ラブコメのごとき展開をしかと目に焼きつけました。
どうもAランク61位にして、ブルジョワ探索者にして、プラチナ会員にして、経験値工場の工場長をしております、赤木英雄です。
先ほどのラッキースケベはバスケットウェアからいつもの受付嬢な服へ着替えるところだったようです。本当にいいものを見させてもらいました。ありがとうございました。だけどね、ラッキースケベを楽しむより、嫌われたらどうしようが勝ってしまうあたりやっぱり、俺は小心者なようです。
幸いにも修羅道さんはあんまり気にされていないようでした。
本当によかったです。
修羅道さんが着替えている最中に、デイリーミッションの報酬を確認しちゃいましょう。
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★デイリーミッション★
毎日コツコツ頑張ろうっ!
『突然! ラッキースケベ』
突然、ラッキースケベする 1/1
★本日のデイリーミッション達成っ!★
報酬 『経験値のなる木』
継続日数:102日目
コツコツランク:プラチナ 倍率10.0倍
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本当に奇跡的に達成出来ましたね。
よかったよかった。
ところで、報酬がまたなにやら面白い物ですね。
『経験値のなる木』ですか。
デイリーミッションのウィンドウから出てきたのは黒い植木鉢だった。
アイテム名を指でなぞり詳細を開く。
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『経験値のなる木』
異次元の匠モートンの作品
1時間に1つ、経験値の実を生みだす
格納 0/500
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ふむふむ。
モートンさんいつもお世話になってます。
信頼と実績のモートン印なので特に不安はないです。
「経験値工場に土を入れて、土壌をつくって植えてみましょう」
「ちーちーちー!」
「ぎぃ!
流石は経験値のこととなると、皆さんテンションあがってますね。
すぐ近くのホームセンターにおもむいて、ふわふわの土をたくさん購入します。
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ダンジョン銀行口座残高 128,426円 -20万円
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経験値工場の真ん中あたりに木で枠組みをつくって土をしきつめて土壌をつくることにします。
計画を立てるのは、家庭菜園みたいでたのしいですね。
あ、ちなみに作業するのはぎぃさんの召喚した黒沼の怪物、通称:ブレイクダンサーたちなのでほとんど俺やぎぃさん、シマエナガさんはなにもしないです。
「赤木さん、お待たせしました!」
修羅道さんが来たので、ブレイクダンサー総勢15名に購入した土と『経験値のなる木』、そして工場改築計画書をたくして作業に入ってもらいます。
きっと素敵な菜園ができていることでしょう。
「では、モーニング食べに行きましょう!」
修羅道さんといっしょに食堂ことファミリーレストラン界の激安の殿堂サイゼリヤさんへやってきました。
俺はマルゲリータを注文。
修羅道さんはペペロンチーノと辛味チキンにミートドリアを注文しました。
どうやら腹ペコ修羅道さんだったようです。かあいい。
「ちょっとお手洗いに行ってきますね!」
席を立つ修羅道さん。
その間に料理が届く。
絶好の機会に、つい俺はポケットの中をまさぐります。
『モテルモテール』に『エチチエチーチ』の小瓶がかちゃりと音を鳴らす。
(けっけっけ、今ならいける。やれるぞ、赤木英雄!)
ダークサイドの俺が囁いてくる。
(だめよ、そんなえっちな薬で女の子の心を手に入れようとするなんて! 最低な行いだわ、下郎に落ちてはだめよ、赤木英雄!)
善なる赤木英雄が引き止めてくる。
(けっけっけ、いい子ちゃんぶるのなんてやめろよ、赤木英雄! 学業のために借りた金で投資しようとするような悪の天才、それがお前だ、賢く立ちまわって、あらゆる欲望を満たしてこそ、次世代のクールってやつだぜ!)
(だめよ、そんなの絶対にだめ! 真実の愛を、真実の心を失ってしまったら、あなたは二度と修羅道さんのことを信じることができなくなってしまうわ! 本物がほしいのなら決してそんなえっちな薬に頼ってはだめ!)
(けっけっけ、本物とか、真実とかくだらねえことぬかす野郎がいるな! そういう眠てえこと言う奴はこうだ!)
蹴り一発で俺の善なる面が吹っ飛ばされた。
ダークサイドつええな、おい。善なる俺頑張れよ。
(けっけっけ、朝起きたら隣にいる修羅道さんを見てえだろ?)
くっ! み、見たいっ!
(けっけっけ、修羅道さんのおっぱい見てえだろ?)
くっ! ちょー見たいですっ! 修羅道さんのおっぱいちょー見たいです!
(なら、ほら、あとはその薬を使うだけだぜ!)
『モテルモテール』
これを半分俺が飲み、半分を修羅道さんに飲んでもらえば、修羅道さんの心は俺のものになる。
『エチチエチーチ』
これを修羅道さんに飲んでもらえれば、えちえちな感じになる。
10分後には合体しているかもしれない!
うああああ、見たいよ、見たいよ、おっぱい見たいよー! 修羅道さんのおっぱい見たいよー!(童貞の叫び)
「やるしかない、やらずに後悔するなら、やって後悔だ……!」
おっぱいには勝てない。
そういう風に産まれてしまったのだから仕方ない。
「なるようになれえええ!」
修羅道さんのメロンソーダめがけて、モテる液体と、えっちな液体をダブル投入だ!
「ちーちーちー!!」
「し、シマエナガさん?!」
「ぎぃ!」
「ぎぃさんまで!?」
やばい、この厄災たち、俺より道徳的だというのか!?
顔面を黒触手でべちんっとぶっ叩かれ、悶絶しているうちに、びゅーんっと飛び込んで来たシマエナガさんに小瓶を奪われました。
くっ! さっきから小癪な邪魔ばかり!
「逃がすか、エクスカリ……あ、あれ、ぎぃさん?」
「ぎぃ」
ぎぃさんが俺のポケットから『メタルトラップルーム』を取り出して、ソファを斬りつけました。当然、経験値工場への道が開かれます。
経験値工場へダイブするシマエナガさん。
逃がすか。
俺も経験値工場へ入場し、追いかけます。
シマエナガさんは『経験値生産設備 ver2.0』のとなりに積んであるクリスタルを口にくわえて、
なんて機動力だ。
待てええ、そこのシマエナガさーん!
「ぎぃ!」
「あ、あれは!」
サイゼリヤと繋がった入り口のところで、ぎぃさんが『ムゲンハイール ver5.0』を開いて待っているではないか。
そこにクリスタルをシュートするシマエナガさん。
「ちー! ちー! ちー!」
さらに『モテルモテール』に『エチチエチーチ』を相手のゴールにシュート。
超エキサイティング!!
ま、まさか、合成する気じゃ!
思い出されるダンジョンブローカーの言葉。
『合成したら最後、なにが生まれるかは誰にもわからない』
「ぎゃああ、やめてええ! 俺のおっぱいがあああ!」
「ぎぃ」
無慈悲に合成される我が夢。我がロマン。
代わりにジュラルミンケースのなかには灰色の小瓶が鎮座していた。
新しい
もうないのだ。『モテルモテール』も『エチチエチーチ』もないのだ。
すべてが終わった。おっぱい……。
とぼとぼと経験値工場からでて、サイゼリヤのソファに深く座り込みます。
もうすべてがどうでもよくなった。
好きな子のおっぱいを見れない人生に一体なんの価値があるっていうんですか。教えてくださいよ、ねえ。
「なんだか、すごい
「しゅ、修羅道さん、いつからそこに?!」
ニヤニヤした顔でこちらを見つめる修羅道さん。
「ちょうど『俺のおっぱい!』あたりです!」
死亡。終わりました。お疲れさまでした。
誰か俺を殺してください。
「赤木さん」
「は、はぃ……(やばい聞かれた、おっぱい聞かれた……!!)」
「えっち」
ひいいいいい……!
「赤木さんすごくえっちですね!」
「やめてください……、お願いします……、死んじゃいます……」
「いいえ、やめません! 赤木さん、そういうえっちなことを叫ぶなんていけないと思います! えっちめ、えっちな赤木さんめ! ていやーっ!」
「ご容赦ください……誤解なんです……ぅぅ、!」
「ふっふっふ、そんないけなくてえっちな赤木さんにはこうしちゃいます!」
修羅道さんがやさしく抱擁をしてくださいます。
え? なにが起こって……お胸が、お胸がぁあ、あたって……。
「赤木さん。疲れているんですよね。えらいえらい、赤木さんはよく頑張ってます。いい子いい子です」
トンッとお胸に頭を乗せてもらえます。
温かくて、良い匂いがして、柔らかくて。
修羅道さんの規則的な鼓動が聞こえてくる。
だんだんと律動がはやくなっていく。
今のうちにたくさん息を吸っておこう。
「知ってますか、こうすると男性は耐えられないストレスにも打ち勝てるんですよ。ひとりで歩くより、ふたりのほうが倒れにくいんですよ」
なんだか涙が溢れてきました。
「はい、サービス終了ですよ。もう元気になりましたね?」
「大元気です(※語彙混乱中)
「それはよかったです! 今回のは特別な福利厚生ですからね! ほかの受付嬢さんにこんなことお願いしちゃだめですよ?」
「もちろん、しませんよ。絶対」
「あはは、よろしいです! それでは、お食事にしましょう!」
「ですね」
「あ、マルゲリータをちょっとください! よいしょ、辛味チキンを交換こです!」
マルゲリータ(1枚):辛味チキン(1個)
甘い思いの後はちょっぴりビターな交換レートでした。
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「では、今日もお互いに頑張りましょうね!」
修羅道さんが仕事へ戻っていきます。
楽しい食事でした。辛味チキン一本だけだったけど、すごく満足してます。
「指男……」
はいはい、指男ですが?
ふりかえると黒いシャツを着た小柄な女性がいらっしゃいました。
美人さんです。目のしたに深いくまがありますね。
「こんにちは、あたしは地獄道……あなたのことをすこし調べさせてもらいたくて財団から来ました……すこしお時間いいですか?」
「……断ったら?」
「あなたが修羅道の着替えを覗いたことをみんなに言っちゃうかもしれません……」
「少しどころかいくらでもお時間どうぞ、地獄道さん。肩も揉みますよ」
「ありがとうございます、肩揉みは結構です……では、こちらへ。──
恐い人に捕まりました。
修羅道さん、助けてください。