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第43話 ドリームランド探訪_ⅩⅩⅫ

 早速フレンドリストを確認し、明るくなってるログインプレイヤーへと連絡を回す。

 聖典側へは一人にだけ回しておけばいいか。娘か友人か迷うところだが、どちらにも送っておけばいいだろう。

 どちらかイベントにかかりきりと言う場合もある。


 どざえもんさんに至ってはログインすらしていなかった。

 そして聖魔大戦のイベント中プレイヤーとは直接会うか、陣営チャットぐらいしか連絡手段がない様だ。



 【告知】

 >シェリル

 >秋風疾風

 >森のくま


 本日昼ごろ、偶然クトゥグア発生に居合わせた。

 かの神格は特に目的なく通った場所を焦土にする悪癖がある。

 十分注意されたし。

 その場に居合わせて生き残るとボーナスとして『マグマ無効』を獲得できるみたいだね。火の契り八相当の効果だ。

 くれぐれも注意されたし。


 アキカゼ・ハヤテ



 これでよし。

 今度は陣営チャットにて告知する。

 システムから開いてみたらそこは阿鼻叫喚の最中だった。

 あちゃあ、遅かったか。でもハンバーグ君が事前書き込みしてくれてたことでどうにか私のせいにならずに済んでいるぞ。



ーーーーーーーーー


アンブロシウス:こちらハスター、拠点が一つ持っていかれた

       :皆はどうか?


( ゚д゚):こっちはまだ来てねぇ。一体全体なんなんだ?


もりもりハンバーグ:なんか僕たちのところから発生して、どっか飛んでいってましたね


スシ斬舞:こちらネクロノミコン、めっちゃ暴れた後にどっか消えていきました

    :やっぱ拠点増やしすぎ問題っすかね?


霧着マイ:うちのところは無事ですね

    :多分神格置いてるところは無事?


オークス麗矢:俺んとこぁまだ来てねっす

      :つかさ、発生源のところに問題ある的な?


もりもりハンバーグ:こっちも被害者なんだけど。そうやって決めつけるのは良くないな


|◉〻◉):僕がやりました。ほんの出来心でスルメを炙ってたのがいけないんです


オークス麗矢:あん? 誰だおめえ


( ゚д゚):クトゥルフ御大のとこの幻影、アキカゼさんとこの魚人だ

   :なんか知ってそうだな

   :いっちょ問い詰めるか……


ーーーーーーーーーー



 よし、私は何もみなかった。あとはスズキさんが罪を被ってくれることだろう。


「ヤディスも応援する!」


 何故かヤディス君も、むむむとその場で念じてチャットに割り込んでいる様だ。

 どうもアール君も参加しだし、クリア組の幻影自由すぎない? と話題にすり替えられた。


 アール君に至っては陰謀説を訴え、私の罪を捏造する始末だ。

 その度にスズキさんが体を張った小粋なトークで濁して論点ずらしを発動、以降混沌の坩堝に陥った。


「よし、伝達終了。ハンバーグ君、お疲れ様!」

「いえ、メッセージが脱線して大惨事になってしまいましたが」

「|◉〻◉)僕も頑張りました」

「ヤディスも!」


:???

:誰か説明してクレメンス


 リスナーさん達は誰の言葉を信じれば良いのか分からず戸惑っている様だね。

 なんせアーカイブ化されるのはイベントクリア者に限定されている。

 こうやって直接生放送しているのはウチぐらいだ。

 証拠は浮上せず、こちらの言い分が通し放題。

 世は太平、あとはスズキさんが波風立てなければ良いものとした。


「ですが発生場所が祠の中というのは驚きましたね。何か原因があるのでしょうか?」

「僕も詳しくは分かりません」

「|◉〻◉)僕見ました!」

「うん、詳しく教えてもらえる?」

「|◉〻◉)あれはひどく暑苦しい夜の事でした……」


 その語りの前置き、絶対いらないやつだよね?

 ついさっきのことをさも一人で体験したみたいにいうのを辞めなさい。


「|ー〻ー)お腹の空いた僕は何か口に入れるものがないかエラの中を弄っていたんです」

「うん、それで?」

「|◉〻◉)それでスルメが見つかって、でもそのまま口に入れてもなんか味気ない。そうだ、炙ろうと」

「海中で?」


:草

:理屈は分からんでもないが

:時と場所を考えろ

:突っ込む場所そこ!? 序盤からツッコミどころ満載やろが

:お前ここ初めてか? 肩の力抜けよ

:リリーちゃんからの情報間に受けてると死ぬぞ?

:俺は死から生還した男!

:あ、ニャルさんお疲れ様でーす

:ヒィ!

:ビビってて草

:いやー、ラスボスさんは見たら発狂する系だから

:勇気ある発言!


「|ー〻ー)で、火元種になりそうなのが無くて……スルメを振り回してたんです。そうしたら炙ったいい匂いが周囲に充満してですね、これだ! と」


:それでクトゥグア召喚は草

:戦犯やんけ


「ウチの陣営は神格下ろしてない拠点を燃やされたといくつか報告があったよ?」

「|◉〻◉)わ、悪気はないんです。ちょっとお腹が空いてただけで、ちょうど炙れるいい熱源を見つけて、それで……」


:犯人はみんなそう自供するよな

:犯人www

:犯魚?

:魚に人類の法律押し付けてもなぁ

:アキカゼさん、飼い主でしょ! 責任とって

:ライダーになると幻影を飼えるってマ?

:違うぞ、幻影のお世話をできる権利だ

:男なら美少女、女なら美男子揃い、役得だな


「私から見れば孫が一人増えたくらいに感じるけどね。娘も手間のかからない息子ができたって喜んでるよ」


:親世代はな

:やめろサスケ、その術は俺に効く

:一人者には理想の彼女ってわけか

:理想……? リリーちゃんを凝視しつつ

:リリーちゃん可愛いやんけ

:暴れん坊なんだよなぁ

:飼い主に噛み付くタイプの番犬


「私でも制御不能ですよ。でも懐いてくれてるので誰かに任せるわけにもいきませんし、渋々」

「|◉〻◉)渋々!??」

「スズちゃん、どんまい」


 スズキさんの肩(?)にポンと手を置くヤディス君。

 ヒレの付け根って肩だっけ?

 人体との違いを見せつけられながらも私は反省してるっぽいスズキさんを許した。

 いい加減話が進まないからね。


「さて、祠復活まで少し集めた情報を纏めましょうか」

「ええ、とは言ってもグラーキの祠ほど集めた情報はないのですけど」

「それは私も同じだよ、妖精を誘引する為の影のボックスも見つけられなかったし」

「あ、でも。クトゥグアの現れた近くにこんなものが」

「へぇ、私は知らないな。どんなの?」

「これです。隕石の様な鉱石で、軽く丈夫な。トンカチで叩いてもよく分からずお手上げ状態なんですよね」

「へぇ、見せて」

「どうぞ」


 スズキさんが汚名を返上するべく即座にテーブルに、シートまでかけて椅子も人数分用意。

 私たちはそれに座りながら鑑定をした。


 [宇宙意志:クトゥグア/海]


 神格クトゥグアが現れた空間に応じて姿を変える鉱石

 燃える海を内包した金属

 制作難易度:300

 属性:灼熱/液体

 武器に転じれば周囲を溶解させ、姿形は自由自在。ただしマグマを素手で触れる実力が必要不可欠

 防具に転じれば重さを持たない造形自在。ただしマグマに耐性が無ければ着用者はLPを全損する。


 :魔導書:聖典両方の陣営で加工出来る。


 うん、その為のマグマ耐性かと言わんばかりだ。

 生き残ったプレイヤーへの報酬かな?


「これ、陣営チャットでも流した?」

「まだです。流して大丈夫でしょうか?」

「大丈夫でしょ、儲けたと思ってください。むしろウチの幻影が迷惑をかけたとそのお礼として」

「ならお義父さんが言うのが筋では?」

「それはご尤も」


:結局それなんですか?

:気になるー

:よく見つけましたね

:多分幻影を庇ったボーナスなんやろな

:じゃあアキカゼさんが見つけられなかったのって?

:リリーちゃん見殺しにしたから?

:あれは自業自得だろ

:火本の発生源にいたのはそのリリーちゃんだぞ?

:草


「あれ、そういう形式なんですか? じゃあさっさと逃げてくれたらいいのに」


:言 い 方

:このペットにしてこの飼い主あり

:やっぱりアキカゼさんに似たんじゃ?


「はいはい、全て私が悪いですよ。ついうっかりこの子なら復活するからと庇うのを忘れてしまいました」

「|◉〻◉)僕は死にまっしぇーん!」

「ほら、こういう子なんで」


:で、鑑定結果は?


「うん、居合わせた時に獲得したマグマ耐性持ちのための武器、防具用の鉱石だね」

「ちなみに加工難易度が300です。灼熱と海属性、その場所に応じて獲得できる鉱石が変わる様です」


:はい死んだ

:無理ゲー難易度やんけ

:150でも一握りの鍛治師しか触れんやろ

:マグマ耐性の時点でドワーフ向きか

:ドワーフが耐性持ってるのは火でマグマではないぞ?

:でもいるだけで貰えるんならお得では?

:お得に釣られて自殺者増えそう


「それに加工できたとしても、マグマ耐性がないとLP全損するからプレイヤーの方も生き残って結果を出さないといけないんだよ。裏技として地下世界の火の契り八でも同様の効果があるけど」


:地下かー、行ったことないな

:あそこは上位プレイヤーでさえ行くのを躊躇う魔境だから

:ケモは毛皮が燃えるから火だるま注意

:いるだけで?

:そうだぞ?

:でも確定でLP全損するこっちも大概じゃね?


「私は火の契り5まで持ってましたから」

「僕も同じく。暑いのは暑いですが、死ぬほどではなかったですね。LPは少し削れましたが」

「うん、私もそんな感じ。スズキさんは間に合わなかったみたいだけど」


:魚類にとって炎は天敵なんで

:その魚類が炙ったスルメを所望してるんだよなぁ

:今世紀最大の謎!


「|◉〻◉)咄嗟に仮死状態になったけど燃え尽きちゃいました」

「あれ、動けなくなるから自殺用だって言ってなかった?」

「スズちゃんはもう少し考えてから行動しよう?」

「|>〻<)ヤディスちゃんが辛辣です!」


:リリーちゃん、鏡見よ?

:アキカゼさん、今こそその腰に下げてる投擲武器の出番です


「ブーメラン? ああ、はい」

「|◉〻◉)わーい、これで遊んでていいんですか?」


 受け取ってすぐさまあそびに行くスズキさんとヤディス君。

 ロイガーも若干楽しそうに海流を作って楽しんでいる様だ。

 その間に陣営チャットで謝罪会見を開き、情報の提供をしておく。


 ただ、その遊びの延長戦でできた大きな渦がクタアトの祠に直撃したのを確認した時。

 やっぱりあの子は一度懲らしめた方がいいかもしれないと思った。

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