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0124 列車の旅

私はとうさんが必死で計画して作った。鉄道で移動することにしました。

とうさんと一緒だと、私の移動魔法で移動してしまうので、まだ一度も利用したことが無いのです。

とうさんは、折角作った列車もきっと試乗しただけで、ちゃんと利用したことがないと思います。

それより速くて便利な移動方法があれば、そちらを選択する人だからです。


ピッチピチのコスチュームに、短いひらひらのスカートを付けて、エッチなパンツをはかせる何てことは、すぐに考えつくのに、鉄道で移動を楽しむ何てことは、全く考えつかない人です。

言うと「移動に時間をかけるなんて無駄だろう」って、きっと言うと思います。


「じゃあね。ヒマリちゃん」


静岡駅のホームまで見送りに来てくれたヒマリちゃんと、古賀さんと、はるさんに見送られて、列車に乗りました。

お土産に静岡のお茶をもらいました。

ヒマリちゃんも来たそうでしたが、片付けがあるので、ここでお別れです。

列車では、他のお客さんもいるので人間のフリをしてもらう為に、お供のクザンには、執事のタキシードを着てもらい、黒いサングラスを付けてもらいました。目立たないつもりが、余計悪目立ちしています。


「さよーーならーー!!」


手を振るヒマリちゃんは、とても悲しそうです。

待ってください。

一生の別れではありませんよ。

すぐに、名古屋で会うと思いますよ。


でも、なんだか、私まで切なくなってきました。

楽しかった、アイドル活動が走馬灯のようによみがえります。

いけません、変なフラグが立ってしまいます。


空いている席を見つけて座りました。

ステンレス製の椅子に木がボルト締めされています。

昔の汽車の座席みたいです。


列車は、先頭と最後尾がミスリル製で、間の列車はステンレス製です。

木田駅から東京駅、東京駅から名古屋までつながっています。

途中、小田原と静岡、浜松、豊橋、名古屋の順に止まります。

私は、浜松で降りようと思います。

ちなみに、利用料金は無料です。

こんなご時世に、お金は取れないと、とうさんの方針でそうなっています。


「なあ、昨日見たか、あのステージ」


「見た、見た。やべーぜあれわ!!」


「駿河公認アイドル、ピーツイン。滅茶苦茶だなー」


「ああ」


なんだか、ピ-ツインの話をしています。

私の斜め前に座っている席の人です。

男性四人です。座席を向い合せにして楽しそうに話しながら、お弁当を食べて、旅を楽しんでいるようです。


いったい何の話しでしょうか。

気になります。

今の私は、大田あずきです。セーラー服を着て髪で顔を隠しています。

ピーツインの片割れとはわからないはずです。

私達の何が滅茶苦茶なのでしょうか。


「あんなよーー」


「だよなーー」


「あんなすげーーのはよー、今まで見た事が無いよなー」


な、何の事ですかーー!!

ちゃんと言ってくださーい!!


「滅茶苦茶かわいかったよなーー」


そ、そういうことですか。

歌が下手とか、おどりが下手とか言われるかと思いましたー。


「おれは、ヒマリちゃんがいいなーー」


ですよねーー。

メチャメチャ可愛かったですもの。


「はーーっ、てめーは馬鹿なのかー。どう見たってアスラちゃんだろーー。ありゃあ天使か妖精だぜ」


「ふふふ、わかってねーなー。アスラちゃんは顔の作りは良いのだが、それがゆえに、性格が悪いはずだ。ヒマリちゃんは優しそうで、安らぎがある」


なっなんですってー!

私は絶対性格は悪くありませーん。決めつけないでください。


「確かになー。美少女過ぎるからなー。恐らく性格は悪いわなー」


私って、そんなに美少女なのかしら。

私は鏡を出してこっそり髪を上げて、顔を見て見ました。

いつも通り、普通の顔でした。

この顔って、性格悪そうなのかしら。


「それより、聞いたか?」


「はあーっ、それよりって、ピーツインより大事な話があるか」


「いやいや、そのピーツインが賊に襲われた話しだよ」


「なんだって、襲われただとー」


「ああ、その賊は捕まったのだが、そいつら密偵だったらしいぜ」


「ぎゃーあーはっはっはっ! あまりにも可愛すぎて潜んでいられなかったのかー!」


「そうじゃねえ。東北の奴だったらしいのだが、そいつら食うや食わずの毎日で、いつも腹を空かせていたらしい。それがどうだい、小田原や駿府では、無料で大トロの寿司が食い放題、マグロ丼まで食い放題だ。その上、アイドルのステージと来たもんだ。自分たちの村の事を思い出して、怒りに我を忘れたらしい」


「なるほどな-、わかる気がするぜ。俺達も少し前までは同じだったからなー。可愛すぎるから余計腹が立ったのかもしれねえな」


かもしれねーなー。じゃ、ありませんよーー。

八つ当たりじゃないですかー。


「で、賊はどうなったんだ」


ですよねーー、気になります。


「逃がされたらしい。木田家の状況を報告させるのだろうな」


「なるほど、そんな報告を聞かされれば、敵対する気にはならないだろうな」


「そういえばよー。賊は、どうして捕まったんだ」


「あー、アイドル達に捕まえられたらしいぜ」


「へーーー」


「あーその時、ピーツインのアスラちゃんが一番賊を酷い目に遭わせていたらしい」


「やっぱりな」


ちょっと待ってください。

やっぱりなって、なんですかー。

はぁ、ガッカリです。

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