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好きです! 桐谷くん
好きです! 桐谷くん
ならで
恋愛スクールラブ
2024年10月15日
公開日
1,115字
連載中
高校一年生の平井いずみはやる気がない。 何もする気が起きなくて、毎日毎日を適当に生きていた。 でもそんなある日、なぜか桐谷くんの夢を見る。 そしてファーストキスを奪われた。 その時から、どうしても桐谷くんが気になってしまい……。

桐谷くんに告白しました

第1話 はじめての恋

——恋に恋する女の子。

  その言葉は、きっと私のために作られた。——


 男の子ってよくわからない。恋なんてしたことない。今、何よりも好きなことは、眠ること。

 眠るって素敵だね。色んな夢が見られるから。


 昨日は素敵な夢を見たの。

 綺麗な金髪の男の子が、私にそっとキスしてくれた。

 はじめての柔らかい唇の感触。

 ひまわりみたいなその笑顔。それが、一瞬で私の心臓を撃ちぬいた。


 夢の中で出会った君に、私、恋しちゃったみたい。


 不思議だね。いつも教室の窓からテニスコートを寂し気に見つめてる、桐谷くん。綺麗な金髪が、夕日に照らされて輝いている。

 ねえ、私にキスをしたのはどうして?

 そんなことを聞く勇気なんて私にはない。

 でも、それでも、思わず声をかけてしまう。


「桐谷くんは、どうして金髪にしてるの?」


 桐谷くんはゆっくりとこちらを振り返る。

 黒い切れ長の瞳が、じっくりと私の瞳を貫いた。

 それだけで、私の心臓はドクンと跳ね上がる。


「……かっこいいだろ?」


 その言葉と共に送られたのは、ひまわりみたいなあの笑顔。


 そしたら不思議。わたしの心が理性をグイッと押しのけた。


「うん、好き……」

「え?」


 桐谷くんは驚いたように目を見開いた。


「あ……」


 私は思わず、自分の口を押える。

 どうしてこんなこと、言ってしまったんだろう。

 私は消えたくなる、泣きそうになる。

 うつむいて動かない私に、桐谷くんは優し気に声をかけた。


「……なんで?」

「……わ、わかんない」

「こっち見て」


 私は恐る恐る顔をあげる。

 桐谷くんの瞳は真剣だけど、何か焦ったように揺れている。それがなんだかおかしくて、私はじっとその瞳を見つめてみる。


「まっすぐ見てくんね」


 桐谷くんの瞳が不意に逸らされた。


「どうして目を逸らすの?」

「そりゃ、照れるでしょ」


 桐谷くんの耳は、ほんのり赤みを帯びている。

 私の胸はドクンドクンとうるさいくらいに音を立てる。

 桐谷くんの口がゆっくりと開かれる。


「好きな子に好きって言われたら、さ」


 私はまだ、夢の続きを見ているのかもしれない。

 でないとこんなこと、ありえない。

 そう思って頬をつまんでみると、鋭い痛みが走った。


「何してんの?」

「夢かと思って」


 桐谷くんの手がすっと私の顔に伸びる。そして、頬を優しくなでた。


「じゃあ夢じゃないって教えてあげる」


 桐谷くんの顔が私にまっすぐに近づいて、そして唇に触れた。

 ガラス細工を扱うように甘い優しいキス。

 夢の中と同じファーストキス。でも、夢の中と違って、桐谷くんの唇はザラリと少し荒れていた。

 でもそれさえも、私の胸にときめきを植え付ける。

 桐谷くんの吐息が、私の頬を優しく撫でる。


「俺も好き」



――恋に恋する女の子。

  その言葉は、もう私のためのものじゃない——


 私は、桐谷くんが好き。


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