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Cursed Bug Quest -深緋の人形劇-
Cursed Bug Quest -深緋の人形劇-
理乃碧王
ゲームゲーム世界
2024年07月27日
公開日
7.8万字
完結済
この世界は、誰かが作った《ゲーム》だった。 勇者として戦うはずだった俺《ガルア》は、仲間に存在を疎まれ道を踏み外す――。 俺の手に握られたのは《魂を喰らう魔剣アレイク》。 魔王を名乗る勇者イオ、役割を逸脱した魔族ラナン。 かつての勇者のセーブデータが焼き捨てられた世界で、俺達は「用意されなかったルート」を進みはじめる。 プレイヤーも運営も知らない《裏技》の物語。 本来《選ばれなかったキャラ達》が《壊された物語》を上書きしていく。 この物語は、終わりを迎えない。 終わらせる者すらいない《ゲーム》の果て――。 俺達はただ自分の意志で進み続けるしかない。 ――これは「自由意志の戦い」。 物語の果てを知るために、物語を壊す旅が今はじまる。 隠しルート『Cursed Bug Quest』――Game Start。 イラスト:DELL-E3

チュートリアル

 さあ、これから楽しいゲームを始めよう。

 君がプレイするゲームは『Ground Brave Quest』と呼ばれるもの。

 剣と魔法のファンタジーRPGだ。

 では、冒険プレイする前に物語の概要を紹介しよう。


          ***


≪Ground Brave Quest≫


 異世界ブライトス。

 この世界は争いごとが繰り返された。

 人と人、種族と種族、国と国……。

 闘争という悲しみの歴史の糸を紡いでいった。


 多くの血と涙が流され中、人々は争いを繰り返してならぬと気付いた。

 そこで国同士あるいは部族、種族間で法と秩序を定めていった。

 時間はかかったが、相互理解と妥協により、争いごとは少しづつなくなっていく。

 そう、悠久の時と努力を続け、世界は平和を作り出していったのだ。


 しかし、平和な時代は長く続かない。

 突如として、絶大なる魔力を持つ魔族の男が登場したのだ。


 名はドラゼウフ。

 自らを魔王と名乗り、その力とカリスマ性で魔物達を束ね、世界征服を宣言。

 各国へ侵攻を開始し、魔軍の領土を拡げていった。


 そこで各国は同盟を結び、魔王ドラゼウフの討伐に乗り出した。

 勇気ある冒険者に〝勇者〟の称号を与え、討伐の旅へと向かわせたのだ。

 そして、今日も勇者が誕生する――。


 ▶ New Game


          ***


 イリアサン王国。

 美しい大自然と豊かな文化が融合する大国、物語の中心地だ。

 唯一、イリアサンだけは魔王軍の侵攻を免れていた。

 それは『ルビナスの霊泉』と呼ばれる水脈が流れていたからだ。

 この霊泉は女神ルビナスの祝福を受け、大地から聖なる力を放出させていた。

 流石の魔王軍でも、この国だけは攻略しにくい土地であったのだ。


「来たか! 勇者よ!」


 イリアサン王国領内。

 そこにステンドグラスに囲われた美しい館があった。

 館の名はシテン寺院。

 イリアサンを守護する女神ルビナスを祀る大寺院である。

 君はこの大寺院から〝勇者〟の称号を与えられるのだ。


「魔王ドラゼウフを討伐するのだ」


 女神像の前に男が立っている。

 サイネリア色の頭巾を被り、白いマントで体を包む小柄な男だ。

 名は大聖師、このシテン寺院の最高責任者。

 本名はわからないが、君の冒険をサポートする心強い味方である。


「勇者試験を突破した君なら、必ず世界に平和を取り戻させてくれると信じている」


 勇者試験。

 イリアサン王国の優秀な若者を集め、勇者を一人選出する試験だ。

 過酷な訓練、試験、課題をクリアしたものでなければ勇者を名乗れない。

 これはイリアサン王国独自の選定法で、世界で一番厳しいと言われている。

 君は見事、この難しい試練を乗り越え、勇者の称号を与えられたというわけだ。


「さて、冒険の出発前だけど聞きたいことはあるかい?」


 大聖師は笑顔で話しかける。

 君は冒険に出るにはまだ不安がいっぱいだろう。

 わからないことがあれば聞いてみるといい。


「一人だけでは心細い? ふーむ……」


 これから過酷な冒険が始まる。

 一人だけではやはり厳しいものだ。

 仲間が必要になる。


「仲間にするなら戦士、魔法使い、僧侶がいいだろう」


 前衛の戦士、後衛の魔法使い、僧侶。

 大聖師はRPGにおける王道的なパーティ構成を強く奨める。

 やはりバランスが一番大事だ。

 ソロプレイや、縛りプレイもいいが、基本に忠実な方がクリアはしやすい。


「仲間が欲しいなら、街の酒場に行くといい。そこにジルという魔法使いがいるだろうから、話しかけてみるといいよ」


 大聖師は丁寧にも、仲間の一人であろう名前を口にした。

 どうやら、街の酒場にジルという魔法使いがいるようだ。

 おそらく勇者の仲間となる男であろう。


「勇者イグナス、期待しているよ」


 勇者イグナス・ルオライト。

 この物語の主人公、君の分身となるキャラクターだ。


「はい、世界に必ずや平和を取り戻させます」


 これより、偉大なる冒険が始まろうとしていた。


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