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第14話 仕留め


クライスたちが魔王と激闘を繰り広げる最中、ロイスとタローは船の上で帰還の時を待ち続けていた。しかし、タローの限界はもう近かった。


「お姉ちゃんは……今もこの島のどこかにいるかもしれないんだよね?」


ロイスは冷たい笑みを浮かべながら答えた。


「人間のくせに頭が回るのね。そうよ、きっともう食べられてるかも」


その言葉に、タローの瞳が一層曇った。


「……やっぱり、僕、お姉ちゃん探しに行く」


「行けば?どうせ行っても死ぬだけよ」


「守ってくれてありがとう、魔法使いさん」


タローはうつむきながら船を降りた。大雨が降りしきる嵐の中、彼は必死に姉の名を叫びながら海浜を走った。


「おねーちゃーん!」


大粒の涙が頬を伝い落ちる。震える声で呼び続けるタローの前に、膝をつき片腕を押さえる男がいた。


「おい、なんでここにいる!危ないから船に戻れ!」


慌てた様子のコロウが言った。


「俺はさっきの爆発で右手が潰された。もう動けないんだ」


タローが浜の先を見ると、ルーシェを抱えるクライスの姿と、こちらに迫り来る白い化け物が見えた。


「姉を探しに来たんだろ?そこの猟銃を持ってこい」


「これ?」


タローは落ちていた猟銃を指差し、拾い上げて渡した。


「よし、じゃあいいか?俺が左手で銃を支える。お前は引き金を引け」


「怖くてできないよ!」


「いいからやるんだ!お前が引き金を引くんだ!」


コロウは銃身を魔王の右眼に向け、タローを膝に座らせる。


「いいか、合図したら思いきり引け」


ドスドスと走り寄る魔王の右眼を狙い、タローは深呼吸をした。


「今だ!」


バンッ!


銃声が響き渡り、魔王の右眼から緑色の血が勢いよく噴き出した。


「ぐぎゃああああ!!」


魔王は顔を押さえ、倒れ込む。


「まだ油断するな!反対の目も頂く!」


コロウは即座に狙いを変えたが、魔王はのたうち回り、なかなか狙いを定めさせてくれない。


「クソ……早く目玉を見せろ!」


すると魔王は立ち上がり、狂ったように奇声をあげながら襲いかかってきた。


「ぎゃああああああ!!」


コロウが叫ぶ。


「左眼見えた!今だ!」


再び銃声が轟き、魔王の左眼は潰され、遂に魔王は倒れ込んだ。


「や、やった……」


魔王はもう起き上がりそうにない。これで進化も終わり、死に至ったのだ。


だが、魔王は苦しげに呻き声をあげながら、何か呪文のようなものを唱え始めた。


その前に、ブゥン、とワームホールが開いた。


「なんだ……なんの魔法だ……!」


魔王はずるずると這いずりながら、そのワームホールへと逃げ込んでいった。


「はぁ!?逃げられた……!」


雨が止み、夜明けが島に訪れる。


「もういい。さっさと姉の元へ行け。おそらく洞窟の中だ」


「ありがとう、猟師さん」


その時、ボロボロのクライスが駆け寄った。


「待て!君か、魔王にとどめを刺したのは」


「礼を言う。君なしでは魔王を仕留めきれなかった」


「いや、でも……」


魔王が逃げてしまった事は、口にできなかった。


「姉を探しに行け。もう行きなさい」


「うん、ばいばい」


タローは静かに島の森へと歩みを進めた。


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