その日、いきなり私は自宅で引き合わされた。
お母さんに。
自宅の居間にお母さんが、ワンピースの女の子を連れて来て。
一言。
「花蓮、今日からあなたはお姉ちゃんよ」
……いきなり私に義妹が出来た。
なんかお母さんが、その前の日に電話をしてて
閻魔の家の宿命とか、あなたの妻になった時点で覚悟はしてるとか。
ちょっと不穏なことを言ってるなぁ、って思ってはいたんだけど。
このことだったか……
私に一言も事前通知無し。
これは私のことがどうでもいいからだ。
……と、そう思いがちだけど。
私だって知ってるよ。
大人には色々事情があるから。
これは避けて通れないことだったんだと思う。
大体ウチの家、色々複雑だから
他にもネゴらないといけないことがあるから。
私のことは無視するしか無いよね。
優先順位低いもん。
で、お母さんが連れて来た私の義妹……
髪型は、後ろで括ったポニーテール。
そしてなんか、お人形さんみたいというか。
繊細なデザインの、綺麗な女の子だった。
表情ひとつで、愛らしいがクールに切り替わる。
そんな造作。
多分、この子大きくなったら超美人になる……
そんな幼女が
「優子と言います。よろしくお願いします。お姉ちゃん」
ペコリ、と頭を下げてくる。
礼を尽くしてる……幼女なりに……。
だったらこっちも姉として振舞わないといけないよね。
聞いてない、知らないなんて言えないよ。
だから
「私は花蓮。優子は何才なのかな?」
思い切って、いきなり姉を貫く形で話し掛ける。
すると
「7才です」
7才……小2?
私が小2のときは、何を周囲に求めてたっけ……?
小さい子だから、そういうことは大事だよね……
だから
「これからよろしくね。優子」
言って、私は優子の頭をそっと撫でた。
優子は変わらない調子で、ニコニコと微笑んでいた。
「……ということがあったんだよね」
「いきなり小2の妹が出来るなんて大変だね。でも、男の子よりはマシじゃないかな」
昼休みにお昼ご飯が終わった後、教室で私は春香ちゃん相手にお姉さんの先輩として何かコメントが欲しいと思って。
相談していた。
春香ちゃん弟がいる女の子だから。
そしたらそう言われた。
なので私は
「男の子は大変なの?」
そう訊くと
「うん。活動量が女の子と違うんだって」
だって……?
なるほど。これは一般論だな。
経験談じゃない。
とはいえ、そんな一般論が出るという事実は重いよね。
「なるほど」
私は春香ちゃんにお礼を言った。
言って
「春香ちゃんは弟さん相手にどう向き合ってるの?」
「えっと、お姉ちゃん」
うん。それはそうだね。
それはつまり
「姉より優れた弟はいねえ?」
「それは上位者の態度じゃないと思う」
私の拙いお姉ちゃんの態度のイメージは、春香ちゃんに一言で否定された。
……違うのか。
難しいね……
「上位者とは?」
「こんなのが自分の上位存在なのか、恥ずかしい。そう思われないようにしよう、そんな感じ」
私の質問に、感覚上の答えを話してくれる。
「それは勉強を頑張るとか?」
私は現在100位以内に入ることを目標に勉強してるけど。
それ以上?
50位以内?
すると
春香ちゃんは少し悩む仕草をして
「……そういうことじゃないんだよなぁ」
そう返し。
こう言った。
「花蓮ちゃんだってさ、自分のお姉ちゃんやお兄ちゃんが、戸■呂兄だったり、■毘だったり、熱川真■だったら嫌でしょ? いくら優秀でも」
想像する。
……うん。
それは嫌だな。
どいつもこいつもダメ人間。
能力じゃない。人間性がダメ人間。
兄なのに弟の恋人に欲情したり。
弟に延々家族への愚痴を言ったり。
悪行を成して、主人公の中の妹の株を下げたり。
そういうことか。
それは嫌だよね。
反対に、プ■シュート兄貴とか虹村■兆とか、ブッチ■父だったら、悪党でも嫌でたまらないというところまでは行かない。
悲しい、になると思う。
で、それが■銀会長だったり、黒崎■護だったらもう最高だ。
例えそれが余裕でお医者さんになれるくらい勉強できなくても、だ。
なるほど……
「……とてもよく分かった」
あまりにも的確な例えに、私は一瞬で理解した。