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第161話 スイーツパラダイス

しばらく歩くと目的のスイーツバラダイスが見えてきた。


「あ〜。楽しみだなあ。どれから攻めよう」


「ふふ。榊さんは本当に甘いもの好きなんですね」


 子供のようにはしゃぐ榊が可愛くて思わず笑みが溢れる。

 累は特に反応せずにスイーツパラダイスのサイトを見ながら言った。


「今はトロピカル特集だから通常のラインナップに加えてマンゴーやパイナップルを使ったスイーツも並んでいるらしいですね」


 それには私も目を輝かせる。マンゴーが大好きなのでそれを使ったお菓子が食べられるなんて幸せだった。


「うわあ!本当?マンゴープリンがあったらいいなあ」


「うん。写真に載ってるからあるみたいだよ。あとはパインケーキとか」


「パインケーキ!食べたことはありませんが魅力的な響きですね」


 榊はどうもパインが好きらしく累の言葉を聞いてウキウキしていた。

 累はチョコレートが好きなので、チョコレート系を制覇したいと言っている。

 私はチーズ系とマンゴーを攻める。


 それぞれ好きな系統が違っても色んな種類のお菓子が取り揃えられているのがスイーツパラダイスのいいところ。お店に着くとすでに女の子達が開店待ちの行列を作っている。


「うわあ!まだ30分前なのにすごい人ですね」


 驚く私に榊はにっこりと微笑む。


「俺も毎回並ぶんですけど、体でかいし男一人だから目立って目立って…今日は泉川さんがいてくれるから落ち着いて並べます」


「俺もいますけどね」


 榊の言葉に累は素早く反応する。張り合う必要なんてないのに、累は警戒心剥き出しで榊に対応するのでハラハラしていたが、榊は気にする様子はなくニコニコ微笑んでいた。


「今日は私がご馳走させていただきますので、思いっきり食べてくださいね」


「ああ〜でも女の子にお金出させるのはちょっと…」


 榊が困った顔をすると累がずずいと私と榊の間に割っていった。


「じゃあ俺が払います。婚約者を助けてもらったお礼ですから…それでいいですよね?」


 累の提案に榊は渋い顔で頷いた。

(何だか空気が悪いな…まあ…当たり前か)

 累が榊に敵対心を剥き出しにしているから榊も居心地が悪くないか心配しているが、案外そうでもないらしい。


 榊は終始ご機嫌で長い行列に並んでいた。


「ねえねえ。あそこの二人めっちゃかっこよくない?モデルが芸能人かな?」


 その時、周りの女の子達がヒソヒソと累と榊のことを話しているのが聞こえてきた。


「一緒にいる女がマネージャーだよね。きっと。だって地味だし普通顔?」


「うんうん。全然釣り合ってないもんね」


(うーんその通りなんだけど、そんなはっきり言われると流石に傷つくなあ)

 私が少し悲しく思うと累が私をグイと引き寄せておでこにキスをした。

 榊がいる前でそんなことをするなんて思っても見なかったので私は混乱していたが、周りからはざわめきが聞こえてくる。


「嘘!あんな地味な女なのに!?」


「嘘〜。ちょっと狙ってたのに。めっちゃ仲良しじゃん」


 また女の子からどよめきが起こる。


「累…こんなところで、榊さんもすみません」


「いやいや。仲が良くていいね。俺も泉川さんみたいな彼女が欲しいよ」


 榊は特に私たちのことに対して気にする様子はなく、ちょうど開店した入店の流れにのって移動したのでその話はそこで途切れた。


 入店するとそこはまさにパラダイス。様々なスイーツが棚に陳列されていた。


 三人ともテンションが上がり、制限時間があることもあり、早速ケーキを取りにいった。累も榊もいきなり大盛りにケーキを取っていたので、驚きながら私は普通盛りでケーキやプリンを皿に盛り付けた。


「美味しい!いやあ〜やっぱり来てよかった!最近こられてなかったから久々のスイーツパラダイスは最高だな」


 榊はもりもりと山盛りに盛っていたスイーツをあっという間に平らげてまた取りに行ってしまった。

 私はマイペースにスイーツを楽しんだ。

 累も榊に対抗するようにおかわりに行ってしまった。


 一人で食べていると数人の女の子が近寄ってきて私の前に仁王立ちになった。


「ねえあなた、あの二人のどっちと付き合ってるの?全然釣り合ってないから今すぐどっか行って欲しいんだけど」


 ギャルっぽい気の強そうな女の子がいうと取り巻きらしい女の子達がくすくす笑う。

 私は不快に思いながら、相手にするのも面倒なので無視してスイーツを美味しくいただいていた。

 するとじれた女の子が私の腕を掴んで捻りあげる。


「痛い!!」


  私が顔を顰めて持っていたフォークを落とすと女の子は怖い顔をして私を睨みつける。


「話聞けよブス!あんた邪魔だからさっさとどっか行けよ」


「ふうん。ブスで邪魔なのはどっちかな?」


  後ろから声が聞こえてきて、そちらをみると榊と累が立っていた。


  二人が戻ってきてくれたことにホッとして私は困った顔をした。


「この子達がね…累と榊さんのこと狙ってるんだって」


「へえ。それで結菜にこんなことしてんだ」


 累は額に青筋を立てて怒っていた。


 机に持っていた皿を置くと女の腕を振り解き、赤くなった私の腕を優しくさすってくれた。

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