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クイーン・オブ・魔法少女 〜いや俺、男なんですが!?〜
クイーン・オブ・魔法少女 〜いや俺、男なんですが!?〜
赤金武蔵
現代ファンタジースーパーヒーロー
2024年09月23日
公開日
7,999字
連載中
 異世界から地球へ魔物が現れるようになり、200年が経った。  魔物は人類の兵器では太刀打ちできず、同じ時に現れた異能を使う少女……魔法少女たちの手によって、人類は守られていた。  そんな中、世界初男の身でありながら、魔法少女の才能に目覚めた少年、神楽井継武。  理想の自分に変身できると知った継武は、深夜テンションによって『超絶美少女』に変身することを願う。  願いによって念願の美少女になったが、あまり目立つことはしたくない継武。周りに悟られないよう、慎ましく生きていくことを決意する。  が、ある日。初めての魔物との戦闘が、魔法少女配信者の1人のライブ配信に映り込んでしまい、『可愛すぎる魔法少女』として大バズり。  更に継武の力は、歴史上最強レベルの力を有しており、世界がその力に注目する。  容姿端麗、慈愛の心、最強の力。  全てを併せ持つ継武は、いつしか人々は『クイーン』と呼び、崇められることになる。

第1章 魔法少女の誕生

第1話 消し飛んだ日常

『昨晩、西東京に現れた異世界の生物「魔物」は、魔法少女・リーリカさんの手によって倒され、街に平穏が戻りました。現在は修復専門の魔法少女が街の復旧に尽力しており……』



 テレビから流れてくるニュースに耳を傾けつつ、味噌の香りが心地いい味噌汁をすする。

 最近は『魔物』 の数が増えて大変だなぁ。魔法少女も引っ張りだこだ。

 現場の中継が終わり、局のアナウンサーやコメンテーターの映像に切り替わる。



『我々の日常に、異世界からの魔物や、それを倒す超常の力を持つ魔法少女が現れ200年余り。世はまさに、「大魔法少女時代」と呼ばれ……』

「はは、大魔法少女時代か」



 まあ確かに、そう言われて久しいな。

 13歳から18歳までの間の少女。その中の才能のある生娘のみ、ある日魔法少女としての能力が開花する。

 何故少女だけなのか。様々な憶測はあるけど、俺にはよくわからない。

 まあ、俺とは縁遠い世界の話だ。俺は俺で、今を精一杯生きる日常があるわけだし。



「けど……いいなぁ、魔法少女」



 俺も女の子だったら、魔法少女になれる可能性が少しあったのかも。

 ……なんて、たらればを言っても仕方ないか。

 食器を片付け、明日提出する宿題をそこそこに、ベッドに潜り込む。



「んじゃ、おやす──」



 ────

 ──────

 ────────ん……ぁれ……? なんだ……? 体が思うように、動かない……。


 腕に力を入れ、起き上がる。

 ぐっ……い、痛い……え、俺、今痛みを感じてるのか……?

 意識が朦朧とする。頭が回らない。

 くらくらする頭を押さえると……ぬるっ。何か気持ち悪いものを触った。



「……ぇ……血……?」



 これ、まさか……俺の?

 え、なんで……なっ……!?



「なん、だよ……これ」



 周りを見て、ようやく気付いた。

 外だ。いや、正確に言えば、さっきまで生活していたアパートが崩れ、外に放り出されたのだ。

 意味がわからない。何が起こって……?


 ──ゾクッ。


 な、なんだ、この寒気……いや、悪寒? 全身を包み込むこれは、今まで感じたことがない。

 見られてる……何に、見られている気がする。

 喉の奥にへばりつく唾液を飲み込み、見上げると……一つ目の、化け物がいた。


 地球上の生物とは一線を画する巨体。ヌルヌルとした表皮。形状を保っていない体。無数の触手。

 こいつは、地球上の生物じゃない。

 前触れもなく、異世界からやって来た化け物……魔物。『スライム』だ。

 アニメやゲームでは、雑魚モンスターとして名高いスライムだが……とんでもない。リアルで見るこいつは、とんでもない化け物だ。

 体が震え、呼吸が浅くなる。

 ダメだ、体が言うことを聞かない。

 逃げなきゃ。逃げなきゃ。逃げなきゃ。逃げ……。



「だ……誰か……助け……!」



 スライムの巨体がわななき、触手が蠢きながら高速で迫る。

 あぁ、ダメだ。死──






「大丈夫か、少年」

「──……え……?」






 あ、あれ? 俺、生きて……る?

 ゆっくり目を開けて、声のした方を見上げると……純白の天使が、そこにいた。

 白いドレス……いや、鎧ドレスに身を包み、身の丈以上の巨大な剣を担いだ、超常の力を持つ少女……魔法少女。

 しかもこの人は、さっきテレビでも見た、最近話題の子。

 可愛すぎる魔法少女として名高い……リリーカだった。


 リリーカは大剣の腹で触手を阻み、心配そうな顔でこっちを振り返る。



「ぁ……えと……」

「怪我、しているな。アレを倒したら治療するから、少し待っていてくれ」



 リリーカがスライムに対峙すると、黄金の髪が弧を描く。

 突然、彼女の体が発光し、何かが迸って暴風が体を叩いた。

 刃のように鋭い風が、帯となって俺を包み込む。



「ふっ……!」



 大剣を弾くように横に凪ぐ。たったそれだけで、スライムの巨体が傾いた。

 背中から生える光の翼を大きく羽ばたかせ、上昇。

 一瞬でスライムより高い位置まで飛び、次の瞬間──。



「ハッ!!」



 急降下と同時に、スライムを一刀両断。倒したのか、スライムは黒いモヤとなって消え去った。



「……すげ……」



 何が凄いかは言えない。

 でも、これが……これこそが魔法少女なのだと、理解させられた。

 光る体をひるがえし、地面に降り立つリリーカ。まるで、本物の天使のようで……。

 俺の記憶は、ここまでしかなかった。安心からか、意識を手放したから。

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