アーサーラウンダーの謎。魔法の謎。リーダーの謎。そして紋章と
特に俺の前で立て続けに出てきた謎はどれも信じ難いものだった。まずはアーサーラウンダーの謎。ケイによれば初代リーダーは既に卒業しているらしい。
それもそのはず。聞くところによれば、初代リーダーはケイの母親だからだ。そして、それに繋がるのは。魔法の謎。元々俺たちの世界には魔法は存在しなかったが、22年前ケイの両親と黒白様という人物によって、別世界から持ち込まれたそうだ。
そこからさらに、現実世界での壮絶なバトルが繰り広げられたらしい。どうも、今は封印されているという魔女がいたそうで……。
今から約24年前。2031年7月20日。この日とあるゲームがサービス開始をした。
「リアゼノン・オンライン」
俺が生まれる前にサービス終了したが、内容はレベルアップするとステータスが減少するという、イレギュラーなものだった。
ケイの両親もその大事件に巻き込まれたらしい。ログアウト不可のデスゲーム。ケイの母親は死者を増やさないために行動し。父親は異世界と呼ばれる別世界に引き摺り込まれ、一時行方不明。
けれども、双方の愛ゆえか無事に合流し現実世界に帰還したとのこと。その時には2年過ぎていたらしい。
現実世界は魔物の群れに襲われ、東京はロックダウンを余儀なくされ。物資などの流通も滞り。その中で立ち上がったのが、龍と契約した3人だった。
片翼、冷酷、黒白。世間の人は皆そう呼んでいた。その人物の正体は今も解明されていない。そして、今この世界にいることが予想されているのが黒白のみ。
彼も、この東京のどこかにある家で身を潜めているとのこと。だけど、彼――彼女――は本名すら明かさない。
そして、その3人によって魔女は封印された。
「本当にそうなんだよな?」
俺はケイに聞く。
「うん。合ってる。僕が生まれたのがその少し後なんだよね。魔女戦終戦後最初に生まれた子供らしいけど」
「そうなんだ……」
「ちなみに、黒白は男の人だよ。それ以上は言えないけどね」
俺は次に黒白様という人物を考えることにした。
黒白。それはその名の通り黒と白が映える容姿をした人物とのこと。ケイが男性と言っていたので、彼とする。
ケイによると、彼の幼少期はかなり大変だったらしい。さらには彼は俺たちが住む地球とは別の発展をしたパラレルワールドから来たそうだ。
黒白様の一族は代々龍と契約していた。その中で、彼は龍界で最上位に君臨する者と契約した。
そこからだ。最初のうちはその龍を制御出来なかったようで、何度も何度も暴走したらしい。
でも、ここで疑問がある。それはなぜ彼の世界以外の人が龍と契約できたのか? 文明なども違うはずだ。
「ごめん。それは言えないかも」
「わかった、この話はここまでにしよう」
黒白様の話はここで切り上げるとして、次は紋章についてだ。ケイの手の甲に浮き出た紋章。あの後何度か見せて貰ったが、どうやらルーン文字のようだ。
そして、ケイに埋め込まれた。正確には刻印されたルーン文字は、"全盲の紋章"と呼ばれるものらしい。
効果は明らかで、紋章が強く光ってる間は、目も耳も機能が停止する。その状態ではケイは戦えないはず。
なのに。彼はなにも感じていないかのように、ヤサイダーを倒した。しかも。宣言した通り、即死攻撃だった。
それでも、彼はその力を制御したりすることができないようだ。紋章は黒白様の魔法で人為的に作られた特別なものらしい。
それは人によって合う紋章が異なるとのこと。だけど、ケイの場合は少し違ったらしい。
「ケイ。その力いつ頃気づいたんだ?」
「うーん。4歳くらいかな? 最初は何が何だかわからなかったけどね」
「まあ。目も耳も使えなくなるもんな……。俺の場合、どんな能力いなるんだろ?」
そうだ、俺も1ヶ月後に紋章を受け取るんだ……。なのに、ケイはニコニコしてる。何がおかしいんだ? 俺は不安で胸がいっぱいなのに……。
「なら、今のうちに修行しておかないとだね」
「修行?」
「うん。後で僕の家にきてよ。普段僕がやってること、ゲームにも役立つと思うから」
「例えば?」
「まずは、一日40キロメートルのランニングでしょ。次に、基礎トレ。フラッシュ暗算は難しいから無しとして……」
「もはやeスポーツ……」
まあ、即座に判断するのは大事だけど、ここまでハードなのはちょっと難しいかも。でも、これぐらいしないといけないのか……。
こうなったら、俺もとにかく特訓するしかない。特に部活には本腰を入れてない――有栖に陸上を勧められたから入ったけど、今は補欠扱い。
走る機会はあったものの、いつもビリで選抜にも出たことがない。陸上は中学からやっていたが高校ではレベルが違いすぎた。
でも、ゲームと陸上の相性がいいとなれば、本格的にやるしかない。
「りくじょう? わたしもやりたい!!」
「じゃあ、アリスも一緒にするか……」
「カケル。ゲーム内で陸上やっても無意味だよ」
「そ、そうなんだ……」