だらけになるぐらい殴られたりもした。そんな生活をしていれば委縮してしまうのも当たり前である。

「今日も冷めたスープとカビたパンなのね…」

メイドが置いていった食事を見て溜め息をつく。食べなければ体力が落ちる。栄養だって足りない。もう、何年この食事をとってきたのだろう?そんなことを考えながらユリアーナは冷めたスープに口をつけた。



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