前回使ったホテルの部屋は、窓が壊れていないのでそれほど汚れている感じは無かった。
部屋が広いので、別の部屋からベッドを持ち込んで全員眠れるように準備する。
準備が終れば、蜂蜜さんに頼んで念入りに掃除をした。
「まあ、こんな所か。あっそうか。忘れていた」
掃除が終ると、俺は太平洋の真ん中に来たことを心底良かったと思った。
来なければ後悔するところだった。
そう、マグロを捕らなくては、そしてイワシもゲットしよう。
小魚から作る魚粉は、トウモロコシと共に鶏の餌になるし、肥料にもなる。
「クザン、シュラ、ホテルのゾンビ退治を頼む。俺は少し漁に出かける。あずさ達が来たら伝えてくれ」
「ハイ、ワカリマシタ」
一緒に来ている、クザンとシュラをホテルに残して、漁船を作る為パールハーバーへ向った。
特に戦闘するわけでは無いので、大型のミスリル製の潜水艇を作る。
クジラのように前面から群れを口に入れ、水だけ外に排出しようと思う。
その後は、急速冷凍して生きたまま冷凍し収納だ。
そうすれば、解凍すれば生き返る。
そこで血抜きと、内臓の処理をすればいい。
出来た大量の生ゴミは、俺が処理するので何も問題が無い。
今回は、前回より大量に捕りたい、何しろ人口が増えている。
出来たてほやほやの,青クジラの背に乗ってサーフィン気分で入り江を出る。
このまま南に進めば赤道だ。
マグロを追いかけられるように、スピード重視にしたため、あっという間に陸地が見えなくなった。
すぐに小魚の群れが見つかった。
水面が泡立って、鳥が飛んでいる。
全部取り尽くさないように、慎重に小魚の群れを収穫する。
海で漁をする人間がいないせいか、魚が多い気がする。
小魚を、捕まえていると、捕食者がやって来た。
本命のマグロだ。
こっちも根こそぎ捕まえないように慎重に捕まえて収納した。
夢中で漁をしていると、何故か大声で演歌を歌っていた。
そして、あたりが真っ赤になる。
このままでは真っ暗になってしまう。
慌てて帰路についた。
だが、こんな日に限って空が見る見る曇ってきて、雨が降り出した。
そして、日が沈むのが早い。
真っ暗だ。
「や、やべーーー!!!」
もともと、島にも光が無い。
「ふっ、ふっ、ふっ、こんな歳になって迷子になってしまった」
漁に夢中で、どのあたりまで進んだかもわからない。
適当に動き回ったら余計にわからなくなった。
「すげーーーっ!! 真っ暗で何も見えない」
初めての経験だ。目を開いているのに閉じている時と代わらない。
ザーーと雨が水面を叩いているのだが、水面が見えない。
「まあ、朝になったら何とかなるさ」
山で、霧などで遭難した時も、むやみに動かない方がいいと聞いた事がある。
翌朝は、太陽が昇り雨も上がった。
水面が広く泡立っている。
「むむ、すぐ横に大量の小魚の群れだ」
これはチャンスである。
漁師の血が騒いだ。漁師では無いけど。
もう演歌も歌うしか無い。
そして、大漁だ。
ついでにマグロまで大漁ゲットだぜ。
「あっ! やっちまった。これは帰れないパターーンだ。恐らく迷子では無くこういう場合は遭難というのだろう」
言うてる場合かーー!!
こうして、俺はしばらく漁を繰り返しながら漂流した。
「いましたーーー!!」
四日後に、空飛ぶ忍者に無事発見された。
紫影、シエイとでも呼ぼうかな、パンツも薄紫だ。古賀さんか、美しいな。
「おーーい!!」
俺は事もあろうにパンツに手を振っていた。
「よかった!!」
シエイが飛びついてきた。
ザブン!!
おーーい、そんな勢いで抱きついたら海に落っこちるじゃ無いかー。
と、思った時には海に沈んでいた。
「俺は密蜜の実を食ったから泳げないんだーー」
と言っているそばから、水面に浮かんだ。
そう、デブは脂肪で水に浮きやすいのだ。
「心配したのですよ」
「す、すみません!!」
その後、青クジラを収納して、古賀さんに抱っこされて、無事ハワイに着いた。
ハワイの浜辺に、子供達がいて、俺を見つけると駆け寄ってきた。
全員、泣いている。とくに、あずさの取り乱し方が激しかった。
恥ずかしくて、茶化したいけどさすがにそんな雰囲気ではない。やめておいた。
その後、捜索から帰って来たミサと坂本さんに、散々怒られた。
「で、沢山取れたのですか?」
古賀さんが、優しく聞いてくれた。
「もちろん!! 前回の二十倍は取れています。帰ったらマグロ祭りをしましょう」
機嫌の悪かった女性陣の顔が少しだけほころんだ。
しかし、今回は大自然の恐ろしさを思い知った。
大海原に手ぶらで出かけてはいけない。
富士登山にサンダルとTシャツで出かけるようなものだ。
調子に乗りすぎた。反省、反省。
こうして、坂本さんの休暇は、俺の捜索で終ってしまったようだ。
本当に申し訳ない。
でも、帰りのUFOでは、全員、俺が見つかってほっとしたのか楽しそうだ
「まあ、これは、これで楽しかったなー」
「はあーっ!!!!!」
折角消えかけていた炎に、ガソリンを注いでしまったようだ。
ふたたび大激怒された。
ただ、古賀さんだけはニコニコしている。
「はーーっ、やれやれだぜ」
「それは、こっちのセリフですーー!!!」
さらに怒られた。