77. 好きだから ~結愛視点~
窓の外。体育の授業をやっているクラスが見える。この時間は晴れの日なら私は外を見ることが多い。だってそのクラスは凛花のクラスだから。私はいつものように凛花を見つける。
今日はテニスなのね。凛花が豪快にラケットを空振る姿が見えた。あの子卓球部なのにヘタね。私はその姿を見て少し微笑んでしまう。
授業はつまらないもの。いや……学校がつまらない。ずっとそう思っていた。でも今は違う……。
休み時間は大体小説を読むか、宿題をやる。お昼も1人で食べる。私には友達はいない。でも昔からほしいと思ったことがないし、興味がない。そして恐怖しかない。それにみんな私といると疲れるからね。別にいいけど。
でも……。
今日は違う……。
朝から決めていたから……。
放課後になる。凛花は文化祭の準備で部活には出れないと連絡があった。いつもならそのまま家に帰るのだけれど……。
今教室にいる。もちろん私たちのクラスも文化祭の準備をしている。ちなみに謎解きをやるらしい。クラスメイトの問題を作る人たちが一生懸命謎を作っている。
「うーん。これじゃ簡単かな?」
「そうだねぇ。問題作るの難しい……。」
私はその問題を遠目から見ると、ああ確かに……と思う。簡単な問題だ。謎解きのルールさえ把握してない素人が作る問題だわ。私はクラスメイトに言う。
「その問題は簡単すぎるわ。まず謎解きのルールを説明して、それから解くように誘導すればいいんじゃないかしら?ある規則性を持って作れば少しは難しい問題になる。この問題なら……。」
私がその問題文を手直しして、説明しようとすると、みんな一斉に私の方を向く。えっ?何?急に……。私は驚く。すると、女子生徒2人が話しかけてくる。
「すごい小鳥遊さん!なんか難しくなった!」
「こっちも見て小鳥遊さん!」
「えっ。まぁいいけど。」
私はその問題を見てみる。これはさっきより複雑になっただけで、やっぱり簡単に見える。
あっ……。
ふと気付いた。なんで私こんなことしているんだろうって。ただ暇だったからかもしれない。
でもそんな気持ちはすぐになくなった。なぜか分からないけれど……。
結局私が問題のほとんどを作った。クラスメイトには感謝されたけど私は特に嬉しさは感じなかった。帰りに校門前であの女が私を待っていた。
「小鳥遊さん。」
「天道真白?何かしら?」
「いえ。私は今日は生徒会に出席していたので見てないので聞いて驚いたのですが。あなたがクラスの文化祭の準備をしていたと……。」
「私もあのクラスに在籍してるんだけど?」
「そういうことではありません。あなたはいつもクラスメイトと協調性がないじゃないですか。何かあったのですか?正直に言うと私は嬉しいです。」
天道真白は笑顔で言う。なんだかムカつくわね。私は無表情で言う。私にもどうしたらいいか分からなかった。どうしてあんなことをしたのか。自分でも理解できない。きっと答えなんて出ない。ただひとつの思いだけがある。だから私は天道真白に言う。
「何かしないと文化祭に出れないから。」
「え?」
「今年は……参加したいの。文化祭。ただそれだけよ。」
昨日の凛花を見て思った。私は凛花を悲しませてしまったから……凛花が私と一緒に文化祭回りたいのならそれをしてあげたい。その気持ちしかなかった。
「そうですか……いいと思います。」
「あー生徒会長?困っている善良な生徒のお願い聞いてもらえない?」
「なんでしょうか?」
「当日。行きたいところがあるの。正直1人では行きづらくてね?そこだけついてきてくれない?」
「……新堂さんのクラスですか?あなたは……いいですよ。お願いを聞きましょう。」
私はそれを聞き振り返らずに家に帰る。凛花には申し訳ないことをしてしまった。でもこれで良かったと思ってる。だって私はもうあの時のように後悔したくないから……。もしこのまま何もしなければ、また同じことを繰り返すだけ。
私は凛花が好きだから。好きな人には幸せになってほしい。私ができることは何でもしてあげたい。凛花には内緒にしておかないと。ビックリさせてあげるんだから。