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第42話 ゲーム内配信/vs古代獣ヤマタノオロチ⑨

:こうやってみるとやっぱムーの巨大化って普通にやばいよな

:なんでそう思う?

:武器や防具まで巨大化するじゃん?

:ああ、それは確かにあるな

:アトランティスはメカ用の武器は生身で持てないし

:普通はそうでしょ

:ムーの強みはむしろそれくらい?

:そこにスタンピードと精霊使いがあるから怖いんだよ。特にこれだけ広いフィールドだと暴れたい放題だろ?

:だが現実は非情である

:黄緑の首の物理反射はクソ

:ビームは貫通するだろう?

:桃色「させると思う?」

:仲良しだから一緒に生えてくるしな

:逆にこのモードの首のパターンを解析中の精巧超人の苦労が浮かばれる日が来るのか

:完全ランダムで良いじゃん、もう

:しかしアキカゼさん達も結構持つよな

:ここまで来れずに詰むプレイヤーも多いと言うのに

:なんだかんだ実力あるよ、この人達。一緒に戦おうって気にはなれないけど

:バトルの方向性が逆だもんな。俺たちならついていけねーもん

:これでただテイムしに来てるだけって言うのがなんとも

:討伐じゃないからテイムできるまで終わらないんだよなぁ

:あ、普通に討伐しちゃったな

:乙

:お疲れ様ー

:おめでとー

:普通はここで完結するんだけどな

:くまがめっちゃ焦ってる

:止めくまだもんな。そりゃ焦る

:ざまぁ!

:いや、あれは白も生えてたからナイスフォローだったよ

:放置すればまた耐久回復されるしね

:あ、何事もなかった様にテイク2に入ったぞ

:草

:まるでついさっきの出来事を無かった様な素振りで連戦しやがった

:経験値が美味いでもなきゃ連戦したくねー相手だろうに

:アキカゼさん的にはテイムできるまで帰れませんから

:アウルが呆れた様な目でアキカゼさん見てるぞ

:そりゃメカはエネルギー補給しなきゃ長期戦無謀だし

:実際ムササビが電池役してれば永久機関じゃね?

:そういう問題じゃなくて……ログイン時間平気かって意味で

:とりま三回戦までやってダメだったら翌日だろ

:まさかここまで長丁場になるとは誰が思っただろうか

:むしろ討伐タイムが4時間切ってて精巧超人より早いのに、本人達はそれに気づいてないからな

:草

:完全に目的が違うからな

:もはやレアアイテム獲得より難易度高いだろ、テイムって

:そうだよ。過去二回が奇跡なくらいだ。ヘビーをテイムしたやつだって挑戦回数20回目でだぞ?

:ヘビーはパターン覚えれば楽じゃん

:でもミラージュで転身するの知られてなきゃ無理ゲー感あったし、あの配信自体はプレイヤーの成長に貢献してくれてるんだよな

:むしろこの配信自体情報の宝庫だろ

:なお配信者自体がそれをどうでもいいかのように扱ってる模様

:アキカゼさん、情報で金儲けする気ないから

:むしろ金に困ってないだろこの人


 さて、外野が煩いですが仕切り直しです。

 え、テイク3じゃないのかって?

 さっきまでは白昼夢を見ていたんですよ。

 確かにヤマタノオロチの巨体は既視感がありますが気のせいでしょう。

 その割にEBPがどちらも30%を切っている?

 そんな時もあります。


「そう言えばお酒はアイテムバッグに入れられるみたいなので、今度からはくま君が持ってください」

「くまー、さっき失敗したのに任せてもらっちゃって良いくまー?」

「さっき? 今回が初めてですよね?」

「あ、この人記憶消しましたよ。自分に都合の悪い記憶は全部消す方向でいく様だ。まったく、そう言うところですよ?」

「とーちゃんより、厄介な性格くまー」


 私のテイム枠は空きっぱなし。

 だからテイムできてなければまだ挑戦前だ。


「アキカゼさん、多少はメカニックの補給のことも考えてくださいよ」

「じゃあアウル君達は前半は師父氏と一緒に隠れてて良いよ。ジキンさんに聞いた話じゃ、エネルギーは格納庫に入れてる間は勝手に補給されるのだろう?」

「そりゃそうですけど、完全に補給されるまで40分はかかりますよ?」

「そこは私のビームソードとジキンさんとくま君のキャッチボールに任せてくれ給え。どうせ火力が一人減るんだ。それだけ時間もかかるだろう」

「アウル、アキカゼさんは自分の意思は死んでも曲げねぇ人だ。多分、お前の親父と一緒のタイプだぜ?」

「だよね、なんとなくはわかってましたけど。はぁ」


 何故だか呆れられてしまった様だ。


「ならば事前にこれを渡しておこう」


 そう言って師父氏はムササビ君とアウル君にリュックサックを手渡していた。くま君が使っていたものと同じやつなら光学迷彩が施されてるやつだっけ?


「ありがとうございます。これ、姿隠してる間、身動きは?」

「あまり推奨していない。なのでワシが直に拾いに行く。レムリアのレーダーはレムリア産のアイテムも探知できる故、離れてなければそう手間でもあるまい。使い方を教えよう」


 師父氏の手解きによって、メカニック組の安全は確保され、私たちは再びヤマタノオロチに対峙する。

 しかしその日はトータル三回やってもテイムする事は出来ずにいた。


 どれだけ嫌われているのだろうか?

 それともテイムするにはまた違うギミックが必要とか?

 いやいや、そんな筈は……


 まだあの祠に何か隠されている?

 そう考えたら気になって仕方がない。

 その日はみんなと別れて、私一人だけになった。

 配信も切ったし、完全にオフだ。


 勝った時は特になんの変哲もなかった祠だったが、試しにソロで挑んで負けてみたところ、新たなギミックが解放されたのだ。


 まさか負ける回数でヒントが増える仕掛け?

 いやらしい仕掛けを考えるものだ。

 しかし新しいギミックの奥にあった壁画は私に天啓をもたらしてくれた。


 それこそが、虹首を残したまま他の首を全て落とした場合、正気を取り戻すと言うストーリーだった。


 〝正気を取り戻す〟

 つまり戦闘中は正気を失っている?


 ……何によって?

 その原因を解明するまでテイムができないとなると正直厄介だ。それに私の趣味に付き合わせるみんなにも悪い。


 アウル君やムササビ君は気のいい若者だ。

 くま君だってジキンさんに誘われてきてもらっている。


 私は次の挑戦を3日後と連絡し、それとは別にどざえもんさんと探偵さんに連絡を入れた。

 ファイベリオンの遺跡の、その奥を探索したいとメッセージを添えて。

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