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第221話 危機的な脱出劇

「ティベッツ、もうすぐで迎えが来るはずだ。それまでの辛抱、テイラーたちのいる小屋を守りながら戦うぞ!」


「わかっているさウィルソン。それに俺のほうが射撃は得意だッ!」


 そう言ってティベッツは体を遮蔽物からだし、銃の照準をきちんと合わせる。

照準を合わせると彼はトリガーを引き、一番先頭を走ってくる兵士に向けて発砲した。

放たれた銃弾は正確に命中し、命中した兵士は頭から血を吹いて倒れる。


「ナイスキル! 次は俺の番か!」


 ティベッツに続いて今度はウィルソンが射撃、これもまた敵兵士の頭に命中した。

だが弾倉はなくいちいち装填をしなければいけないため、彼らは紙包みを食いちぎって再装填する。

再装填している間にも敵はマスケット銃を撃ってきたが、それは遮蔽物に遮られて命中することはなかった。


「いちいち装填しなければいけないというのは面倒くさいな!」


「全くだ。弾倉を開発してくれた人に感謝だな」


 ウィルソンは文句を言いながらグリップを元の位置に戻す。

また彼は遮蔽物から体を出し、向かってくる兵士に向かって発砲した。

ティベッツも負けじと発砲する。


「……全然数が減らないな、そのうち突破されるぞ」


「白兵戦でもやるか?」


「冗談はよして……っておい、あれ!」


 ウィルソンはテイラーがいる小屋の方を見て驚愕する。

なんとテイラーがクラウディアの肩を借りて小屋から出てき、彼女に支えてもらいながらコルトを構えていた。

彼はニッと笑うと、敵兵に向かって発砲する。


「あいつ、無茶しやがって!」


「全くだ。だがあれではクラウディアさんが危ない。援護射撃をするぞ!」


「そうだな!……ってこの音は!」


 上空に響き渡るジェットエンジンの音。

その場にいる全員がその音に驚き、動きを止めた。

その瞬間、ウィルソンとティベッツは遮蔽物に頭を抑えながら隠れ、テイラーはクラウディアの上に覆いかぶさるようにして彼女を伏せさせた。


『救助対象を確認、ですが襲撃されているようですね。航空支援を行います』


 上空に到達したXDWP-02は翼下に搭載した無人機をガンポッドとし、群がるミトフェーラの兵士に対してマウザーBK27mm機関砲を発砲、これをあっという間に制圧した。

発砲し終えたXDWP-02はウィルソンらの上空を通過、そのときに強烈な衝撃波があたりを襲い、テイラーが先程までいた小屋は倒壊した。


「あー、結局出てきておいてよかったな」


「まったくだな。テイラー、立てるか?」


「すまん、手を貸してくれ」


 テイラーはやってきたティベッツの手を借りて立ち上がる。

機銃掃射があった場所を見た彼らは、先程まであんなにいた兵が一瞬で殲滅されたことに改めて驚いた。

その時、上空からサーチライトが投影され、その光の先にはC-130の姿が見えた。


「助けが来たぞ! 着陸しようとしているようだ」


「着陸予定地はあの道だが……死体が山程転がっているぞ?」


「仕方がないな、さっさと除けるか」


 ウィルソンとティベッツは協力して死体を道路の脇へと映す。

その様子をXDWP-02は捉えていたため、C-130には着陸を待つように伝えた。

死体の除去が終わったことを確認したXDWP-02はC-130に着陸許可を出し、C-130は着陸コースに入った。


「本当に着陸できるのか?」


「JATOを逆噴射するんだってさ。よくやるよ」


「そういえば空挺部隊が降りてくるという手筈では?」


「XDWP-02が全て制圧してしまったからな。あの航空支援がある以上空挺部隊は不要だっただろう」


 お役御免になった空挺部隊は、C-130の中で座ったまま一応着陸した時の周囲制圧に向けて準備をする。

C-130の車輪が地面に接地した瞬間、前方にとり付けられたJATOが火を吹いた。

ロケット噴射によってC-130は急激に減速し、僅かな距離で着陸に成功した。


 着陸したC-130の後部ハッチが開き、中からは完全武装の兵士が続々と降りてきた。

彼らは無事に保護されたウィルソンたちと熱い抱擁を交わし、彼らを機内へと案内した。

残りの兵士はあたりに転がった死体を警戒するが、それらが動き出すことはなかった。


「さぁテイラー、君で最後だ」


「わかった。だがその前に少し――」


 そう言ってテイラーはクラウディアの方へと歩いていった。

彼女の前についた彼は、彼女に看病に対する感謝を伝えた。

彼はもう少し長く話したかったが、これ以上長くいると迷惑なのですぐに切り上げようとした。


「先程も言いましたが、また来てくださいね」


「戦争が終わればきっと」


 テイラーはそれだけを言って去ろうとした。

クラウディアはそんな彼の背中を少し寂しそうに見送る。

その時であった。


 パァン!


 乾いた銃声が夜の空気に広がる。

死んだと思っていた兵士が実はまだ少しだけ息が残っており、その兵士が最後の力を振り絞ってクラウディアに向けて発砲した。

彼女の腰辺りに銃弾が命中し、彼女は血を吹き出して倒れた。


「クラウディア!」


 テイラーは彼を支えていた兵士の腕を振り払い、クラウディアに駆け寄った。

だが幸いにも銃弾は致命傷を免れたらしく、一命を取り留めていた。

周りの兵士はその生き残っていた兵士の頭にこれでもかと言うほどの銃弾を浴びせて今度こそ確実に殺す。


「その娘をC-130の中に乗せて差し上げろ。ノルン島に着陸してそこから艦船にある医療室へと運び込む」


「「「「了解!」」」」


 数人の兵士に担ぎ上げられながら、クラウディアはC-130に乗せられた。

兵士たちは最後まで敵が現れないかどうかを確認し、後部ハッチから乗り込んでそれを閉める。

滑走先に障害物がないことを確認した後、C-130は加速を開始した。


 JATOと後ろと下に噴射してC-130は無理やり短い滑走距離での離陸を試みる。

だがなかなか機体は上がりきらず、あわや村の建物に衝突するという所まで来た。

だが衝突する直前に車輪が地面を離れ、建物ギリギリの高さでC-130は離陸した。


「これはまたまたすごい迎えが来たねぇ……」


 村長は上空を通過するC-130を見上げながら呟く。

他の女衆たちも轟音で起きていたので、飛び上がるC-130の姿を見送った。

その後無事にC-130はノルン島に帰投、クラウディアはXDWP-02が呼んだV-22オスプレイにて強襲揚陸艦ワスプへと移送された。


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