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 ー10秒後。先に博士が飛ばしたグレネードがターゲットにドンピシャで乗っかる。…凄いコントロールだな。

 その少し後に、妹が飛ばしたグレネードがターゲットの手前に落ちた。まあ、『レベル』の差だろう。

『ー……っ』

 そんな分析をしていると、2つのグレネードが発光し…直後、急速に2重の『バリアフィールド』を形成していく。

 その範囲は広く、離れた位置にある目の前の車両すらも飲み込んだ。当然、最後尾の車両もだ。

『……っ!』

 すると、バリアの中にある全ての車両に異変が発生する。

 ーゴツく威圧感のあるルーフの上に、いつの間にか3タイプの『レプリカ』が数体居たのだ。しかも、全てが『アタックタイプ』という非常に偏った編成でそれが大量に配備されていた。

 …もし、知らずに『トリガーアクション』をしていたら武装している者でも危なかっただろう。

『…あのグレネードは……』

『最初に投げたのは、-ヘビ-のシステムの1つである-インビジブルキャンセル-。

 そして、2つ目には-トラ-の-ブーストチャージ-がインストールされている』

『…つまり、コンビネーションという訳ですか』

『ああ。本来は、決められた条件を達成しないと出来ない-リンクサポート-を簡単に出来るようになったんだ。

 多分、-エージェンシー達-を生み出した副次効果だろう。

 ーさあ、お次はアイーシャとミリアムの番だ』


『……っ』

『分かりました』

 ある程度予想していたアイーシャはより緊張しながら頷く。一方、ミリアムは落ち着いていた。…本当、強いメンタルしてる。

 俺はそんな事を考えながら、2つのケースを取り出し…右手のをアイーシャに。左手のをミリアムに差し出す。

『……。…これは?』

『アイーシャは、-それ-をフェンを持つ方の手首に着けろ。

 そして、ミリアムはフェンを俺の方に出してくれ』

『……』

 端的にオーダー出すと、姉はイエローの『ブレスレット』をケースからそっと取り出し言われた場所に装備した。

 一方、ミリアムは素早くフェンをこちらに出してくる。なので、俺はフェンの中心に指を伸ばす。…そして、そこを軽く『押し込む』。

『ーっ!』

 すると、隠されたフタが開き…何か『丸いモノ』をセットするのに丁度いい凹みが顔を出した。

 後は、手に持っている『丁度いいサイズ』のイエローのコインをセットする。

 ー直後、フェンにパチリとエレクトリが走る。

 それを確認したので、俺はフタを閉じた。

『……、い、今のは……』

 流石のミリアムも、不思議ギミックに驚いていた。


『今セットしたのは、-タイガーコイン-。-トラ-のシステムをインストールした新しいアイテムだ。

 それを、その-スペシャルな-フェンにセットする事によって-スタンエフェクト-が発動する。

 ーああ、勿論-他のコイン-もあるからな』

『……』

『…じゃあ、-これも-ですか?』

『ああ。ちなみに、しばらくは妹と兼用になるからな』

『…なるほど』

『…そうなんだ』

『ーさあ2人共。

 エネミーの鎮圧は任せた』

『…っ!任せて下さい』

『…了解です』

 改めて、2人にオーダーを出すと彼女達は意を決して頷き前へと進んだ。そして、『トラ』のアシストで『バリア』の中にはいる。

『…だ、大丈夫なの?』

『まあ、ほとんど-ミドルサイズ-だし数も-そんなに-はいないからな。

 勿論、いつでも動けるようにしておけ』

 俺はそう言って、不安を抱く妹とじっとアイーシャ達を見る博士にさっきとは別のケースを2つ取り出した。

 ーその中には、2つのクリスタル製っぽいブレスレットが入っていた。

『…流石、準備が良いね』

『これは、何ー』

『ー円舞』

 それを見て、妹はやれやれと言った感じでそれを装着する。一方、博士は研究者気質が出てしまい質問をするが…そのタイミングで『フェンチーム』がアタックを開始した。


『GUGAAA!』

 当然、ウェイト状態だったエネミーは一斉に起動し2人に襲い掛かるがー。

『ーGAAAAA!?』

 2人は既に、『エレキシールド』と化したフェンを用いての『武踏』を始めていたので先にエネミーが悲鳴のような電子音を出した。

『…凄い。…姉さん、いつの間にあんな……』

『俺も、ミリアムから聞いてるだけで実際見るのは初めてだ』

『驚きですよね。ほんの少し前までは、素人だったのに。

 あ、勿論-アイン-も素晴らしい成長速度ですよ?』

 姉の成長に驚いていると、『もう1人の指導役』はちゃんと自分の『教え子』も褒める。

『ああ。だからこそ、グレネードを投げるのを任せられたんだよ』

『……ども』

 すると、妹から『照れている』のが伝わって来た。…ヘルメットで顔は見えなくても、声だけで分かってしまうのだ。

『ーっと、案の定-デカイのが-出て来たか』

 そんな、戦場の中に居るとは思えないやり取りをしていると…後ろから来るエネミーが、次々と『フュージョン』しているのが見えた。

『…っ!いつでも行けますっ!』

『…私もだよ』

 すると、『ソフトアーツ』の2人は、意識を素早く切り替えて構えを取る。


『ーSHAA…』

『オーダー。-コンビネーション-』

 そんな2人を頼もしく思いながら、俺は地に居る2体の『ヘビ』の間に『武器』を立てる。…そして、オーダーを出すと『ヘビ』は素早く武器…『紅のバトン』に巻き付いていく。

『ー…っ!そんな事まで……』

『-ドラゴン-で出来て、-他-が出来ない訳ないだろ?

 ー名付けて、-紅天棍・潜鱗-。…さあ、-潜かに-固まって行くぞ』

『…了解』

『…分かった』

 2人は直ぐに、俺の傍に近寄って来る。それを確認した俺は、両端に白銀の『ヘビ』が巻き付いたバトンを天に掲げながら静かに回転させる。

『オーダー。-インスタントスケイル-』

『SHAAA』

『…っ!』

『……』

 すると、バトンからまるでシャワーのように白銀の光の粒が降り注ぎ俺達の装着する『ウサギ』に付着していく。

『ー…っ!?……あれ、あれ?』

 やがて、それが終わると…急に妹が慌てた。…まあ、無理もないー。

『ーなるほど。…-潜航の鱗-が付着した訳ですか』

 そんな妹とは対照的に、博士はピタリと『現象の原因』を言い当てた。…流石、一流の科学者だな。

『…っ、あ、そうか……』

 それを聞いて、妹は直ぐに落ち着く。…そう、今俺達は『インビジブル』の状態になっているのだ。


 ー本来、『この状態』な『ヘビ』のチョーカー等のアイテムを用いるが…あいにく必要な数しかないのだ。しかも、『上司』から『製造制限』の指示が出ているから余程の事がない限りそうホイホイと増やす事も出来ない。

 そこで、即席で『この状態』になれるシステムを考え始めたのだが…まさか『ドラゴコントローラー』が生まれてから、『トントン拍子』に進んで行くんだもんな~。


『ーGAAAAA!』

『…っと。2人共、ちゃんと付いてこいよ』

『了解』

『…うん』

 そんな事を考えている内に、後方のエネミーは随分とデカくなっていた。なので、俺は気を引き締め後ろの2人に合図を出した。

 ーそして、俺達は素早く駆け出し『フェンアーツ』の2人が入った『入り口』からバリアの中に入る。

『……っ』

『……』

 直後、激戦が繰り広げられる危険なゾーンに踏み込むが…エネミーは一切こちらに気付く事はなく、安全にゾーンを通り過ぎた。

『…それで、あの-デカイ-のはどうするの?』

『まあ、見てな……っと』

 妹の問いに、俺はスピードを緩め足を止める。そしてー。

『ー…オーダー。-トラップリキッド-』

『SHAAA!』

 オーダーを出すと、バトンに巻き付いている『ヘビ』が鳴く。…それを確認した俺は、バトンを地面スレスレの高さに持っていく。

『ーっ!』

『…こ、これは……』

 直後、『ヘビ』の口から『青く光る液体』が溢れ出し…一帯に広がっていった。

『ーGAAAA!』

 そんな中、巨大なエネミーは更にこちらに接近する。…しかし、俺は落ち着きながら『アクション』を続けた。何故ならー。

『ーGAAAA!?』

 数秒後、巨大なエネミー達は俺達の数メートル手前で急に足を止めた。…いや、地面に流れる『トラップリキッド』のせいで『止めざる』を得なかったのだ。

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