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第19話

 フレンドリーファイヤの下手人を縛り上げ、オレ達は風の契りを結ぶべくパスカルの案内で目的の場所まで歩く。


 居てもいなくても同じオメガキャノンを石の下に生き埋めにし、新しく陸ルートを添えて精霊戦を始める。


 なおジャスミンもお休みだ。二つ目の契りは音にして貰うつもりだからな、この縛りだけは本当に辛い。


 実際のところ俺の能力が開花するまではこいつに助けられていたのもあるが今はお役御免になりつつある。


 それを本人に直接いうのだけはやめておく。なんなら当人が一番自覚してるだろうからな。


 胴体をぶった斬られた記憶も新しい陸ルートは復讐に燃えていた。


 ぶった斬った精霊は俺への試練相手だったのでもうその姿は見せないが、上位精霊相手に縦横無尽の活躍を見せていた。


 とはいえ物理無効なので主にビームソードでだ。

 俺の能力で風精霊を弱体化させて村正の技でフィニッシュ。


 リリーはどこからか出してきたテーブルと椅子に座って解説を請け負っていた。

 俺たちが戦闘に集中してられるのもこいつのおかげだな。


 配信してるのにリスナーをガン無視できる。

 っつーか、精霊とはガチ戦闘になるからコメント拾いながらとか無理だし。


「|◉〻◉)お疲れ様です、マスター」

「お前もリスナーの相手お疲れさん」


:配信者がリスナーのコメント拾わないからな

:幻影にコメント拾い丸投げする配信者って他におる?

:アキカゼさん

:なんなら先駆者だぞ?

:謎のマウンティング

:それにしてもモーバが力に目覚めてから圧倒的だな。もうそれでクリアできるんじゃね?


「俺もそう思うが、一応全部契っておきたいじゃん? 検証も兼ねてんだよ、これは」


:この烏合の衆でよくここまでこれたよな

:いつ空中分解してもおかしくなかった件


「これもモーバ殿の手腕でござるな!」


 ウキウキと弾んだ声で村正の俺へのヨイショが始まった。


 リリーはそれに対抗意識を持ったのか嗜めている。

 嗜めているというよりは煽りか。


「|◉〻◉)ふふふ、僕との親密度も20になりましたよ」

「某との親密度は既に100を振り切っておるが?」


:仲良いよなぁ、この子ら

:モーバ相手してやれよ、可哀想だろ?


「お前らはもっと俺の身になれ!」


 親密度もクソもねぇ!

 つーかマジで侵食度20超えてんじゃねぇか!


「で、親密度が上がると特殊能力覚えるって話はどこいった?」

「|◉〻◉)50区切りです」


:それ、上限150で3個しか覚えない奴では?


「|ー〻ー)一個増えるだけでも十分では?」


:でも本家のリリーちゃん程ではないんでしょ?


「|◎〻◎)オネエチャンハアタマオカシイノデ」


:|◉〻◉)じー

:お姉さんの暗黒凝視

:リリーちゃんはバラバラになった!


 ちょ、マジで死ぬなし。


 宴会芸なら良いが、陰から出てくる気配は見せない。

 リポップするクールタイムが出てきて焦る。


「おいおい、うちの幻影に悪戯すんなよ。復帰するのに時間かかるんだから」


:|◉〻◉)この子が僕の悪口を言うのがいけないんです。飼い主の監督不行き届きでは?


「アキカゼさんだって同じ様なもんだろうが!」


:|◎〻◎)あーあー聞こえなーい

:この都合が悪くなると急に耳が遠くなる奴

:アキカゼさんのお家芸だな

:こんなところまで似るな定期

:平常運転だろ


 よくわからない茶番で足止めを食らった俺たちは、石の下からオメガキャノンを掘り起こし音の精霊の場所へと向かう。


 道中オメガキャノンがずっと不機嫌だったのは言うまでもないが自業自得だからな?


 俺たちからすればあの程度で許してやってる心の広さを感謝してほしいレベルである。

 正直配信の都合が無ければ追い出していたからな。


 さて、音の試練は全員で戦うことになる。

 正直こいつが試練モードになれば一番厄介だからだ。


<ネームド精霊:ソナークリーが現れた>


[よくぞ最後の試練に参った。じゃが、貴殿の悪運もここで終わりじゃ。我が名はソナークリー。精霊姫の長にして最強。とくとご覧あれ]


 姿があるだけ御の字。そんな気配どころじゃないオーラがソナークリーから漂う。


 精霊姫とは? そんな思考を遮るが如く、床に刺した剣を起こすと岩石が連なり巨大な剣になる。


[集い、踊り、跪け! 絶剣──天地割り!]


 ぶぅん、と岩の集まった剣が真横に振われた。

 派手な詠唱をしておいてただの物理攻撃かよ!


 相手がただの岩なら掌握領域の属性停止で抑え切れる。

 そんな予感が俺に行動を起こさせる。


 片手で止めに入る俺に、ソナークリーは笑みを強めた。


[我が支配する属性を思い出すが良い!]


 ただの岩なら止められたが、激しく振動したそれらは俺の手を弾いてしまう。


「モーバ殿!」

「ただ弾かれただけだ。だが、厄介だな」

「俺は参加せんぞ?」


 オメガキャノンが不貞腐れた発言をした。

 大丈夫だ誰もお前に真っ当な仕事を期待してないから。


「なら自分の身は自分で守って貰う必要がある。協力体制を敷いている事を思い出せぬ様では困るぞ?」

「チッ、やりゃ良いんだろ? やりゃ。でもよぉまた巻き込むぞ? それで一々キレんなよ?」

「なるべくそうしたいが、狙われた方はそうとも限らんさ。お前だって狙われてみればわかるだろ?」

「どうせ俺は独りよがりだよ」

「そうやって不貞腐れる。パスカル、お前からもなんか言ってやれ」

「俺もこいつの気持ちがわかるからな。誰だってせっかく作った武器が不発になれば悲しいもんだ。準備してたのが無駄になったら苦労が水の泡だろ? 何、こいつの誤砲は平常運転だ。俺がお前らに当てない様にする。それで良いだろ? あまり責めないでやってやれ」

「お前もなんだかんだお人好しだよな、っと」


 戦闘中に雑談を交わす余裕があるのかと俺が狙われる。

 俺の試練だからヘイトは自ずと俺に向かうのだ。


 飛び込んできそうな村正を片手で静止し、構えた弓で地面に矢を注いでソナークリーの動きを封じつつ戦闘区域に戻る。


 前衛のジャスミン、陸ルートとスイッチし、戦いながらソナークリーの対策を練るがこいつ長とか言うだけあって普通に強い。


 もしかして後回しにすればするだけ強くなるとかそう言うパターン?

 リリーも奮戦してくれてるが焼け石に水の様だった。

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