目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

#33 ロンルトてぇてぇ!!

「はぁー……。強かったな、こいつ……!」


 剣を床面に突き立てて支えにし、マイがぼやく。

 確かにこのゾンビは強かった。勝った事には勝ったけど、泥沼の勝利だった。ルトちゃんの最後の魔術ファイアボールが間に合っていなければ全滅もあっただろう。本当に紙一重だった。


「……ロント!」


 ルトちゃんが駆けていき、少女に抱き着いた。


「……良かったよぅ。本当は、外でおっきな骨に襲われた時はもう駄目かと諦めちゃっていたの。それがまさかゾンビまで倒せるなんて。ロントを助けられて本当に良かった……!」

「ったく、オーバーなんだよ、アンタは。これはあくまでゲームだっていうのに。……有難う、ルト」

「……ん」


 少女がルトちゃんを抱き返す。今この瞬間だけは二人の世界が出来上がっていた。


「はぁ~……生『ロンルト』……! 尊いてぇてぇ尊いてぇてぇ過ぎて心臓ないなりそう……!」


 そんな二人を間近で見て、私のときめきゲージはMAXにまで達していた。思わず涙を流しながら合掌して拝んでしまう。てぇてぇ、ありがてぇてぇよぅ……!


「『ロンルト』って何だよ?」

「ん? ああ、あの二人のコンビ名だよ」


 ボーイッシュな彼女の名は夜凪やなぎロント。人呼んで『招き猫ラッキーキャット』ロン。企業勢のVTuberだ。

 ヒプノス・コーポレーションに所属するルトちゃんとは違い、彼女はチクタクマン社に所属している。マナちゃんと同じ会社だ。そんな所属グループが異なる二人だが、仲の良さはファンの間ではかなり有名だ。グループを越えてのコラボも何度もしている。

 それ故に二人には公認のコンビ名がある。それが『ロンルト』だ。


 日本人は何でもすぐに略したがる。特に四文字に纏めたがる。だから、この二人のコンビ名はトちゃんとソーちゃんの二人の名前を合わせて略してロンルトだ。

 カップリング名でもあるのだが、さすがにそこまで行くとファンの妄想だ。決して本人の前では口にしてはいけない。それはあくまでも公認じゃないからね。リスナーとしてのエチケットです。


「――すのことマイだね」


 とルトちゃんと抱き合っていたロンちゃんが私達に顔を向けた。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?