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第5話 出会い

クライスが魔王に連れ去られてから三時間後。王宮の広間には、女勇者ルーシェをはじめとした者たちが集まっていた。


「やっぱり、私たちだけでハッタン王国に向かうしかないわ」

ルーシェは口を噤み、視線を落とした。顔には不安が滲んでいる。


「奴なら大丈夫だ。意外としぶといからな」

コロウの言葉に、ロイスはそっとルーシェの肩を撫でる。まるで励ますかのように。


そうして、女勇者ルーシェ率いるボルケーノ王国軍は出国した。連なる馬車は林の中を颯爽と駆け抜けていく。


だが、先頭の馬車を止めたのはコロウだった。


「どうしたの?」後方からルーシェの声が響く。


「人間の子供が倒れている!」


兵士たちの間にざわめきが走る。

「人間…!?」

「なぜ食材がこんなところに…?」


「…助けて…」

少年がコロウを見上げ、震える声で助けを求めた。


コロウは猟銃を下ろし、ゆっくりと少年に近づく。


「おい、人間。なぜここにいるんだ?」


「お姉ちゃんを…探しに…」


コロウの視線は少年の服装、髪型、靴に留まった。奴隷の姿とは違う。間違いない、彼は“人間世界からやってきた人間”だ。


ロイスとルーシェが馬車から降りて近づく。


「どうする?この子」ロイスは杖を構えながら尋ねた。


そのとき、少年は勢いよくコロウの脚にしがみついた。


「僕は…お姉ちゃんを探さなきゃ…!!」言い終わると、少年は意識を失った。


コロウはその必死な姿に、昔失った弟の面影を重ねていた。


「…」


「で、もう調理してもいいんじゃない?」

ロイスは杖を少年に向けて笑った。


「この子は、連れていく」

コロウの声は揺るがなかった。


「正気か?でも、どうして?」

ロイスの瞳に驚愕が広がる。


「似てたんだよ、弟に。」


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