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第46話 ライオン・ハート

「は~い、ウツロ」


 ウツロが旧校舎の中庭へ到着すると、ベンチに座った刀子朱利かたなご しゅりがひらひらと手を振っている。


 かたわらには気絶した真田龍子さなだ りょうこが横たわっていた。


「刀子朱利、貴様っ……!」


「あははっ、かっかしちゃってえ。龍子ちゃんのこと、大好きだもんねえ。ああ、りょーこ、りょーこおおおっ」


「おのれ、断じて許さんっ!」


「ははっ、かっわいい~! まあ落ち着きなって、あんたに用があるのは、あたしじゃないんだからさ」


「なにっ……」


 庭園の木の陰から、金髪の少年が姿を現した。


氷潟夕真ひがた ゆうま……!」


「ウツロ、俺と戦え」


 氷潟夕真はそう啖呵を切った。


「何が目的だ?」


「そんなものはない。俺はお前とケンカがしたい。それだけだ」


「……」


「ほらほら、早く言うとおりにしないさいよ。じゃなきゃね、わたしが真田さんのこと、この爪でひっかいちゃうよ?」


 刀子朱利は真田龍子の首筋に指を当てて、ケラケラと笑っている。


「ぐっ……!」


「うふふ、死ぬほうがマシってくらい凶悪なやつにしようかな~」


「きっ、貴様あああああっ!」


 自身の能力、ムカデの毒を使用することを示唆する彼女に、ウツロは激高した。


「ウツロ、お前の相手はこの俺だ。朱利、くれぐれも余計な真似はするなよ?」


「ふん、わかってるって。ほんと、男ってめんどくさいよね」


 氷潟夕真は刀子朱利に、戦いの邪魔をしないよう釘を刺した。


「そういうことだ、ウツロ。俺は全力での戦いを望む。アルトラを出せ」


「な……」


「虫を身にまとった戦士の姿、一度拝んでみたいと思っていた。それを見せてもらおう。俺もお前に敬意を払って、絶対に手は抜かないと誓う」


「な、これは……」


 氷潟夕真の全身が変形しはじめる。


 皮膚が黄土色おうどいろに変わり、金色こんじきに輝く「毛並み」が生えそろってくる。


「アルトラ、ライオン・ハート……!」


「氷潟、それがお前の能力か……!」


 彼の姿は一匹の、獅子ライオンをモチーフにした獣人に変貌を遂げていた――

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