分裂するあの子と変なコと
現実世界
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ラブコメ
コメディ不思議天然
『分裂するあの子と変なコと』寄道ゆらり /著
講評
不思議ちゃんキャラ、長年愛される「ゆるい」王道ヒロインのひとりですが周囲が受け入れているせいで「俺がおかしいのか⁉」となっている塁にクスッとできるシーンが多くていいですね!
「ダメダメ!」「無理無理!」の掛け合いやナナフシ様の「バーカ!」の勢いもテンポが良くて花丸です。完成度は非常に高いのですが、終わりがやや駆け足だったのが惜しいなと感じました。
「付き合って下さい!」 初対面の女の子に突然告白されて、全く意味がわからない!
現実世界
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ラブコメ
日常切ないほのぼの
『「付き合って下さい!」 初対面の女の子に突然告白されて、全く意味がわからない! 』加藤伊織 /著
講評
条件に合致=運命の人、という曖昧な定義から始まる関係と学園もの、非常に美味しい組み合わせです。スタートダッシュの爆発力に対して、後半はピュア恋全開でしたが、2万字を三等分してコメ:ラブ:ラブくらいの割合になっていて、可愛いところが詰まっていて読みごたえがありました。
中学時代の話やライバル登場なんかを追加すると長編にもできそうなので、ぜひ今後もラブコメに挑戦してみてください。
気になるあの娘はエイリアン
現実世界
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ラブコメ
コメディ日常ほのぼの
『気になるあの娘はエイリアン』裃左右 /著
講評
人間に擬態するヒロイン、コメディのテッパンですね。主人公だけが秘密を知っている、というのもドキドキ感が増す非常に良い書き方です! トンチキお嬢様と巻き込まれ系主人公を取り巻くお友達の構図も昨今の「1対1ラブコメ」らしさが生きています。
「可愛い女の子に振り回される」という楽しい設定ですが、胸キュンからは少し離れている印象です。もうすこしあからさまに好きかも⁉ というシーンがあるといいですね。
僕の王子様。
現実世界
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ラブコメ
プチコン03・学園ラブコメ
『僕の王子様。』豆ははこ /著
講評
ソースの匂いから始まる青春模様、激アツです! 存在しない記憶まで呼び起こされそうでした。かっこよさ&女の子らしさが残っているあさひの二面性が非常に魅力的でよく書けています。
コメディ要素がやや大人しいのでぜひ「想定外の出来事で混乱しまくる山島くん」や「積極的過ぎてから回るあさひ」なんかも追加できるとより緩急がついてテンポが良くなるはずです。
ギザ歯黒髪ロング長身女子悪魔ですケド何か?
現実世界
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ラブコメ
コメディざまぁもう遅い
『ギザ歯黒髪ロング長身女子悪魔ですケド何か?』だぶんぐる /著
講評
悪友テンションから始まる関係と、ざまあが目的→二人がコンビに、と行動の一貫性が担保されているので主軸の見通しが立てやすく読者のことをよく考えている印象です。デートシーンの晶がきちんと可愛いのが「胸キュン」の加点ポイントになりました。
文字数が少ないのでサクサク読める一方、話数が増えて冗長に感じる面もあるため、会話のテンポと情景描写で補完して1話の情報量を増やせるとすっきりした印象にできそうです。
全体講評
第3回テーマ短編プチコンテストにご参加いただきありがとうございました。
見慣れたはずの「学園ラブコメ」ですが、その時々の学生らしさというのは移り変わりが激しいものなので、いざ書いてみようと思うとなかなか難しいジャンルだったのではないかと思います。
今回のテーマでは「コメディ度・胸キュン度」を軸に5作品を選定させていただきました。
ラブコメは読んで字のごとく「ラブ」と「コメディ」をミックスさせたものなのですが、実はこの割合をうまく引き出すのがなかなか難しい部分があります。また今回は「様々な属性の女の子」に対する参加者の皆さんのウェブ小説・ライトノベルを読みなれているが故の定番の型を踏襲した作品が多かった印象で、もっと自由な発想を見てみたいと感じました。
①女の子たちの属性が「基礎」しか描かれていない
幼馴染、ツンデレ、電波、おっとりなどヒロインの「属性」がラブコメの要と言っても過言ではありません。なので属性をつけること自体は問題ないのですが、全体的に「基礎」からはみ出したヒロインはやや少なめだったように思います。例えばツンデレキャラといえば? と聞かれたときにパッと思いつくキャラがいると思いますが、あくまでもツンデレは要素であって個性のパーツが結構違います。下記は「ツンデレキャラランキング」の常連である、とある作品のヒロインたちの要素を分類したものです。
A:貴族のプライドと劣等感からくる強がり、主従関係を軸にした上から目線
B:愛されなかったことによる低い自己肯定感と自立心のバランスから素直な言葉を口にできない
C:圧倒的超能力による自信、素の自分を見せることへの抵抗、好きバレを隠すための正反対の言動
書き出してみると結構違いますよね。書き分けも大切なのですが、その前段階として「なぜこの子はこの属性なのか」「魅力のパーツはなにか」を分けて考えてみるのがおすすめです。
②ラブコメ≠ハーレム
女の子が多い=ハーレム、のイメージで書いてくださった方が多かったですが別にラブコメはハーレム前提のものではないので圧倒的メインヒロインを置きつつ、他のキャラが彩りを添えるような構成も一つの魅力です。特に近年の商業作品は「1対1」のラブコメが売れ筋の傾向があるため、キャラクターごとに恋愛パートとコメディパートの切り分けが起きていてもさほど問題ではありません。
ハーレム作品に挑戦したい! という場合は『千歳くんはラムネ瓶のなか』(裕夢、小学館)などが参考になるのですが、この作品は各ヒロインパート=1冊くらいの分量になるので短編では要素の取捨選択がより重要になってきます。個性が渋滞すると男主人公が飲まれてしまうことも珍しくないので「様々な属性の女の子を“ハーレムじゃない方法”でどう生かすか」もぜひ考えてみてほしいと思います。
③「男女のラブコメ」と「百合ラブコメ」の使い分けが曖昧
「女同士でしか起きないハプニング」や「女同士でそれはナシでしょ!」から起きるイベントなど百合にフォーカスしたラブコメも増えています。今回も「女にモテる女キャラ」の登場する作品がいくつかありましたが、多様性の一言で片付いてしまって勿体ないと感じる場面がありました。「同性が好きでもいいよね!」という勢いは「そういう人もいるよね」の一言で勢いが弱まってしまう印象もあります。
また「男性キャラの代打として男っぽく」していたり、キャラクターの性別が無性別でも問題ない描写でやや曖昧になっていた印象の作品も見られました。「ラブコメ」という以上「ラブ」が必要不可欠なので「男女だからこそ」「同性だからこそ」起きうるイベントに着目することで、より魅力的なラブコメに仕上がる場合もあります。それぞれの意図や狙いがより明確になると、ラブコメとしての魅力がさらに伝わりやすくなるかもしれません。
プチコンでは今後も個性的なテーマでみなさんの創作支援を行ってまいります。みなさんで流行ジャンル以外の作品も盛り上げていきましょう!
ネオページ編集部
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