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第13話

 アーサーラウンダーの謎。魔法の謎。リーダーの謎。そして紋章と黒白こくびゃく様という人物の謎。この世界には色々な謎がある。

 特に俺の前で立て続けに出てきた謎はどれも信じ難いものだった。まずはアーサーラウンダーの謎。ケイによれば初代リーダーは既に卒業しているらしい。

 それもそのはず。聞くところによれば、初代リーダーはケイの母親だからだ。そして、それに繋がるのは。魔法の謎。元々俺たちの世界には魔法は存在しなかったが、22年前ケイの両親と黒白様という人物によって、別世界から持ち込まれたそうだ。

 そこからさらに、現実世界での壮絶なバトルが繰り広げられたらしい。どうも、今は封印されているという魔女がいたそうで……。


 今から約24年前。2031年7月20日。この日とあるゲームがサービス開始をした。


「リアゼノン・オンライン」


 俺が生まれる前にサービス終了したが、内容はレベルアップするとステータスが減少するという、イレギュラーなものだった。

 ケイの両親もその大事件に巻き込まれたらしい。ログアウト不可のデスゲーム。ケイの母親は死者を増やさないために行動し。父親は異世界と呼ばれる別世界に引き摺り込まれ、一時行方不明。

 けれども、双方の愛ゆえか無事に合流し現実世界に帰還したとのこと。その時には2年過ぎていたらしい。


 現実世界は魔物の群れに襲われ、東京はロックダウンを余儀なくされ。物資などの流通も滞り。その中で立ち上がったのが、龍と契約した3人だった。

 片翼、冷酷、黒白。世間の人は皆そう呼んでいた。その人物の正体は今も解明されていない。そして、今この世界にいることが予想されているのが黒白のみ。

 彼も、この東京のどこかにある家で身を潜めているとのこと。だけど、彼――彼女――は本名すら明かさない。


 そして、その3人によって魔女は封印された。


「本当にそうなんだよな?」


 俺はケイに聞く。


「うん。合ってる。僕が生まれたのがその少し後なんだよね。魔女戦終戦後最初に生まれた子供らしいけど」

「そうなんだ……」

「ちなみに、黒白は男の人だよ。それ以上は言えないけどね」


 俺は次に黒白様という人物を考えることにした。

 黒白。それはその名の通り黒と白が映える容姿をした人物とのこと。ケイが男性と言っていたので、彼とする。

 ケイによると、彼の幼少期はかなり大変だったらしい。さらには彼は俺たちが住む地球とは別の発展をしたパラレルワールドから来たそうだ。

 黒白様の一族は代々龍と契約していた。その中で、彼は龍界で最上位に君臨する者と契約した。

 そこからだ。最初のうちはその龍を制御出来なかったようで、何度も何度も暴走したらしい。

 でも、ここで疑問がある。それはなぜ彼の世界以外の人が龍と契約できたのか? 文明なども違うはずだ。


「ごめん。それは言えないかも」

「わかった、この話はここまでにしよう」


 黒白様の話はここで切り上げるとして、次は紋章についてだ。ケイの手の甲に浮き出た紋章。あの後何度か見せて貰ったが、どうやらルーン文字のようだ。

 そして、ケイに埋め込まれた。正確には刻印されたルーン文字は、"全盲の紋章"と呼ばれるものらしい。

 効果は明らかで、紋章が強く光ってる間は、目も耳も機能が停止する。その状態ではケイは戦えないはず。

 なのに。彼はなにも感じていないかのように、ヤサイダーを倒した。しかも。宣言した通り、即死攻撃だった。

 それでも、彼はその力を制御したりすることができないようだ。紋章は黒白様の魔法で人為的に作られた特別なものらしい。

 それは人によって合う紋章が異なるとのこと。だけど、ケイの場合は少し違ったらしい。


「ケイ。その力いつ頃気づいたんだ?」

「うーん。4歳くらいかな? 最初は何が何だかわからなかったけどね」

「まあ。目も耳も使えなくなるもんな……。俺の場合、どんな能力いなるんだろ?」


 そうだ、俺も1ヶ月後に紋章を受け取るんだ……。なのに、ケイはニコニコしてる。何がおかしいんだ? 俺は不安で胸がいっぱいなのに……。


「なら、今のうちに修行しておかないとだね」

「修行?」

「うん。後で僕の家にきてよ。普段僕がやってること、ゲームにも役立つと思うから」

「例えば?」

「まずは、一日40キロメートルのランニングでしょ。次に、基礎トレ。フラッシュ暗算は難しいから無しとして……」

「もはやeスポーツ……」


 まあ、即座に判断するのは大事だけど、ここまでハードなのはちょっと難しいかも。でも、これぐらいしないといけないのか……。

 こうなったら、俺もとにかく特訓するしかない。特に部活には本腰を入れてない――有栖に陸上を勧められたから入ったけど、今は補欠扱い。

 走る機会はあったものの、いつもビリで選抜にも出たことがない。陸上は中学からやっていたが高校ではレベルが違いすぎた。

 でも、ゲームと陸上の相性がいいとなれば、本格的にやるしかない。


「りくじょう? わたしもやりたい!!」

「じゃあ、アリスも一緒にするか……」

「カケル。ゲーム内で陸上やっても無意味だよ」

「そ、そうなんだ……」

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