82. 結愛先パイのお弁当
今日は金曜日。そしていつもより早く起きる。あたしの両親は旅行に行っていて来週まで帰ってこない。だから週末は結愛先パイの家にお泊まりする予定だ。……大体いつもそうだけど。
……って、そんな事考えてる場合じゃなかった! 早く着替えてお弁当作らなきゃ! 急いで制服に着替えたあたしはキッチンへ。
今月お小遣いがピンチだ。だから学食はやめてお弁当を作ることにした……。メニューは何にしよっかなー。とりあえず冷蔵庫を開ける。卵とソーセージか、えっと……うん、オムレツを作ろうかな。あとはどうしよう……あたしお弁当作ったことないし。うーん。そうだ。
あたしはスマホを取り出し電話をかけることにする。
「もしもし。結愛先パイ、おはようございます!」
《おはよう。朝から何かあったのかしら?今お弁当作っているのだけど?》
「あの。あたしこの前のスピーチのご褒美もらってないので、結愛先パイ。あたしのお弁当作ってくれません?」
《え?ご褒美ならあげたじゃない?まだイキ足りないの?》
「あれはご褒美じゃありません!可愛い彼女のお願いですから!お願いします!」
あたしは結愛先パイにお願いする。
《まぁ……。凛花が食べたいのなら作るけど。》
「本当ですか?やったー!じゃあお昼も一緒に食べましょう!飲み物はあたしが買いますから!」
そう言って電話を切る。よし。これでオッケー。結愛先パイの手作りお弁当楽しみだなぁ。あたしはゆっくり支度して学校に向かう。
学校に着いたあたしは自分の席に座っていると、衣吹ちゃんがやってきた。
「おはよう凛花ちゃん。今日は早いんだね?」
「うん。親がいないから寝坊するといけないと思って早起きしたの。」
「ふーん。なんか嬉しそうだね?なんかあったの?」
「実は結愛先パイがお弁当作ってくれるんだぁ。それが楽しみで。」
あたしは満面の笑みを浮かべながら言う。それを聞いた衣吹ちゃんは少し呆れた顔であたしに話す。
「はいはい。私への当て付けですか?別にいいけど。」
「そんなんじゃないよ。ところで衣吹ちゃんてまだあたしのこと……好きなの?」
あたしがそう言うと衣吹ちゃんは少しムッとして膨れながら答える。
「好きに決まってるでしょ。私がコロコロ好きな人が変わるように見えるの?酷いなぁ凛花ちゃんは。」
「いや見えないけどさ……なんかごめんなさい。」
衣吹ちゃんに謝った後チャイムが鳴る。あ、もうこんな時間!?早くしないと! 慌てて準備をしてあたしは授業を受ける。
そして待ちに待ったお昼の時間。あたしはお茶を買って、小説演劇同好会の部室に向かう。結愛先パイとメッセージのやり取りをして、部室で食べることにしたからだ。あたしは部室に着くと扉を開ける。
「結愛先パイ。お茶買ってきました!」
「ありがとう。」
結愛先パイはそう言った後に机の上にお弁当を広げる。おおっ!美味しそうなサンドイッチだ!あたしは結愛先パイの隣に座ると、お弁当を覗き込む。
うわぁ~。綺麗なお弁当だなぁ……。あたしは感動しながら結愛先パイが作ったお弁当を見る。
「私の料理見たことあるじゃない。そんなにマジマジ見なくても……。」
「お弁当だとまた違うんですよ!わぁ美味しそうだなぁ。」
「ありがとう。じゃあ食べましょうか」
結愛先パイはあたしを見て微笑む。ちなみに結愛先パイのお弁当箱はピンク色で、とても可愛くて思わずキュンとなる。
まずは結愛先パイの作ったオムレツを一口。うーん。卵がフワッとしていてめっちゃ美味しい!あたしじゃ作れなかったよ絶対。その他のおかずのどれも凄く美味しかった!サンドイッチもいっぱい食べてしまった。結愛先パイが話しかけてきた。
「凛花はいつも学食でしょう?急にどうしたのお弁当なんて?」
「実は……お小遣いを使っちゃって。今金欠なんです。」
「ああ、そういうことね。でもそれって私のせいかしら……。あなたいつも電車で私の家に来るものね?ごめんなさい。」
「いや結愛先パイのせいじゃないです!あたしは結愛先パイの家に行きたいし……。」
あたしがそう言うと結愛先パイがいつもの悪い顔になる。また、あたしになんか言うつもりだ。
「私といて何するつもりなの?」
「何もしないですよ!結愛先パイこそ何か期待してません?」
「期待?してるわよいつでも。当たり前じゃない。私は凛花が好きなんだから。あなたは期待していないの?」
「えぇ…。それは……流れと言うか……。」
そんな堂々と言われると恥ずかしい。結愛先パイはあたしの反応を楽しんでいる。あたしは顔を赤く染める。
「流れって?」
「分かりましたよ!あたしが悪かったです!」
あたしは両手を上げて降参ポーズをする。結愛先パイは満足気な表情をしている。それからあたし達は談笑した後、教室に戻ることにした。『ただ一緒にお弁当を食べるだけ』こんな何気ないことでも幸せを感じる。結愛先パイと付き合えて良かったな。