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0132 美術館でちょぴり趣味の時間

祭りは十日後の土日と決り、今川家が指揮をとり祭りの準備が進んだ。

陸奥に残された人々は、思いのほか多い。

仙台は活気を取り戻しているようだ。

俺は、米の収穫と、鉄道の整備で忙しかった。


仙台の事など何も知らない俺は、駅前でやればいいやと思っていたが、駅から城までが遠い遠い、歩きでは無理だ。

地下鉄まで動かすことになった。

列車は、東京から名古屋まで動かしているのでノウハウがある。

とりあえず福島から青森までをつないだ。


仙台駅からは国際センターまでの地下鉄だが、地下鉄は初めてだ、ある程度明かりがいる。真っ暗では本当に何も見えない。

城趾公園付近が祭りの会場になる予定だ。

公園の近くにコンサートホールが有り、ここで駿河公認アイドルのコンサートがあると宣伝されている。


「私まで歌を歌うことになったわ」


ミサが俺の所に来て上機嫌だ。


「ミサが歌うのか、これで歌がうまかったら俺は神を恨むぜ」


俺は不細工な上に音痴だ、俺が歌を歌うと爆笑になる。

必死で歌えば歌うほど、全員が笑い出し、仕舞いには呼吸困難になってヒーヒー言い出し、死にそうになる。

ここまで酷い音痴は、聞いた事が無いそうだ。


「あら、私は結構うまいって褒められるわ」


やれやれだぜ。美人で、プロポーションが良くて歌までうまい。

俺は顔が悪くて、デブで、音痴だ。

どれか一つ位、交換してほしいもんだ。

そうすりゃあ、もう少しまっとうな人生を、歩けていたかもしれない。


「いいなあーミサは、俺にないものを全部持っている。うらやましいぜ。よし、これで地下鉄も完成だ。ミサも付き合うだろ」


「もちろんよ」


ミスリル製の機関車に、ステンレスの客車、一応貨物車も連結した。

試運転は順調だ。

ミスリルのランプも丁度いい。


「よし、これなら完成で良いだろう」


「すごいわ。本当にすごい」


ミサが、頬を赤くしてウルウルした目で見つめて来る。

まるで、不細工でデブで音痴でも、こういうオタクな技術があるじゃないと言っているようだ。

褒められている気がしねーー。


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!! すげーー!!」


独眼竜の殿様が国際センター駅のホームで大声を出している。

結構な見物人がいる。


「お殿様、この度は大田大商店の列車を導入していただきまして、ありがとうございます」


大殿とか言い出さないように釘をさしておいた。


「き、きだ、じゃねえ。お、大田殿、すばらしい。電気もねえのに何で動くのかわからねえが、すげえ」


釘をしっかり刺したのに間違えそうになりゃあがった。


「ほっほっほっ、お褒めにあずかり光栄です。よろしければ御試乗されますか?」


「するする……大殿、これはあれですか、暴れん坊な、あれとか水戸な、あれとかと同じようなあれですか?」


「ちがうわーー、バレると命を狙われたりとか、いろいろめんどーくせーからだよ!! ではなく面倒だからです」


独眼竜がすれ違いざまに小声で、アホなことを聞いて来たので、思わず大声が出てしまった。


俺はミサとシュラと、そのまま国際センターの駅を出て、県の美術館に寄った。

あまり時間は無いが、俺自慢の美術品を寄贈する為だ。

さすがに美術館だけの事はある。

玄関に行き着くまでが、こった作りで、キョロキョロしてしまった。


そして、玄関を入り、高い天井になっているところで、赤く美しい機動戦闘陸鎧天夕改を作り置いた。

これにはゴーレムの魔法は入れずただの展示物にした。

だが、原寸大で今にも動きそうな状態にした。


その隣に、シュラを作った。

こちらも、魔法は施さず、ただの実物大のフィギュアにした。

そして、パンツを出した。純白のぱんちいだ。

もう、ニヤニヤが止まらない。


「あんたねえ、その顔はだめだわ」


「ぎゃーーーっ!!」


しまったー。ミサがいるのを忘れていた。

つい、自分の世界に入ってしまったー。

でも、この位の御褒美はあってもいいよねえ。


「ふん、これでよろこばねえ豚は、ただの豚だぜ!!」


「あっそ、シュラちゃん! 私達今日は、仙台観光をした方がいいみたい。行きましょ。どうぞお好きにやって下さい」


「そっ、そっかー。わりーな」


「ばっかじゃ無いの、こんな美人二人をほっぽり出して趣味の方が楽しいなんて、呆れてものが言えないわ」


シュラは何度も振り返ったが、ミサはプリプリ怒っていってしまった。

まあ、そう言いながらミサはきっと気を使ってくれたはずだ。

だってよー、ほんとずっと働いていたからよー。


この後、尾張黒鋼深山胴丸具足と真田の赤備えを作った。

甲冑の後は、オリハルコンと、アダマンタイトのブレードを作り飾った。

すべて魔法は何も加えていない。ただの美術品だ。


そして、ミニチュアの鉄道模型だ。

大きなテーブルも置いて、これには魔法を加えて動くようにした。

今まさに、地下を走っている地下鉄の模型だ。


これだけでもずいぶん場所を取ってしまった。

名匠大田大作の美術品の数々だ。

折角作ったんだ誰か見てくれねーかなー。


折角作っても誰にも見てもらえねーと、さみしいもんなー。

折角何十万字も文章を書いても、誰にも読んでもらえねー作家の気持ちになっちまう。


「兄弟、探したぜ! ちょっといいか?」


ゲンが来た。なんの用だろう?

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