クライスたちはルーシェの遺体を抱えて、静かにアルタイル王国へと帰還した。
遺体はすぐに埋葬され、街の中央には彼女を偲ぶ立派な石像が建てられた。人々はそのモニュメントに目を向け、悲しみと敬意を込めて祈りを捧げた。
しかし、クライスは帰還したその日から自室に籠り、誰とも口を利かなかった。
静まり返った部屋のドアが、控えめにノックされる。
「クライス、陛下がお呼びだ。報告が聞きたいのだろう」
声の主はコロウだった。
それでもクライスは沈黙を貫いたまま、ゆっくりと部屋を出る。
王宮へ続く重厚な扉が音を立てて開かれた。
「来たか、息子よ」
玉座に腰かけるアルタイル王は、いつもの冷ややかな態度でクライスを迎えた。
「……奴も所詮はただの冒険者だな。こんな役立たずなゴミを引き入れたおれがバカだった」
その言葉が、まるでクライスの心の奥底に眠っていた何かを引き裂いた。
「おれはずっと間違っていた。生まれてくる親を」
鋭い視線が王を捉える。
「何だと?」
アルタイル王が声を荒げる。
「次はお前だ」
クライスの手に握られた刃が、一瞬のうちに王の腹を切り裂いた。
王宮の玉座の間に、鮮血が飛び散る。
アルタイル王は苦悶の声を上げ、やがて静かに息を引き取った。
王が倒れたその瞬間、クライスは新たな王として、その場に立ち尽くしていた。