そこでは天変地異が起きていた。重力波が乱れ、渦潮が暴れ、紅炎が吹き荒れた。ルトちゃんの
『キャハハハハハ! キャハハハハハハハハハハ!』
「くっ……!」
可愛らしいルトちゃんの顔が苦々しく強張る。彼女の助力を得るのはまだ厳しいようだ。
「で、どうする?」
「そうだね……」
シリウスと距離を確保しつつ観察する。あの触手は厄介だ。高速移動する私を容易く捕らえてみせた俊敏性。それが複数本もあるのだ。迂闊に近付くのは危険だ。
それに正直、触手の耐久力は意外だった。マイの骨刀に斬られて切断できないとは思わなかった。敏捷性に加えて耐久力にも優れているなんて
となると、ここは――
「――弓使いとしての基本に戻るか。マイ!」
「何だ?」
「アイテムを取り出す。ちょっと足止めしてて」
「了解!」
『させるか!』
シリウスが動く。彼の前にマイが立ち塞がる。シリウスが触手を伸ばしてマイを排除しようとするが、マイはその触手をダメージ覚悟で掴んだ。これでシリウスはマイを打ち倒さない限り逃げられない。
『貴様……!』
「ハッ!」
マイとシリウスのガチンコが始まる。彼女が敵を引き付けている間に『
取り出したのは【ダマスカスの幻想剣】――ゾヘドさんから貰った両刃剣だ。かなりの重量であり、私の筋力値では到底持ち上げる事は叶わない武器だ。……本来であれば。
「――――【
右手の指先に青い光が宿る。レベルアップによって覚えた新スキルだ。矢ではない物――剣や槍を矢として放つ技だ。MPを不足数値分消費する事で筋力値を無視して、弦に番える事ができる。
「マイ、準備ができ……マイ!?」
切っ先をシリウスに向けた時、ちょうどマイがダウンするところだった。シリウスとの競り合いに彼女が負けたのだ。力なく膝から床面に崩れ落ちる。