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0324 街の様子

「くそーーっ! いったいどうなっているんだ! なんなんだこれは!!」


カクさんがとうとう最後の一人を打ち倒す様子を見て、番兵の頭が大声で叫んでいる。


「おりゃあ!!」


スケさんが腕を押さえる、番兵の頭を倒れる配下の兵のところへ投げ飛ばした。

倒れた配下の中で頭がヨロヨロと立ち上がると、その回りに立ち上がる者があらわれた。

久美子さん達は手加減をしていたのだろう、番兵達はたいしたケガをしていない。


「ふふふ、やってくれたな。わかったぞー! 貴様らの作戦がー! 汚い真似をしくさりゃあがって! パンツとおっぱいで隙を造り俺達を攻撃したな! それで勝って満足かーー!! 恥を知れーー!!」


それだけじゃ無いと思うけど、中々良いところをついているなあ。


「わかりました。ならば男だけで戦いましょう。謙之信さん、スケさん、カクさん、お願いします」


久美子さんが頭の誘いに乗った。

久遠さんが心配そうな顔をして、俺を見つめてきた。


「わわわ、わかりました!!」


三人が声と共に前に出る。

だが、腰が引けて恐れおののいているように見える。

久遠さんが俺の服をつかみその手に力が入る。


「ふへへへっ」


倒れていた、番兵達が次々立ち上がった。

敵がたった三人で、さらに恐れおののいている様子を見て、急に元気が出て来たようだ。

三十人ほどが立ち上がっている。

久遠さんの手が震えだした。

顔が今にも泣き出しそうになっている。

俺は安心させるため、俺の服を握る久遠さんの手の上に、俺の手をそっと重ねた。


「うわあ、恐ろしい。こりゃあ勝てないかもしれません」


カクさんが大きな声で言った。

するともう十五人ぐらいがさらに立ち上がった。

どうにも立ち上がれない者は五、六人程度だ。

久遠さんが、俺の背中にしがみついて顔を埋めた。

心配で見ていられないのだろう。


「野郎共!! 囲んでぶちころせーー!!!!」


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」


一斉に番兵が三人に襲いかかった。


「うわああっ、やられるーーー!!」

「どわああ、こわいこわい」

「やられるーー、ひいいいぃぃぃ」


謙之信とスケさんとカクさんの悲鳴だ。


「ひゃはははは、しねえええぇぇぇーーーー!!!!」


番兵達が有頂天になり襲いかかった。


「ぐわあああ」

「ぐはあ」

「ごええええーーー」


苦しむ声が聞こえる度に、久遠さんの体がビクンビクンと反応する。


「悪く思うな! これだけの戦力差だ、少し本気を出させてもらう」


カクさんが言った。


「……!?」


久遠さんはその声を聞いて、俺の体から少しだけ顔をのぞかせて様子を見たようだ。

目が大きく見開かれ、動きが止まっている。


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」


スケさんが雄叫びを上げると番兵達が宙を舞った。

謙之信とカクさんは静かだが、スケさんと同じ位番兵を吹飛ばしている。

地上に落ちた者達はぐったりして、動く事が出来ないでいる。


「す、すごい……すごい! すごい!! 何て強い人達なの!!」


久遠さんがすっかり元気になり、三人の雄姿に見とれている。


「なななな、何なんだお前達は、なんなんだよー! ありえねー。たった三人だぞ。誰だーー!! パンツやおっぱいのせいでやられたなんて言った奴はーー!!」


お前だよ!!


「さて、終ってしまったわよ。どうするつもり?」


「く、くそーー!! ……が、がははははははははーーーー!!!! 馬鹿め! 俺の策略にまんまとはまりゃあがって!! ひゃはははは」


うん? 負け惜しみとはいえ、何か策が思い浮かんだようだ。


「何がおかしいーー!!」


スケさんが声を荒げて言った。


「ひひひひっ! てめーらはお終いだ。お終いなんだよ!」


「何を言っているの?」


久美子さんが心配そうに聞いた。


「ふふふ、お前達は、関所破りだ! 重罪人だ。今から増援を連れてくる。ぶっ殺してやるから、そこで待っていろ!!」


なるほど、そう来たか。


「な、何を言うの! 先に手を出したのはあなた達だわ! 正当防衛よ!」


久遠さんが声を出した。


「おいおい、ねーちゃん。子供じゃねーんだからよー! わかれよー!」


「はいはい、わかりました。待っていてあげますから、たーんと増援を連れて来て下さい。楽しみにしていますわ」


ミサがぶるんと胸を揺らして、少しなめた態度で返事をした。


「なっ! なにーーっ!!!! 言いやがったなー!! おぼえていろよーー!! てめーら、いつまでも寝てるんじゃねえ! 行くぞーー!!」


悪党らしい捨て台詞を吐くと頭は、まわりで倒れている部下の頭を叩いて起こした。

関所の番兵達がヨロヨロと、どこかへ消えていった。


「八兵衛さん、久遠さんにもアクアコスチュームを渡して下さい」


ミサが俺に言ってきた。

確かにそうだ。

また、人質にされたら危険だ。


「アンナメーダーマン、アクアコスチューム!」


俺は、ダミ声と共に腹の大きなポケットから、青いアンナメーダーマンコスチュームと、赤いスケスケパンツを出した。

そして、久遠さんにそれを渡した。


「あ、ありがとう。パンツは、セットなのですね。洗いたいので予備がほしいわ」


「スケスケ、エッチパンツーー!!」


調子に乗って、ダミ声で紫や黄色のパンツを数枚出した。

だが、ふと我に返るとなんだか恥ずかしいなあ。


「ありがとう」


受け取る久遠さんまで恥ずかしそうにする。

俺まで余計に恥ずかしくなって真っ赤になった。


「使い方は、ミサ様と久美子様に聞いて下さい。私は美味しい物が無いか周辺を調査してきます」


調べたいのはこの街の状況なのだが、八兵衛さんっぽく言ってみた。


「わかりました。気をつけて行って来て下さいね」


久美子さんが許可をくれた。

俺は、駐車場に宿舎を出して道路に出て調査を開始する。


ここは街の外れなので、畑と水田がある。だが、全く手入れがされていない。島津家の手入れされた水田とはまるで違う。

すぐに田植えの準備をしないと、今年の田植えは間に合わなくなる。

ここの領主は、ゴロツキと聞いたが農業には全く関心が無いようだ。


この調子では、食糧危機がすぐに来そうだ。

食糧が不足したら、奪い盗るという考えなら、新政府軍と変わらない。

肝属家には、この地から退場してもらうしか無い。


「アド」


宿舎から俺達の姿が見えなくなってから呼んだ。


「なんニャ?」


「番兵達を追跡してくれ、奴らのアジトが知りたい」


「もう、行っているニャ」


「さすがだ。あそこの背の高い建物の上に行こう」


アドと二人で、街の様子を探った。

陽が傾くまで見て回ったが、肝属家に動きはなかった。

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