八月の青い空を二本の飛行機雲が引き裂いた。
「あれは自衛隊機ですね」
「そのようだな」
「
「そうか」
「なぜ二機編隊かご存知ですか」
「しらねぇよ」
「一機が駄目になったら二機目が単独飛行、しばらくすればもう
「だから一番目が
「
日本海から吹き付ける突風に惣一郎のベージュの帽子が舞い上がった。
「おおっと」
顔料で染まった指が帽子を押さえようと試みたがそれは叶わず、流木や割れた
「ああ、帽子が飛んで行ってしまったじゃないですか」
「
「なら拾って来てくれませんか」
「大丈夫だあいつらが追い掛けている」
振り返るとスーツ姿の厳つい男たちが帽子を求めて右往左往している。
「そうですか、良かった」
井浦の手首には手錠が掛けられていた。
「それで三番目は生徒かよ」
「はい」
波打際、砂浜に張られた黄色い規制線の奥には大きな穴が掘られていた。
「刑事さん」
「なんだ」
「なぜこんなに早く警察が来たんですか」
「知ってるか、タクシーは走る110番なんだよ」
「そうですか」
人ひとり入れる穴、その周囲を青いつなぎを着た捜査員が取り囲んでいた。
「ありましたーーー!」
警察官たちが駆け寄った場所には黒いギンガムチェックのサンダルが砂底から顔を出し、海水に浸かった状態で見つかった。
「見つかりましたか」
「見つかったな」
「
「んな訳ねぇだろーがよ」
「そうですか」
この黒いギンガムチェックのサンダルの持ち主は
了