その日の夕食後。
食堂に残った
「
星川雅は指をあごに当てながら言った。
その声はかすかに
「しかもお前、殺されかけたんだろ? その『試験』ってのに合格してなきゃ
南柾樹もウツロを心配して声をかけた。
「でも、さすがはウツロだよね。わたしだったらそんな難しい問題、絶対に解けないって」
真田龍子はウツロを落ち着かせようと
「おそろしい、人だったよ……正体はわからないけれど、彼もアルトラ使いであることをほのめかしていたし。まあ、組織のナンバー2なんて人が、アルトラ使いじゃないほうがおかしいと言ったほうがいいのか……」
ウツロは改めて
「
星川雅のセリフに、
いったいどこで、何者が見ているのか。
あるいはそれも、アルトラの能力でなのか。
そんなことが頭の中を
「まあとにかく、ウツロが無事でなによりだぜ。不幸中の幸いっていうか、いいほうに
南柾樹は
「そうだよ、柾樹の言うとおりだよ。おびえてたって何も解決しないし、とりあえずはウツロに何もなかったことを喜ぶべきじゃない? ね、雅?」
真田龍子も南柾樹の流れに乗りながら、星川雅にもそれを
「まあ、そうだね……柾樹や龍子の言っていることが正解だと思う。ここで変にびくついてたら、それころ組織の思うつぼだろうし。ウツロ、当事者を前にしてなんだけれど、あなたはどう思う?」
星川雅もやはり同意し、話をウツロに
「うん、みんなの言うとおりだ。そしてありがとう、俺のことを気づかってくれて」
ウツロは軽く一礼した。
「いいって、ウツロ。お前が何かわりぃことをしたってわけじゃねえんだから。リーダー格なんだから、堂々とふるまってりゃいいんだぜ?」
「リーダー格、って……?」
南柾樹の言葉に、ウツロはキョトンとした。
「ウツロ、あなたはわたしたちよりあとからここにきた。だけれど、あなたのその冷静な判断力、確かな決断力、そして戦闘能力などのバランスから総合的に考察すると、
星川雅は手を組んでそう告げた。
「そんな、みんなをさしおいて、俺がリーダーだなんて……」
ウツロは困り果てた。
あとからのこのこ加わった身である自分がリーダーだなんて……
「謙遜すんなって。こういうのは、信頼できるやつに任せるのが一番だからな」
「そういうこと。あなたの性格から鑑みて、ポストにのぼせあがることなんてないだろうしね」
南柾樹と星川雅は念を押すように代わるがわる言った。
「そんな、いいのかな……」
「いよっ、リーダー! ひゅーひゅー!」
「龍子、それは昭和くさいぞ」
「なんだってえ、この毒虫リーダー!」
「なんだよ、それ……」
ウツロと真田龍子のやり取りを、残る二人はほほえましく思った。
「頼りにしてるぜ、リーダー?」
「ふん、わたしはいまいましいけれどね」
南柾樹と星川雅は、改めてウツロにリーダーシップを表明した。
「うーん……」
場の雰囲気にウツロは困惑した。
俺がリーダー、リーダーか……
そんな器じゃないと思うけれど……
実際にというか、俺は伝えていない。
あの男、浅倉喜代蔵から聞いた秘密を。
日本を影で支配しているという組織の名前。
みんなに危険がおよぶかもしれないことは当然として、もうひとつはなぜ彼がそれをわざわざ教えたのかということだ。
何かまだ、俺を試す意味があるのかもしれない。
秘密を
いずれにしても
とりあえずいまの段階では後者を選択しておこう、大事を取って。
もちろん、それが
だが、何か引っかかるんだ。
もしかしたら、俺をこうやって混乱させるのが目的なのか?
それが浅倉喜代蔵の
もうひとつのこと、ここさくら
これも当然、黙っていたほうがいい。
言ってしまえば身内の中でかく乱が起こることは目に見えている。
スパイはいるのか、いないのか……
ああ、頭がこんがらがる……
俺がリーダーだって?
いや、ふさわしくなんてない、俺なんかには。
なぜなら俺はいま、浅倉喜代蔵の
なんなんだ?
この
これから
それどころじゃなくってしまいそうだ。
うう、気が遠くなりそうだ。
頭がグルグルする……
こんなふうにウツロは、ほかの三人がキャッキャッと笑いあっている中、精神を
その正体こそ浅倉喜代蔵がしかけた
(『第41話 這い寄る気配』へ続く)