翌朝、王宮中庭に九人が集められた。
フェリドが杖を掲げて声を張り上げる。
「地下遺跡調査隊の編成を発表する!」
まず、隊長役として名指しされたのは真聖だった。
「落ち着いて状況判断ができる。その資質を買われたのだろう」
つむぎは微笑し、拳を軽く突き合わせた。
「私が前線をやる。文句ないでしょ?」
「頼む」
次に俊介が挙手する。「俺、後詰めな。……長続きする保証はしないけど」
その言葉に周囲が苦笑するも、彼の目だけは真剣だった。
可奈子は即座に言った。「情報収集班やる! 一人で動くの得意だから!」
勢いのある声に、陽斗が計画用紙を持ってきて呟く。
「なら俺は作戦立案。考えてから動くのは性に合ってる」
拓己は控えめに手を挙げた。「補給と物資管理、任せてくれ。小さな変化に気づくのは得意なんだ」
雄一は腕を組んだまま言った。「俺は交渉窓口でいい。王立学術院との連携が必要だろう」
最後に菜穂が一歩前に出る。「私は衛兵との連携役。前に出るのは得意だから」
フェリドは満足げに頷き、全員に調査隊徽章を渡した。
「この編成で挑め。地下遺跡第一層の調査が任務だ」
真聖は徽章を握りしめ、仲間たちを見回した。
「行こう、俺たちの帰り道を見つけるために」
こうして、異世界での第一歩となる調査隊が正式に動き出した。
準備は即日で進められた。
王宮の武具庫では、軽量の防具と魔導式照明具が支給された。
つむぎは肩当てを確かめながら、真聖に問いかけた。
「ねえ、あんた普段はデスクワークだよね? こういう装備、大丈夫?」
真聖は落ち着いた声で答える。
「慣れてはいないけど……まあ、なんとかなるさ」
俊介は支給された剣を腰に差し込み、苦笑した。
「重いな。オレ、長く持つかな」
可奈子は肩で笑う。「文句言う前に慣れなさいよ。あたしなんて一人で索敵だし!」
陽斗は地図を広げ、慎重に指でなぞった。
「第一層の構造はシンプルに見えるけど、崩落箇所が多い。進む順序を考えないと閉じ込められる」
拓己が横から覗き込み、「補給線は俺が管理する。少しでも変化があれば知らせる」と告げる。
雄一はフェリドから受け取った通行証を確認した。
「王立学術院との連携は俺がやる。家族より仕事優先なんて言われるけど……ここではそれが役に立つ」
菜穂は衛兵と談笑しつつ、前に出たがる性格を発揮して現場の士気を上げていた。
夕刻、全員が中庭に再集合した。
真聖は小さく息を吸い込み、仲間たちを見回す。
「よし、明日未明に出発だ。遺跡がどうなっているか確かめよう」
つむぎが拳を握る。「気合い入ってきたわね」
こうして、九人の調査隊は未知の遺跡へと歩み出す準備を整えた。