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第4話_調査隊編成

 翌朝、王宮中庭に九人が集められた。

  フェリドが杖を掲げて声を張り上げる。

  「地下遺跡調査隊の編成を発表する!」

  まず、隊長役として名指しされたのは真聖だった。

  「落ち着いて状況判断ができる。その資質を買われたのだろう」

  つむぎは微笑し、拳を軽く突き合わせた。

  「私が前線をやる。文句ないでしょ?」

  「頼む」

  次に俊介が挙手する。「俺、後詰めな。……長続きする保証はしないけど」

  その言葉に周囲が苦笑するも、彼の目だけは真剣だった。

  可奈子は即座に言った。「情報収集班やる! 一人で動くの得意だから!」

  勢いのある声に、陽斗が計画用紙を持ってきて呟く。

  「なら俺は作戦立案。考えてから動くのは性に合ってる」

  拓己は控えめに手を挙げた。「補給と物資管理、任せてくれ。小さな変化に気づくのは得意なんだ」

  雄一は腕を組んだまま言った。「俺は交渉窓口でいい。王立学術院との連携が必要だろう」

  最後に菜穂が一歩前に出る。「私は衛兵との連携役。前に出るのは得意だから」

  フェリドは満足げに頷き、全員に調査隊徽章を渡した。

  「この編成で挑め。地下遺跡第一層の調査が任務だ」

  真聖は徽章を握りしめ、仲間たちを見回した。

  「行こう、俺たちの帰り道を見つけるために」

  こうして、異世界での第一歩となる調査隊が正式に動き出した。



 準備は即日で進められた。

  王宮の武具庫では、軽量の防具と魔導式照明具が支給された。

  つむぎは肩当てを確かめながら、真聖に問いかけた。

  「ねえ、あんた普段はデスクワークだよね? こういう装備、大丈夫?」

  真聖は落ち着いた声で答える。

  「慣れてはいないけど……まあ、なんとかなるさ」

  俊介は支給された剣を腰に差し込み、苦笑した。

  「重いな。オレ、長く持つかな」

  可奈子は肩で笑う。「文句言う前に慣れなさいよ。あたしなんて一人で索敵だし!」

  陽斗は地図を広げ、慎重に指でなぞった。

  「第一層の構造はシンプルに見えるけど、崩落箇所が多い。進む順序を考えないと閉じ込められる」

  拓己が横から覗き込み、「補給線は俺が管理する。少しでも変化があれば知らせる」と告げる。

  雄一はフェリドから受け取った通行証を確認した。

  「王立学術院との連携は俺がやる。家族より仕事優先なんて言われるけど……ここではそれが役に立つ」

  菜穂は衛兵と談笑しつつ、前に出たがる性格を発揮して現場の士気を上げていた。

  夕刻、全員が中庭に再集合した。

  真聖は小さく息を吸い込み、仲間たちを見回す。

  「よし、明日未明に出発だ。遺跡がどうなっているか確かめよう」

  つむぎが拳を握る。「気合い入ってきたわね」

  こうして、九人の調査隊は未知の遺跡へと歩み出す準備を整えた。

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