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第3話 天使様の名前



さあ召し上がれと出された料理は素人の俺が見てもかなり値が張るものだろう。


キラキラと明かりを受けて輝く大量の料理に俺はいただきますを言うのも忘れてがっついた。


美味い、どれも美味い! !


あの普通に買った食材からどうやって生まれたか分からないが、調理された食材たちはみなどれも美味かった。


がっつく俺を嬉しげに見て天使様は言う。


「久しぶりに使った魔法ですが、食材が良かったのでしょうねー! !いっぱい食べてくださいな! !お酒だけでは一般男性のカロリーにはなりませんからね!」


「外食やコンビニが多かったからな、つか、魔法? お前魔法使えるのか」


「はい、使えますよ?ね、多田克典ただかつのりさん、超絶可愛い私をここに置いてくれます? 」


さらりと名前を言われて思わず噎せた俺にコップ一杯の水がよこされる。


それを思い切り飲んで、暫く考えた。


名前が知られてるのは、まあ良しとしよう。


料理が美味いのも良しとしよう。


見た目がかなり可愛い女の子が転がりこんできた事は。


でも近場のスーパーにしたせいでこいつの姿はもう大多数に見られている。


それにこの目立つ容姿のやつを引き連れて歩くのは些細な顕示欲がかなり満たされる。


のむしかないだろう。


「私が名前じゃないだろ」


「! ! それは置いていただけると! ? わーい! ! あ、私クリスティーナといいます! 気軽にクリスで構いませんよ! 」


妙に陳腐な名前だった。


天使様ときたらもっと仰々しい名前だと思っていたら、「現地に合わせた名前なんです」と思考を読まれた。


「本当の名前はこちらに合わない、表現出来ない名前なんですよ〜! だからクリスで! 」


私がきたからには飢えで死なせることはありませんよ! ! とガッツポーズをしてみせるクリスに俺は、そうかその手があったかと思っていた。


まあ、目の前の料理を食ってれば飢えることは無いだろう。


……天使様、クリス様に付き合ってやってもいいか。


害は無さそうだし。


渋々そう言えばクリスは花が開いたようにパっと笑い、俺にしがみついた。




訂正、このしがみつき癖だけは害だろう。


早々にどうにかしなくては。


可愛い女の子に抱きつかれて嬉しくならない程、俺は枯れてないつもりなのだから。


あと、胸が地味に苦しい。


なんで頭を抱えるようにしがみつくんだお前は。





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