組み伏した湊へ、強引なキスをして黙らせた煉。抵抗する湊へ馬乗りになり、唇を離すと冷ややかに言い放つ。
「お前の1番は何でも俺じゃねぇと嫌なんだよ。鈴であろうがお前の家族であろうが譲る気ねぇから」
煉は、相変わらずの我儘な暴君ぶりを見せる。
「煉のバカ。我儘も大概にしてよね。できる事とできない事があるでしょ」
素っ気ない湊に、煉の苛立ちは加速する。舌打ちをする煉に、湊は続けた。
「僕たち、まだ子供なんだよ。煉はたまたまお金持ちの家に生まれて、お兄さんのおかげで自由にできてただけでしょ」
「お前そればっか言ってっけど、お前に
「それだって、好き放題にお兄さんのカード使えてたからでしょ? 僕とのご飯だって、いつもそのカードで払ってたみたいだし」
ぐうの音も出ない煉は、苦虫を噛み潰したような顔で湊を睨みつける。
「嫌な言い方ばっかりしたけど、煉の気持ちは凄く嬉しいんだよ。でも、この先一緒に居るためにも、煉はもっとお金の使い方覚えてもらわなくちゃなんだから。それにね──」
湊は煉の頬に両手を伸ばし、挟むとゆっくり引き寄せた。そして、耳元に唇を運んで言う。
「僕の“1番好き”は煉なのに。それだけじゃダメなの?」
湊の甘えた声に、グッと息を呑む煉。すぐさま反応する下半身に従い、煉は湊のTシャツに手を忍ばせた。
「ひぁっ··、な、なに?」
「ダメじゃねぇから抱く」
どこでスイッチを入れてしまったのか分からない湊は、煉の雄々しさに圧されてしまう。そのまま、煉の雄々しさに流されて受け入れる湊。
煉は、腕の中で愛らしい声を零す湊を見て、湊に収まったままどこかへ電話を掛ける。
「やっ··、煉、何してるの?」
「しぃー··。声出すなよ」
スマホを持った手の、人差し指を口に当てて言う煉。
「あぁ、俺だけど。あの話まだ生きてんの? あそ、んじゃ受けるわ」
何の事やらと、必死に声を我慢する湊。そんな湊をイジメたくなった煉は、グンと腰を突き上げる。
「んっ──」
煉は、スマホを持つのと反対の手で湊の口を塞いだ。
「詳細送っといて。あ? 気分だよ」
機嫌良く笑みを浮かべて言うと電話を切り、スマホを投げ捨て湊の腿裏を持って広げる煉。涙目の湊を見て、ふっと笑うと余裕ぶってこう言った。
「妬いてんの? 悪かったって。相手マネな。後で話してやっから、今は俺でいっぱいになってろ」
煉は文句を言いたげな湊を黙らせようと、喋る余裕もないほど責める。湊は煉の思惑通り、煉でいっぱいいっぱいになって蕩けてしまう。
満足そうな煉は、湊のナカを自分で染めると、湊を抱き上げて膝に乗せた。
「俺さ、ドラマの仕事きてたんだよ」
「ふぇ? しゅ、
「お前と居るために稼ごうと思って受けたけど、最初は受ける気になれなくて保留にしてた」
「へ? なんれ?」
煉の肩に頭を預けていた湊が、力を振り絞って上体を起こす。
「お前と会う時間、もっと少なくなんだろ」
それは、お互いに仕方がないと分かっているけど、日に日に我慢が利かなくなっている所でもあった。けれど、湊は煉に挑戦してほしいと言う。加えて、仕事をナメるな、チャンスを棒に振るなと苦言を呈した。
「ンなコト言っていいんかよ。恋愛もんの主役だぞ」
「········えぇっ!? しゅ、主役!!?」
驚いた湊が声を張り上げる。煉は顔を顰めて『うるせぇ』と一言。
「あ、相手は?」
「相手····確か、今人気の女優で何とかっつぅ····あー··忘れたな」
「えぇ····」
相手に微塵の興味もなさそうな煉。それよりも、煉は湊の胸に夢中なのである。
「んっ··待っ、煉、話聞かせて」
煉は、湊の胸に吸い付きながら話を続けた。
連ドラの主役で、相手は今を時めく美人女優。幼馴染のヒロインが他の男と付き合ったのをきっかけに、好きだという気持ちを自覚し奪い取るというもの。
キスシーンが確定しているのだと、煉はマネージャーから送られてきた資料を読み上げた。
「キス····」
「フリでいいだろ。文化祭ン時みたいに」
「いや、そういうわけにはいかないでしょ」
煉の躍進が素直に嬉しい反面、確実に嫉妬する自分を思い描けてしまう湊は、とても複雑そうに眉間に皺を寄せる。
「こういう気持ち、恋人が役者さんの人ってどうやって乗り越えるんだろ」
2人はうーんと唸りながら悩む。考えるのに飽きた煉は、湊の腰を抱き締めて言う。
「やっぱやめよっか?」
「それはダメだよ! だって、いきなり主役だなんて凄い事なんだよ? 煉の
そう言いながら、湊はどんどん表情を暗くしていった。しょぼくれた顔の湊へ、煉はどこか不貞腐れた様な表情で言う。
「んじゃ、しゃーなしキスしてくっけど、毎回お前が消毒しろよ」
「え、消毒って····」
「誰と何しようが、俺ん中にはお前しか居ねぇんだからさ。お前は俺が帰ってくんの堂々と待ってろ」
煉の横暴さに、湊はクスっと笑って『しょうがないなぁ』と答えた。
「煉は僕のものだもんね」
湊は、自分に言い聞かせるように煉を抱き締めて言った。煉は『ったり前だろ』と強気に返す。
2人は、胸に渦巻く複雑な心境を、輝かしい未来で覆い隠して覚悟を決めたのだった。