両足を失い、砂浜に倒れ血を流しながらも、魔王は口元ににやりと笑みを浮かべていた。
「何を笑ってやがる……」コロウが睨みつける。
「さっきの蜘蛛の形態とはまるで別人……これが進化体ってやつか?」ルーシェが呟いた。
肩を押さえながら、とぼとぼとクライスが歩み寄る。
「だが、これで終わりだ。お前ら、どけ。俺がケリをつける」
クライスは右足に魔力を込め、魔王を踏みつけようとした。
「じゃあな、魔王。二度と生まれ変わるなよ」
そう言い放つと、彼の足が魔王の体を踏みつけた。
しかし、その瞬間だった。魔王の肉体がみるみるうちに変態を始めたのだ。
クライスの蹴りは、細い両腕に見事に防がれ、魔王の身体は細身から一転、筋肉もりもりの屈強なマッチョ体型へと変貌を遂げた。
「また進化か!?」驚愕の声が漏れる。
「みんな、走って!」ルーシェが叫ぶ。
だが遅かった。魔王はクライスの脚を掴むと、勢いよく振り回して彼を吹っ飛ばした。
コロウは銃を構え、バン!と連射するが、一発たりとも魔王に傷はつかない。
「クソ……!」怒りをにじませるが、次の瞬間、魔王の両脚が再生し始め、コロウの首を鋭く掴み上げた。
「離せ……!」コロウが叫ぶ。
投げ飛ばされた彼が砂浜に叩きつけられる。
「おらあ!戻ってきたぞ、クソ野郎!」クライスは拳に魔力を込めて魔王の顔面を強打するが、びくともしない。
その時、ヒューンと風を切る音とともに、誰かが降ってきた。
「そぉらあ!」赤髪の大男が薙刀を振りかざし、砂浜に砂嵐が巻き起こる。
「ダイカン!」クライスが叫ぶ。ボルケーノ王国の王子、ダイカンが現れたのだ。
「加勢するぞ、クライス!」ダイカンの声に士気が上がる。
魔王はにやりと笑い、ダイカンに拳を振り下ろすが、ダイカンはそれをしっかり受け止めた。
「なんてパワーだ……これが魔王の力か!」ダイカンは感嘆の声を漏らす。
「だが、俺の魔法も侮られては困るな!」
両腕を構え、ダイカンは炎の魔法を放つ。
「炎波!」火炎の波動が魔王を飲み込み、ばっしゃーんと轟音が響いた。
魔王は後方へ吹き飛ばされるが、やがてゆっくりと立ち上がる。
「まだ死なねぇか……」クライスの声には焦りと覚悟が入り混じっていた。