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第90話 このドラゴン、強すぎるっ!

「アグさんのステータスもアプリで鑑定すれば見られるから、時々チェックしてあげて。えーと、回復方法は」

「回復は大丈夫です! そのためにヒーラーを連れてきました!」


 私が元気よく答えると、毛利さんは笑って頷いた。


「そうだった。蓮くんはヒーラーだったね。今のステータスは?」

「ええと、こんな感じです」


安永蓮 LV9 

HP 50/50(+80)

MP 35/35(+300)

STR 9(+75)

VIT 13(+85)

MAG 20(+215)

RST 21(+160)

DEX 16(+120)

AGI 15(+145)

スキル 【初級ヒール】

装備 【アポイタカラ・セットアップ】【ロータスロッド】


 蓮のスマホを覗き込んだ毛利さんがびっくりしている。

 デスヨネー。


「これは、率直に言って凄いね。ザ・魔法使いっていうステータスだ。惜しいなあ、このまま成長したら日本でもトップクラスの……そういえば、ウィザード系かクレリック系かは決めてるのかい?」

「それは、まだ決めてません」


 ため息混じりの蓮は、本当にここのところスキルについて悩んでる。


 スキルで攻撃魔法を3種類取ると、ジョブとしてウィザードになることができる。そして、回復魔法を3種類取るとヒーラーになれるんだけど、ステータスの補正値がそれぞれちょっと違うんだよね。


 一般的には回復役をジョブ取ってるかどうか関係なくヒーラーと言う。クレリックとかプリーストじゃないのは、そこに宗教的概念がないかららしい。


 スキル取る条件もMAG依存なので、どっちか片方を狙っていくのが常道らしいんだけど。

 もしかすると、蓮だったら両方取れるんじゃないかと思うんだよね。


 まあ、「冒険者を続ければ」の話なんだけどね!


「うーん、見れば見るほど惜しい。俳優志望だよね、冒険者続ければ本当に凄いことになると思うんだけど。

 MAGが伸びる人っていうのは稀少なんだよ。LV10行く前にMAG20っていうのは初めて見た」

「ええっ、そうなんですか!?」


 驚く天然魔法使い。こやつは、自分の特異性をよく理解していないんだね!


「うちのクラスでも、LV10でMAG10が最高かな。多分聖弥くんもそこを抜くんだけど、それに比べると蓮がどれだけおかしいかわかる」

「俺が……おかしい……ゆ~かじゃなくて俺の方がおかしい?」


 なんでそこで混乱してるのかなあ! 私なんか補正が付いたあの勇者聖弥くんに、何ひとつ勝ってないんですけどね?


「初級魔法のファイアーボールは取っておいた方がいいよ。ジョブヒーラー狙う人もあれだけは押さえてる。他の魔法と違って、延焼させることができるから使い勝手がいいんだ」

「なるほどー! 例えば毛とか衣服を燃やせば、継続してダメージを入れられるって事ですね? うわー、ママが好きそうな戦術!」

「火が効きにくいモンスターも多いけど、完全にダメージが通らないっていう相手は少ないからね。これだけMAGが高ければ、それなりのダメージは入る。ロータスロッドは氷属性か……ううん、氷系の魔法は中級が範囲魔法でちょっと使い勝手が難しいんだよね。また、面倒な属性が付いてるなあ」


 凄い! こんなアドバイス貰ったの初めてだ!

 そもそも、学校でもあんまり魔法のことはまだ習ってないんだよね。理由は簡単で、魔法が使える条件に達してる人が少ないから。


 教科書には載ってることは載ってるけど、私には縁のないことと思って読んでません。


「そっか……そうするとやっぱりここで取るべきは中級ヒールと初級魔法か」

「蓮はよく悩んでてください。毛利さん、そろそろヤマトの訓練を始めたいんですが」

「案外、蓮くんみたいに『冒険者になるつもりがない』って埋もれてるだけで、魔法使い向きの人っているのかもしれないなあ……。ああ、訓練だね。アグさん、訓練を頼むよ。これからアグさんに頼みたいときは『訓練お願い』か『訓練頼む』で通じるからね」

「ギャス」


 頷くアグさん、賢いな! 爬虫類系って頭悪いイメージがあるんだけど、そこはやっぱりモンスターでドラゴンだから違うんだろうな。


 アグさんはドスドス歩いて中央の十分に周囲に余裕がある場所まで行くと、空気をビリビリと震わせる咆吼を放った。


「ガウッ!!」

「ぐわっ!」


 私も鳥肌立ったけど、蓮に抱っこされてたヤマトが激しく暴れ、蓮を蹴り飛ばしてアグさんに突進していく。勢いよく蹴られた蓮は後ろに思いっきり倒れて、地面でバウンドした。


「わー、ヤマト!! って、蓮も! 頭打ったよね!? ぎゃー! どっちに行ったらー」


 なんでこんなときに頭打ちますかね、この人は!

 私がわたわたとしていると、毛利さんが「大丈夫」と言って蓮を介抱してくれる。


「すみません、お願いします!」


 毛利さんに蓮を任せ、私はヤマトを追って走って行った。

 ヤマトは一直線にアグさんに向かい、飛びかかっていく。凄い速さだ! これは、見慣れた暴走状態!


 だけど、アグさんは飛びかかってきたヤマトを、尻尾の先でぺしっと弾き返した。

 そりゃもう簡単に。人間がハエを払うが如く。


 お、おう……さすがフレイムドラゴン。たかだかLV5くらいのヤマトでは相手にならないのね。

 念のためにアグさんを鑑定し、私は思いっきり息をのんだ。


アグえもん LV52 従魔 

HP 1084/1084

MP 682/682

STR 793

VIT 971

MAG 330

RST 617

DEX 599

AGI 640

種族 【フレイムドラゴン】

スキル 【咆吼】【ファイアーブレス】【自動回復】【威圧】

マスター 【縺9⊇ψ溘s】


 マスターのところが文字化けしてるのかな? それも怖いけど、ステータスが凄すぎるよ!

 HPが4桁か。ということは、普通にドラゴンと戦ったらこの数値が敵になるわけで……アグさんのマスターさん、よくこれをテイムできたなあ。


 あとひとつ、引っかかったのは名前が「アグえもん」だったことだね!

 アグっていうのが名前だと思ってたよ。


「もしかしたら、回復いらないかも」


 思わずそんな言葉が漏れた。VIT971って……ヤマトの攻撃通るのかな。

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