「じゃあ、あずさ四人を帰してやってくれ」
「えっ!?」
四人が驚いている。
「えっ!?」
その驚きに、今度は俺が驚いた。
いやな予感しかしねーー。
「あの、私はとうさんの娘ですよ。帰る場所はここです」
「ふ、ふむ」
言われて見れば、ヒマリの言う事は確かに筋が通っている。
「私は、そのヒマリ様の護衛兼お世話係です」
「う、うむ」
言われて見れば、古賀さんの言う事は確かに筋が通っている。
「うふふ、私は、大田大の家内です。お忘れですか」
「そ、それは……」
まあ、演技とは言え、坂本さんほどの美人が嫁を演じてくれるのは悪くない。
「私は、その坂本さんの、お世話され係です」
「なっ」
愛美ちゃん。お、お世話され係って何だよ!
「あのー……」
階段からニョッキリ榎本の首が出て来た。
「そろそろ、食事の用意が出来ました」
続いて加藤が中をのぞいてきた。
「ばっ、ばっきゃーろー!! ノックをしろと言っているだろー! 何回言ったらわかるんだー!!」
「うわああーーー!! と、殿が女を連れ込んでいる」
榎本と加藤が大声を出した。
「なっ、なんだってーー! お前さんもう浮気かい!!」
だーめんどーくせーー!!
凛が下にいるようだ。
「えーーっ!! お前さんですって!!! あなた! もう浮気ですかーー!!」
坂本さんまで。
「あわわわわ、違うんだーー」
くっ、何故か俺は慌ててしまった。
「な、何を慌てているんですか、冗談ですよ」
坂本さんと凛の声がそろった。
くそーーなんてこったーー。
浮気って言われると、男は本能的に慌てるようだ。
「か、からかうんじゃねえよー」
「人数が増えたから、食事の用意を増やさないとねえ」
「それには及びません。私が用意します。愛美ちゃん。うな重で良いかしら?」
「は、はい! 来て良かったーー!!」
どうやら、あずさがうな重を用意するようだ。
「なあ、あずさ、ホイホイうな重を出しているけど、補充はされないのだろ?」
「もう、とうさん忙しいのだから……」
あずさは、食事の準備が忙しいようだ。
叱られてしまった。
「すっ、すまん」
「うふふ。補充されないので減るだけです。最後には無くなります」
「そうか、じゃあ、大事にしないとな」
「はい。でも、前世の魔王国の動員兵の数が三十万人、その数回分を用意してありますので、まだ余裕はあります」
はああーーーっ!!
あずさの奴、何十万食も持っていたのかよーー。
「他の食事もなのか?」
「はい」
こうして、四人が名古屋城の住人となった。
食後に、俺は榎本、加藤、東を交え、柳川と今後について深夜まで話し合った。
深夜の名古屋城の屋根の上に、四つの影が集まっています。
「うふふ、これなら、金のシャチ鉾も簡単に盗めますね」
ヒマリちゃんが金のシャチ鉾をペチペチ叩いています。
「せっかく、忍者になったのですから、殿の役に立たなくてはいけません」
愛美ちゃんまでノリノリです。
どうやら首謀者はこの二人の様です。
二人がやると言えば、坂本さんと古賀さんは従うしかありません。
「すごい景色です」
ヒマリちゃんが金シャチの上に乗り、右の手の平を額に当てて遠くを見ています。
夜だから、暗くて何も見えませんよ。
「そうですね。それにしてもこのコスチュームは、すごいですね。夜なのによく見えます」
古賀さんが感心しています。
どうやら、コスチュームの性能で夜でも目が見えるようです。
「では、尾張忍軍は、殿の為、攻略対象美濃の調査を開始します」
あーあ、とうさんに、釘を刺されていたのに、どうやらこの四人は、美濃へ忍者ごっこに出かけてしまうようです。
まあ、コスチュームの性能確認の為と思えば丁度良いのかもしれません。
とうさんの話では、岐阜城は今、誰も住んでいないので安全なはずです。
「クザン、私達は見つからないように四人を追いかけますよ」
クザンは話せないので、声を出さずにうなずいた。
私も、金のシャチの上に乗って遠くを見た。
天守閣の窓からの景色とは、位置が少し高くなっただけなのですが、全然違う景色に感じます。
昼間見た景色はとても美しく感動的でしたが、深夜のどこにも人工の光が無い景色は、とても気味が悪く感じます。
びゅうううーーーーー
いやな風が下から私の体を押し上げます。
春から着る予定のセーラー服のスカートがまくり上げられ、お尻が丸出しになりました。
うふふ、大丈夫です。安心して下さい、水着を着ています。
そんなことより、髪の毛が巻き上げられ後頭部が丸出しになりました。
こっちは大丈夫ではありません。
唇型の大きなハゲがあります。
大好きなとうさんの唇の形のハゲです
せっかく丸出しなのに、見せびらかすことが出来ませんでした。
ガッカリです。
「あまりのんびりしていると、見失ってしまいます。そろそろ追いかけましょうか」
私は、四人の後を追いかけた。
四人が思ったよりも速いので、私は途中で変身して、アンナメーダーマンになりました。
三十分程で、金華山に着きました。
四人は、警戒もせずに山を登って行きます。
まあ、心配は必要ないと思いますが。
「な、何者だーーー!!」
「気を付けろーー!! 侵入者だーーー!!!」
おかしい、誰もいないはずなのに……。
見つかったのは、私じゃ無い。
四人は大丈夫なのでしょうか。