「じゃ、みっちゃんの席はあそこな」
髭のおじさん――改め蟹原部長が奥のデスクを指さした。パソコンモニターとキーボードが置いてあって、その横にバインダーがいくつか乱雑に置かれている。あれが仕事ってことかな?
私はまだ大学生で、仕事をしたことはないけどドラマで見たことあるからなんとなくは知っている。パソコンでカタカタして書類とか作るんだろうな。
「わ、すみません」
私は自分のデスクに行く途中の通り道で、キャスター椅子につまづきそうになって謝った。その椅子に座っていた眼鏡のおじさんは、こちらを睨みつけて小さく舌打ちをした。
なんか嫌なヤツだなー。アイリさんと蟹原部長のほうを一瞥すると、こちらを気にも留めずに雑談していた。
眼鏡のおじさんのほうに向きなおる。この人、名前も名乗ってないし、もしかして窓際族ってやつなのかな? ……って、うわマウスパッドキッモ! おじさんのマウスパッドは、いわゆる「おっぱいマウスパッド」という奴だった。
よく見ると机にも、ほとんど服を着ていない未成年らしき女の子のポスターが貼ってあった。こういうのって、ふつう自分の部屋とかに貼るんじゃないの? やばい人みたいだから、関わらないようにしよっと。
自分のデスクに着いた。キャスター椅子を引いて、座る。机の上にあったバインダーをぺらぺらとめくると、なんかよく分からないことが小さな文字で大量に書いてあった。
「あ、それ読まんでええから」