【フュルを討伐しました】
【ドロップ:魔鹿の角×1】
「お、終わった」
怨念が他の紫煙に伝播しないよう、【魔煙操作】によって操っているとHPが尽きたのか鹿は光となって消えていった。
今回の戦闘で分かった事は何個かある。
「【怨煙変化】はちょっと気を使い過ぎるな……【過集中】中とか使えないでしょコレ」
まずまずとして、怨念を限られた範囲だけに留めておくのが中々難しい、という事。
変化元が紫煙であるからか、気体と同じように霧散しそうになるのが中々厄介だ。
【魔煙操作】を思考操作で使える私だからこそ何とかなっているだけで、スキルが無かったら自爆特攻くらいでしか使い道がなかっただろう。
次に、火力が足りていないという点。
これは普段のように戦っていないから、という言い訳無しに私自身の火力が足りていないのが原因だ。
【投擲】、【斧の心得】が乗った紫煙外装による攻撃で二撃以内に道中の敵性モブを倒せないのであれば……そのダンジョンの攻略は難しいだろう。
最大火力であるソレがあまり効いていないのだから。
……って言っても、スキルを伸ばすか新しいスキルを増やすかくらいしか無いんだけどー……。
ここの所、スキルの追加能力が生えてきていないというのも問題だ。
スキルを使っていないわけではない。
何なら、普段使いしているといっても過言ではない【過集中】の熟練度など、とうに貯まっていてもおかしくはない筈なのだが……今の今まで全くそのようなログは流れていない。
「確認しないとなぁー……流石にこのままはちょっと攻略的には辛いし」
火力が無く、攻略が滞るとなると装備の更新もマトモに出来なくなってしまい……その先に待つのは完全なる停滞だ。
今は紫煙技術等の新しい要素がある為に進んでいるように見えているが、それが一通り確認、試用が終わってしまったら……そうなるのは必然とも言えるだろう。
だが、新しいスキルを生やす、というのもまた話は別になってくる。
単純に増やした所で、今の【複製】や【隠蔽工作】のように持て余してしまう可能性だってあり得るのだ。
「でも、もうちょっと魔結晶稼いでから」
確認作業は、素材回収の後で。
結局の所、素材が無ければ煙草も作れず、煙草が無ければ私は動けない。
今がどんなに時間が掛かろうが、この作業だけは欠かせないのだからやるしかないのだ。
インベントリ内から新たに煙草を取り出し、火を点けつつ。
私は暗闇の中を駆け始めた。
--マイスペース
「じゃ、ルプスよろしく」
『一応、新素材ですがよろしいので?』
「んー、マノレコ以外は正直使わないと思うからね。STに回しちゃって良いんだ」
『畏まりました』
ルプスに指示を出した後、椅子に座ってスキルの詳細画面を開く。
【峡谷Hard】の1層はある程度攻略した上で一度置いておくという判断になった。
というのも、やはり火力が足りていない為にSTの消費が激しいのだ。
……【狼煙】や【怨煙変化】を使った所で、消費を抑えられるわけでも無いしねぇ。
普段、私がSTを使う場面というのは中々に限られている。
それこそ、紫煙駆動から紫電の発生が主な使い道ではあるが、そこに【複製】や今回追加された煙質2種。
そして具現煙でのリジェネ効果でも使うのだから、ずっと満タンにしておくというのは中々に難しい。
だからこそ、消費を抑える為に手斧の投擲だけで倒せるならばそれに越した事はないのだが……狼や鹿だけでも紫煙駆動を切った方が良いという結論に至ってしまったのだ。
修得スキル一覧を開き、それぞれのスキルの詳細ウィンドウを自身の周囲へと出現させ見てみると。
【観察】、【投擲】、そして【斧の心得】に気になる点が見つかった。
「……なんでコレ熟練度溜まってるのに能力が追加されてないんだ?」
3つのスキル、その熟練度の欄が上限まで貯まっていたのだ。
今まで通りに考えれば、熟練度が溜まったら勝手に能力が追加されていたはず。
「えぇーっと、これは掲示板案件かな……」
新たにウィンドウを開き、掲示板内を検索していくとそれらしいスレッドを見つける事が出来た。
その内容によると、
「スキル同士の合成、ねぇ……成程?前にもなんか見た事あったような気がするなぁ」
一番初めにスキルの修得画面を開いた時だっただろうか。あの時は確か、前提スキルが足りていないとかなんとか出てきていたはずだ。
だが、今回は熟練度云々からこの話題に辿り着いている。
……とりあえずスキル修得画面開くか。
開き、そして【投擲】で検索してみると【投擲】以外に2つのスキルが引っかかった。
「【投げ斧使い】に【狙撃手】、ねぇ」